任天堂なくして世界のゲーム市場は語れない

「日本のゲームは世界一ではない」そうなので、どこが世界一なのかちょっと調べてみた。
以下はVG Chartzで調べた、過去のゲームソフト販売数のトップ10。

1 Super Mario Bros.         NES   Nintendo      40.24m
2 Pokemon Red / Green / Blue    GB   Nintendo     31.38m
3 Wii Sports             Wii   Nintendo     30.64m
4 Tetris               GB   Nintendo     30.26m
5 Duck Hunt            NES   Nintendo     28.31m
6 Pokemon Gold / Silver       GB   Nintendo     23.11m
7 Super Mario World         SNES  Nintendo     20.61m
8 Nintendogs            DS   Nintendo     19.88m
9 Super Mario Land          GB   Nintendo     18.14m
10 Grand Theft Auto: San Andreas  PS2   Rockstar Games  17.40m

ここで、NESファミコン相当、SNESスーファミ相当、GBはゲームボーイ。販売数の単位はミリオン(40.00mなら4000万)。

いくつか補足する。
一つ目は、Nintendoばかりが目立つが、10位にRockstar Gamesがあるようにこれは任天堂のランキングではない。
二つ目は、3位のWii Sportsと5位のDuck Huntは米国では本体に同梱しているので不公平という見方ができること。仮にこの2つを除外すると、9位はSuper Mario Bros. 3(NES, Nintendo)、10位はPokemon Diamond / Pearl(DS, Nintendo)となる。
三つ目は、これは過去のゲーム全盛時代のランキングで今のゲーム業界を考える参考にならないのではという見方ができること。しかしトップ50にはWiiFitSuper Smash Bros. BrawlなどのWii向けソフトが6本と脳トレどうぶつの森などのDS向けソフトも7本、入っている。そして、40位にはHalo3(XBOX360, Microsoft)も入っているし、109位にはGrand Theft Auto IV(PS3, Rockstar Games)も入っている。
四つ目は、これは現時点のランキングなので今後、順位は入れ替わると考えられること。例えば、8位のNintendogsは近いうちに7位のSuper Mario Worldを抜くだろうし、1年後には6位のPokemon Gold / Silverも抜くかもしれない。日本ではそれほど売れていないNintendogsだが、海外は状況がだいぶ異なっている。

nintendogs_売上

上記は各地域別のNintendogsの累計販売数をグラフに表した図(VGChartz)。横軸の単位は"週"で1年は約52週。図の最大目盛りは199週。青線は日本、赤線は米国、緑線はその他を示す。この図から、毎年、コンスタントに米国とその他の地域でそろぞれ約200万本前後売れていることが分かる。


ソフト販売数の上位の多くを任天堂製のソフトが占めているのだから、任天堂を除いて世界のゲーム業界を語っても何の意味もない。それはあたかも、コーヒー豆を使っていないコーヒーや、牛肉のない牛丼を語っているのと同じ事だろう。
もちろん、FPS(一応、任天堂製もあるが)や戦略シミュレーション、ギャルゲーが趣味だから任天堂は関係ないというなら話は分かる。ただ、そういう時は「世界一のゲーム」ではなく「○○の世界一のゲーム」と書くべきだろう。冒頭の記事も同じ理屈で、「RPGゲームで世界一」とか「CGムービーゲームで世界一」という風なタイトルにするなら、紛らわしくなくて良いと思う。

また、2つ目の記事の「長期的な視野で、金をかけること。」について。この主張の意味が「計画的な投資の必要性」なら分かるのだが、文中の説明からは「開発者の給料を(米国並みに)上げるべき」という意味合いが強そう。もしそうなら、日本では難しいだろうし、あまり効果もない気がする。

もっと俺に金よこせという話じゃないよ。現場の賃金がupして優秀な頭脳が流入すれば、それは今いる俺たちが押し出される可能性だって大いに含んでるんだから。だが、高賃金は必要。

日本のゲームは世界一 島国大和のド畜生

日本の正社員は強いから、既存の開発者が「押し出される」ことは余りないのでは。異動や配置転換の制度はあっても、異動先が必要になるし理由もなく減給もできないだろうし。米国は本当に簡単にクビにできるみたいなので、人材の流動性は高そう。
また、任天堂は日本の会社なので、誤解を恐れずに言うと社員はサラリーマン。CAREERzine:サービス終了によると、平均年収は981万円。社員一人当たりの利益が160万ドル(約1億6千万円)であることを考えると不当に安いようにも見える。自分としては「現場の賃金がupして優秀な頭脳が流入」という考え方にとても違和感を感じる。優秀って何だろう。


改めて考えてみると、やはり冒頭の記事で言っている「世界」と一般常識としての「世界」は別物としか思えない。たぶん、冒頭の記事は「○○の世界」の「○○の」を勝手に省略してしまっているのだろう。そういう特定のカテゴリーまたはジャンルの世界ではその世界特有の考え方があるのかもしれない。でも、ニッチな市場を狙っているのに、グローバグな市場と同等以上の開発コストや賃金を必要とするなら、それは矛盾していると思う。市場に見合ったリソースで製品を開発するのが前提だろう。