決断を迫られるサードパーティ

ニュースを聞いたときは驚きましたが、製品の販売数が予想を大きく下回っている以上、そのコア部品の製造ためだけに工場を維持するのは得策ではないと判断したのだと思います。これは決定ではないようですが、PS3が全世界でも月平均40万台程度しか売れていない現状では、この話がまとまらないとソニーとしてはより厳しい立場になるのでしょう。

「プロセッサ性能至上主義が崩壊した」と何度も書いてきたボクとしては、もっともな結末だね、と書きたいところですが、2003年頃にはボクもまだプロセッサ性能が大切だと考えてましたからね。それが間違いだと気づいたのは2004年になってから。

さあ? 9月の定点観測

私もPS2全盛の頃は、これからはPCの時代が終わり、ゲームが技術を引っ張っていくものと信じていました。PCの世界ではCPU競争が終わりに向かっていましたが、ゲームの世界ではまだまだプロセッサパワーを必要としているように見えました。そのころSCEの社長だった久多良木健氏は、将に夢のようなことを語っていましたが、ソニーならできるかも知れないとも思ってました。

ゲーム機は半導体をはじめとする部品メーカーにとって目が離せない機器となっている。半導体技術のテクノロジー・ドライバになり,高機能・高性能で高価な部品をふんだんに使っているからだ。

http://techon.nikkeibp.co.jp/NEWS/ceatec2003/030203cover_4.html

この頃、日経エレクトロニクスは紙で読んだのですが、かなり本気で信じてました。高性能のプロセッサを大量生産するゲーム機だからこそ、低コストで生産が可能であり、それを他の分野にも応用していくという考えは筋が通っているように思えました。将来のゲームではより高度な描画処理能力やシミュレーション能力が必要になるというのも、もっともな話に聞こえました。この当時、今の状況は全く予想できていませんでした。将に現実は小説よりも奇なり、です。

来週20日から東京ゲームショーが始まりますが、現時点で決まっている各プラットフォーム別の出展予定タイトル数は以下のようになっています。(これから増える可能性はあります。)

PS3の全世界での次世代機シェアは20%を切っているので、最もタイトル数を必要としているはPS3なのですが、十分なタイトル数を揃えることができていません。また、PS3向けに予定されているメジャータイトル、FF13メタルギアソリッド4モンスターハンター3も本体発売から1年が経過しても発売することができていません。(MGS4は今冬発売予定。)

この現状を打開するためにソニー/SCEにできることは限られていて、優れたタイトルを販売して少しでも本体の販売数を増やすことしかないはずです。それに対して、難しい決断を迫られているのは、スクウェアエニックスコナミカプコンなどの大手サードパーティ達です。
これまで収益の柱だったFFなどのメジャータイトルはゲーム本体の性能向上に連動する形で強化してきました。だから、FF12の後継であるFF13FF12以上のグラフィックが必要になります。FFのファンも当然それを期待します。だからこそ、プラットフォームはPS3Xbox360のいずれかになりますが、PS3は全世界でも国内でも普及してませんし将来性にもリスクがあります。だからといって、全世界で1000万台以上販売されているXbox360は日本国内では50万台未満しか売れていません。FFで遊ぶためにPS3Xbox360を買うのはユーザには負担ですし、ユーザにそんな負担を強いてソフトが売れなくなってはサードパーティとしても困ります。
また、PS3Xbox360のマルチタイトルにすると、サードパーティ側の負担は増えますが、ユーザの負担は全体として改善されます。全体としてと言ったのは、PS3Xbox360のどちらか一方を持っていればいいからです。しかし、マルチタイトル化は将来もマルチタイトルで販売し続けることを宣言したことになるので、サードパーティとしては面白くないでしょう。さらにPS3Xbox360の差異で苦しむことにもなるでしょうし。
もし可能であるならメジャータイトルはWii向けに出すのが、結果的にファースト(任天堂)/サード/ユーザにとって一番良い選択だと思います。サードにとっては全世界で最も普及しているプラットフォームですし、幅広い世代にソフトを提供できるでしょう。どういうユーザをターゲットにしているのかを考えれば、PS3/Xbox360は自ずと選択肢から外れるはずです。また、Wiiを買えばほとんどのメジャータイトルが遊べるのであれば、ユーザも安心でしょう。唯一の懸念は、ハードウェアスペックでWiiPS3Xbox360に劣っていることですが、そこはうまく誤魔化すしかないのではないでしょうか。誤魔化すという言葉は聞こえは悪いですが、PS2で頻繁にやっていたプレ・レンダリングを使えばWiiでも結構、綺麗な映像を流せそうな気がします。また、Wii向けタイトルだからといって、リモコンを振り回さないといけない理由もないでしょう。

いずれにしても今が決断の時です(すでに手遅れかも知れませんが)。ソニーは決断しました(たぶん)。サードパーティには、目前のことだけでなく、長期的な視野に立って、自分たちにとって、ユーザにとってどういう選択が最も良いのかを考えて決断して欲しいと思います。
(こういう先行きが不透明なときこそ、経営者の出番なのだと思うのですが。進むべき方向を示すことができず、あれもこれもと手を出すと開発リソースが分散し、結果、何もかもうまくいかなくなるというのは良く聞く話です。)