「初音ミク(Hatsune Miku)」という現象

米国時間で2011年7月2日(土) 夜8:30(日本時間7月3日(日)12:30)から、米国では初となる初音ミクのコンサートが行われました。ニコニコ動画で生放送をリアルタイムで観たかったのですが、用事があったので自分はタイムシフトで観たのですが、時間が経つを忘れてしまうという感覚を久々に感じました。「コンサートはミクの日感謝祭の内容をベース」にしたそうですが、全然、印象が違います。

この記事でパッチワークPが非常に熱く語っていますが、ニコニコ動画の放送では観客席の声が余り聞こえなかったので、いまいち会場の盛り上がりが伝わってきませんでした。それでも、初音ミク登場直前の「ミーク、ミーク」というコールが始まった時は、本当にアメリカなのかと思わずにはいられませんでした。そして、さっき見つけたのが、会場で撮影したらしい動画です。

会場の皆さん、絶叫されています。本当にコンサートは大成功だったようです。最前列付近は盛り上がっていなかったので、もしかしたら運営側なのかとも思ったのですが、「客席の前から10列くらいは、現地の本物のセレブとトヨタの上顧客が招待されていたようです。」とのことです。いわゆる大人の事情なのでしょうが、みたくても見れなかった人のことも考えると釈然としない気がします。


大変、盛り上がったコンサートでしたが、これっておかしくない?という感じのコメントもありました。

If anyone is wondering what the hell I'm talking about watch this video. #Miku #ax11

それもまた当然の反応だとも思います。ステージはアニメのキャラクターの様な映像を投影し、合成音声の歌で何千人もの人が熱狂しているなんて今までになかったことなのですから、誰も違和感を感じないとしたらそれこそおかしなことです。逆に考えれば、単に慣れの問題と考えることも出来ます。同じようなことが繰り返されれば、徐々にそういうものなのだと認識されていくのかも知れません。今では日本のCDショップでボーカロイのCDが売られていますが、初音ミクの発売前は雑誌での紹介を断られるような状況でした。当時、米国で何千人も集めて有料コンサートが行われるようになると想像した人はいなかったでしょう。

 “萌え”キャラ要素を持った「初音ミク」は、業界からは黙殺された。「DTM業界で最も権威のある雑誌の担当者にファーストインプレッションで苦笑され『紹介はできませんね』と断られた」(佐々木さん)


また、ネットではボーカロイドと人の声との優劣についての議論が繰り返されています。

おそらくほとんどの人はボーカロイドがどういうものかは分かっているのに、それを既存の音楽の概念や価値観に当てはめることができないので、不毛な言い争いになってしまっている気がします。ボーカロイドをロックやポップといった音楽のジャンルのように分類するのはおかしい気がします。また、アニメと相性が良さそうですがアニソンでもありません。技術的にはDTMに近そうですがDTMでもないでしょう。少なくとも自分にはボーカロイドボーカロイド以外の言葉で説明することができません。そもそもネットのCGMがなければこれほどの人気にはならなかったことも考えると、「音楽」に閉じた定義はできないとも思います。たぶん、今はボーカロイドを適切に言い表す言葉は存在しないのだと思います。


音楽関連の用語で以前から変だと思っている「クラシック音楽」という言葉があります。(英語でもやはり"Classical Music"と言うそうです。)クラシック音楽と言えば、どういう音楽か誰でも分かりますが、これらの音楽が作曲された時はクラシック音楽と呼ばれたはずがありません。当時、どう呼ばれていたのか、また、最初に「クラシック音楽」というジャンルを命名したのが誰なのかは分かりません。ただ、大事なのは名前や定義ではなく、当時、後世で「クラシック音楽」と呼ばれることになる楽曲が作曲され演奏されたということです。そして、作曲/演奏した人の何倍もの人々がそれらの音楽を楽しみ、何百年もたった今でもそれらの音楽は名曲として人々に親しまれています。

備考

日本人の名前を英語で言う時は、「名前(ファーストネーム)・苗字(ラストネーム)」の順ですが、海外で初音ミクはそのまま"Hatsune Miku"と呼ばれているようです。検索するとこの順番の方が倍以上の数でヒットします(14百万件と500万件弱)。欧米人は「初音ミク」の姓名をどう認識しているんでしょう。初音ミクがきっかけで日本人の自己紹介のスタイルが変わるようなことになれば、それはそれで面白いとは思いますが。

更新履歴

2011/07/04:クラッシク音楽部分の説明に一部追記。