電子書籍、買う買わないの境界線

シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」は予想以上に売れなかったようです。2ちゃんねるのまとめ記事を読むと、売れなくて当然という感じのコメントがたくさんありますが、何が悪かったのか、どうすれば売れたのかを示唆するようなコメントはなかったので、ちょっと考えてみました。

電子書籍についてネットで色んな記事が読めますが、上記の記事がよくまとまっていました。

実際にこれら端末を現行製品と比較してみると、実はハードウェアとしては、それほど決定的な違いがないことに驚く。通信機能が強化されていたり、タッチ操作対応の製品が増えているなどの違いはあるが、基本的なコンセプトについてはそれほど変わっていない。むしろ最新の製品のほうが、ディスプレイがワイド画面になったことにより、電子書籍の単ページ表示時に上下に無駄な余白を生ずるようになり、見づらく感じられる節もなくはない。

2004年頃に発売された電子書籍端末と今のものとを比較して、端末ハードウェア自体には大きな差がないという指摘は、「やっぱり」と思いました。今、少なくない人がパソコンのモニターや携帯で結構な長い時間、文字を読んでいるのですから、液晶モニターの字が読みづらいから電子書籍を敬遠するという人は少ないと思っていましたし、高解像度や高精細の要求も強くないと思います。

実際、ここ1〜2年海外で大ヒットしている「Kindle」にしても「NOOK」にしても、ハードウェアとしてはよくまとまってはいるものの、突出してこれといった機能があるわけではない。消費者に受けているのは、コンテンツ購入から読書までのシームレスな操作感、そしてコンテンツの充実度だろう。

日本で電子書籍が売れない理由はコンテンツだと思うし、自分が買わない理由もコンテンツです。「ガラパゴス」が分かりやすい良い例です。たとえば、人通りもそれなりにある都心の駅前にある本屋が開店したとします。24時間365日営業のコンビニみたいな本屋です。蔵書数は約2万冊紀伊国屋書店新宿本店の120万冊などと比べると本の数は少ないですが、いつでも買えるというのは大きな強みです。しかし、この書店には致命的な欠点がいくつかありました。特定の出版社の本しか置いてなかったり、売れ筋の本がなかったり、新刊がなかったりするのです。たとえば、角川書店の本はまったくありません。講談社の本はありますが、アニメ化もされた化物語などの西尾維新の本は一冊もありません。ハリーポッターもありません。進撃の巨人はありますが、1巻だけです。普通は最新刊だけ置いてあって旧巻がなかったりするものですが、逆になっているようです。のだめカンタービレは全25巻のうち24巻までしかありません。これは嫌がらせとしか思えません。
普通、本を売ることを商売として考えるなら、何はなくとも新刊を売るでしょう。コンビニが分かりやすいですが、狭い店舗ながら新刊・売れ筋の本を揃えています。日本の電子書籍はこの姿勢が完全に欠けているように見えます。上記記事の

電子書籍の事業者に話を聞いて回っても、こうした問題点に決して気づいていないわけではない。どちらかというと、そんなことはもちろん分かっている、今取り組んでいる、という意見が大勢を占める。消費者側から見えるだけの成果が挙げられていないだけで、会社として前向きに取り組んでいるという点ではどこも共通している。

によるとコンテンツ不足という課題は認識しているらしいが、「前向きに取り組んでいる」という言葉はまったく信じられません。なぜ電子書籍の新刊が紙のコミックの周回遅れで発売されなければならないのか、まったくもって理解できません。作業だけで考えれば電子書籍の方が紙の本より発売されてもおかしくないはずです。これのどこに前向きさを感じればいいのでしょう。欲しい本や新刊が買えないのに端末を薄くしたり軽くしても本も端末も売れるはずがありません。


いまの電子書籍端末が売れないのは当然として、どう変わったら売れるようになるでしょうか。自分の場合で考えてみると、まず新宿の紀伊国屋本店ぐらいの蔵書が揃っていれば買うと思います。ざっと120万冊の蔵書と普通の本屋のように毎日ちゃんと新刊が入荷されることが条件です。本の価格は紙と同じでいいですし、端末の価格も5万円でもこの条件ならOKです。
実際のところ蔵書はそれほど重要ではないんです。もっとも重要なのは新刊が入荷されること。今の電子書籍は数十年前の本を平気で定価販売してるのでまったく買う気になれません。せめてブックオフ程度の鮮度と品揃えを提供して欲しいものです。
電子書籍端末を買うことを検討するとすれば、次のいずれかにあてはまる場合です。

□買うかも知れない電子書籍端末

  • 都心の大型書店タイプ
  • 街の本屋タイプ
  • ブックオフタイプ
  • コンビニタイプ

ーーーーーー買う/買わないの境界線ーーーーーーーー
□買うことを考えられない電子書籍端末

  • 図書館タイプ
  • 実家の田舎のドラッグストアの中の本屋タイプ
  • 今の電子書籍端末(端末代という名目で数万円の入会金がかかり蔵書が少なく新刊がない)

試しに米国アマゾンで売れている本(紙)の上位10冊をキンドルストアで検索したら半分くらいがキンドルストアで見つかりました。キンドルの蔵書は2009年で35万冊、今は95万冊だそうです。キンドルの本はiPadアプリでも読めるので、数年後にキンドルが日本でサービスを始めたら愛用するかも知れません。