本の値段

最近買った本

「CM化するニッポン」と「ウェブ進化論」を買ったのですが、「CM化するニッポン」の文字の大きさが最近読んだ本の中ではかなり大きいサイズだったことと、余白が多かったこと、なおかつ価格が2倍だったので、試しに文字数を比較してみました。

文字数と1円あたりの文字数

  • 「CM化するニッポン」

  ページあたりの文字数:34行 15列、510文字/ページ
  ページ数:205ページ
  1冊の文字数:104,550文字
  価格:1400円(税別)
  1円あたりの文字数:74文字/円))

  ページあたりの文字数:40行 16列、640文字/ページ
  ページ数:249ページ
  1冊の文字数:159,360文字
  価格:740円(税別)
  1円あたりの文字数:215文字/円


上記はページあたりの最大文字数で計算しているだけなので、厳密な文字数ではありませんが、おおまかな傾向はこれで分かると思います。
2つを比べると、後者は文字数で約1.5倍、価格で約1/2倍、1円あたりの文字数で約3倍となります。

本の価格は適正か

ネットで少し調べてみると、昨年、本の価格が適正かどうかが話題になったようなのですが、結論としては、原価が高く、メーカーや書店は薄利であり現状の価格はおおむね適正ということになったようです。

本の売価ってやっぱり「高い感じ」がするんじゃないの

本の価格について

本の定価のメカニズム

初版原価と重版原価

本は高いか、安いか? 本の適性価格とは 「本と出版について(896)」

本の利益率

何に対する価格なのか

本には様々なサイズがありますが、通常、サイズが大きくなるに従って価格も高くなっています。
また、サイズが大きい本の方が表紙や紙の質も高級のように思われます。
サイズが大きい方が本の原価が高くなるのですから、価格も高くて当然な気がしますが、サイズを決めているのは出版社です。


私は子供の頃から読書が好きだったので、結構な数の本を買いましたが、ほとんどは新書の廉価版である文庫が出てから購入していました。
新書版が出版されてからしばらくしないと文庫版がでないので、欲しい本があるときは頻繁に本屋に通ったのを覚えています。


私が欲しいのは本に書かれている内容であって、紙や豪華な表紙ではありません。
多くの人がそうだと思います。
中には本のサイズや大きな文字の本が欲しい人もいるでしょうから、サイズの大きな本と文庫本を同時に発売すれば、そういったニーズにも応えられるように思います。
もし、価格を維持するためだけにハードカバーの様な本を出版し続けているのだとしたら出版業者は自分で自分の首を絞めているのだと思います。
本来2〜3冊の本を買う人が、1冊分の本しか買えなくなってしまうからです。
それに再販制度で独占販売が認められている商品を期間をあけて複数種類発行するのは問題だと思います。
こういった業者による価格コントロールを防止するために独占禁止法があるのに、再販制度のためにどうどうとまかり通ってしまっています。


残念ながら、この傾向は増えているように感じます。
たとえば、以下の漫画はA4サイズの豪華版が発行されて、数日経ってから通常のサイズの単行本が出版されます。

PLUTO (3) 【豪華版】 ビッグコミックススペシャル
PLUTO 3―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (3) ビッグコミックス

文庫本のはじまり

本の廉価版である文庫本の始まりは、「円本」と言うそうです。
円本は1926年(大正15年)に改造社という出版社から『現代日本文学全集』として出版されたのですが、関東大震災(1923年9月1日)による業績不振からの脱却のための起死回生の策だったようです。
出版流通 今日はこんな日

 まず、べらぼ〜に安かった。なにしろ菊版500頁のハードカバーが1円ぽっきり。消費税なんて無い。当時の小説単行本が200頁くらいで3〜5円はしていた時に、一作家の作品を3〜5作品合本で1円だから、3〜5倍の内容で値段は3〜5分の一。上下合わせりゃ6〜 10分の一だもん、こりゃあ凄い割安感。「円本」と呼ばれた由来は、当時東京市内ならどこまで乗ってもタクシー代は一円で「円タク」って呼ばれていたのが流用された。


いわゆる薄利多売の典型だったようです。
一般の単行本が数千部程度しか売れなかった頃に、コンスタントに数十万部が売れるようになり、他の出版社も加わって全国的なブームになったそうです。

本の今後

1920年頃と違い今は娯楽で溢れているので、本の価格を下げても恐らく売れるようにはならないでしょう。
出版社としては、復刻版を出し直すくらいしか売上を伸ばす方法がないのかもしれません。
(音楽レーベルも同じことをしていますが。)


《羅針盤》「著書のインターネット全文公開は暴挙か?」


具体的なイメージは分かりませんが、ネットが出版業界を補完、もしくは置き換わっていくように思います。
出版業者は否応なく、ネットのコンテンツとの棲み分けを迫られていくのでしょう。
そうなれば、今の新書と文庫の売り分けも意味が無くなるのかもしれません。
電子書籍も今は紙の書籍と同じ価格で売られていますが、本格的に電子データへの移行が進めば、音楽ダウンロードでのiTunesの様に価格競争が起きて、低価格化も進むでしょうし。
この前、TVで「4000冊の本で生活スペースが無い」という家をリフォームするという番組を観ました。
4000冊はすごいですが、程度の差こそあれ、多くの人が本の置き場所に困っているのではないでしょうか。
しかし、本が電子化すれば、そういった問題から解放されます。
それこそ、iPodで所有している全CDを持ち運べる様になったのと同様に、所有する本の全てを携帯できるようになるのでしょう。
電子化のメリットは他にも、検索性の向上があります。
たとえば4000冊の本を持っていても、記憶を頼りにそこから目的の本を見つけたり、ページを探すのは、非常に困難ですが、電子化されれば状況は全く変わります。


ただ、残念ながら、本が電子化されてもそれを見るためのビューア(電子ブック)がまだ実用的なものがない(価格的にも、利便性でも)ので、電子化された本が普及することはないでしょう。
それでも、みんなが思っているよりも早い時期に電子ブックへの転換期がくるような気がします。


無料のネット経由のブログや記事、有料の電子ブック、従来からある紙の書籍との競争を経て、「本の値段」すなわち、本来のコンテンツの適正価格が決まるのだろうと思います。