機械に歌を歌わせても芸術(アート)になるのか

VOCALOID 2「初音ミク」とは?

バーチャル・シンガー『初音ミク』は、声優「藤田 咲」さんが演じるポップでキュートなキャラクター・ボイスを元に作り上げられた、ボーカル・アンドロイド=VOCALOIDボーカロイド)です。

クリプトン | HATSUNE MIKU(音楽ソフトウエア)

声優さんの声が予め登録されていて、その音声を自由に合成することによって、いろいろな歌を歌わせることができるソフトウェアが8月30日に発売されていたらしい。
その作品のいくつかがYouTubeニコニコ動画にアップされていた。

ニコニコ動画

事前にこのソフトのことを知っていれば所々ある不自然な所に気がつくだろうが、何も知らずに動画を観たら合成音声と気づく人はほとんどいないと思う。
Wikipediaによれば「歌(うた)とは、音楽の一形態。リズムをつけた歌詞を連続発声する娯楽・芸術である。」だそうだが、機械が歌を合成した場合も芸術に含まれるのだろうか。

昔は芸術と言われる分野は人間にしかできなかったため、芸術とそうでないもの境界は比較的明確だったと思う。歌のうまい人と下手な人、絵のうまい人と下手な人の区別は、その作品を聞いたり、見たりすることで誰にでもすぐ分かった。
ところが技術の発達によって、それまで芸術の前にそびえていた高い敷居が取り除かれてしまった。例えばカメラの登場は肖像画の仕事を奪っただろうし、オルゴールやレコードの登場は演奏家の仕事を奪っただろう。
見方を変えれば、これらの新技術が既存の芸術のレベルを引き上げたと言えるかも知れない。絵画で言えば見えたモノをそのまま描くだけなら機械にもできるので、芸術家と呼ばれ職業にはプラスアルファが求められるようになった。

写真が芸術かどうかは、しばしば議論されるところである。こうした議論は、写真の初期から存在していた。写真はしばしば「ただの記録技術であり、芸術ではない」という攻撃を受けてきた。単なる画像の機械的生産に過ぎないと主張するひともいる。

写真 - Wikipedia

また、写真が芸術かどうかという議論は結論がでていないようだが、

芸術(げいじゅつ、ギリシア語 η τεχνη techne、ラテン語 ars、英語 art)とは、表現者あるいは表現物と、鑑賞者とが相互に作用し合うことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動。

芸術 - Wikipedia

というのが、芸術の定義であるなら人を感動させる写真なら芸術に含まれると思う。

同じ理由により、音声合成によって作られた歌もまた、人の心を動かすことができるなら、やはり芸術に含まれると思う。位置付けとしては新しい電子楽器となるのだろうか。
そして、これらの技術の進歩に伴って作品の質は向上し、「普通に歌うだけ」なら人よりもずっとうまく歌えるようになるのだろう。だからこそ、人には人にしかできないプラスアルファが要求されてくる。ただ、それが具体的に何かは今はよく分からないが。

動画サイトに上がっている作品を聞いて気になるのは、音声を登録した声優さんが、自分そっくりの声が知らない曲を歌っているのを聞いて、不安を感じていないかということ。こういうのはkにするだけ無駄で、道端に貼られているポスターが落書きされても仕方がない、というのと同じ事かも知れない。