任天堂2009年10月30日(金) 経営方針説明会 第2四半期(中間)決算説明会 質疑応答に対する雑感

タイトル通りです。ただ、今回の質疑応答で今まで自分が質問したいことを質問されていた方がいて、その回答がなかなか興味深かったのでエントリを書くことにしました。
以下の引用は、

からです。

今、宮本さんが一番力を入れてらっしゃるタイトルって何?

Q1:今、宮本さんが一番力を入れてらっしゃるタイトルっていうのは、〜以下略

A1:
取締役社長 岩田 聡:
宮本には(任天堂ソフトの)先の展開がばれてしまうので、「趣味のことは話さないでほしい」と言ってるんですけども、今答えられる範囲で宮本に答えてもらおうと思います。


取締役専務・情報開発本部長 宮本 茂:
(前略)それから最近猫を飼ってます。以上です。


岩田:すごいヒントが出てしまいました。

ネタですね。

Wii、DSのネット接続率

岩田:
(前略)Wiiのネット接続率は35%前後、これは日本国内の数字ですが。
(中略)DSは、恐らくですが20%台です。

これまでWiiのネット接続率はもっと高いと聞いていたので、利用者数の増加に合わせて接続率も下がっていったのかも知れません。

Wiiウェアの試遊版は来月(11月)、試験的に導入予定

岩田:
ちょっと実験的に、「Wiiウェアにもし試遊版があったらお客さんは広がるだろうか」ということで来月にも(少数のソフトで)実験をするつもりなのですが、ただ、私自身は、実は試遊版は決定的な答えだとは思っていません。

これは楽しみかも。

Wiiの間の利用者数

岩田:
10月26日現在で93万世帯、248万人のお客様に触っていただいています。

ゲームコンソールと同じでキラーコンテンツがないと大きな普及は期待できない気がします。個人的には「修理、魅せます。」がお気に入りで毎回見ています。今のところ、外れはありません。

バイタリティセンサー

岩田:
脈から分かるさまざまな生体信号を分析し、それによって、通常目に見えないものを、目に見えるようにしたいと思っています。
(中略)
決して単なる脈拍を測る機械ではない

「目に見えないものを見えるようにする」「脈拍を測る機械ではない」とのこと。特に新情報はなし。

株の売買単位の引き下げについて

岩田:
決して、未来永劫やりませんという考えではない

答えになっていない。

HD(ハイデフィニション)対応について

竹田:
普通の放送が全部HDになるわけですから、HDが自然な流れかなというふうに、個人的には今思っています。


宮本:
僕の作り方からすると、流れに逆らうわけにはいかないなという程度の認識です。(中略)SDのものをHDにとハード的に強化しても、ばれてしまいます。だからHD相応のグラフィックを作る開発コストはこれから、さらに高騰すると思います。

2人ともHDを否定していないことから、次世代WiiはHDになる可能性が高そうです。また、ある程度の確度なければここまでコメントしないでしょうから評価機レベルのものもあるのかも知れません。

Wiiのソフトが売れなくて開発コストが回収できないことの対策

宮本:
やはり日本のマーケット専用のWiiのソフトを作って、開発費をペイするのは大変です。僕らもそんな怖いことはとてもできません。


岩田:
ビジネス面の話ですが、さきほどレイトン教授のソフトの事例を見ていただきましたが、日本でヒットした後、海外でああいう結果が出ると事前に予測できた人はどれくらいいらっしゃっただろうかと思いますし、あるいは、かつて「ニンテンドッグス」や「脳トレ」を、日本で売れた後に海外で売ろうとした時に、最初からああなると皆さんお感じだっただろうかと思います。このように、どう作るかというだけでなく、どう売るかという側面があるわけで、やはりソフトメーカーさんとの向き合いという意味では、その辺りが以前よりもずっと重要になってきていると感じています。


取締役専務・営業本部長 波多野:
現状は日本だけではペイしないソフトが増えており、なかなか厳しい状況ですし、海外でも日本のメーカーの存在というのは、かつてのような状況ではないんです。そういう意味では、国内でのご協力はもちろんですけれども、(国内はむしろ独自でやっていただき)海外で私たちが協力する。

過去のドラゴンクエストシリーズの成果を踏まえた上で、「海外でももっと売れるように」、あるいは「こういうソフトが海外で売れるべきだ」という前提に立って、スクウェア・エニックスさんと協力し、任天堂が中心になってアメリカ、ヨーロッパの展開をさせていただくということに、今、話としては決定しております。

これは海外ではドラクエ任天堂ブランドで販売すると言うことなんだろうか。海外ではサードの存在感がますます薄くなりそうな予感が。

PS3Xbox360体感ゲーム対応を進めていることについて

岩田:
たとえば他社さんがモーションセンシングテクノロジーに対応してくると、それで即座に、「これで任天堂の優位性はなくなった」という議論にどうしてなるのか、さっぱり理解できません。もし、そんなに簡単にそれに対応した面白いソフトができるなら、「Wiiスポーツ」より面白いソフトがWiiに山ほどあるはずですが、それが、そんなにないのはどうしてなのでしょうか。それを上手にバランスして作る総合力こそ、任天堂がご評価いただいている市場での力ではないのかなと思っていますので、まだモノがないのに、そのないモノに対して「任天堂がもう優位性を失った」と言われますと、少し違和感があるのは事実です。

余りにも差がつきすぎた勝負は面白味に欠けるので、マスコミはわざと勝負の行方が分からないような書き方をするんだと思う。でも、実際に製品を出しているところと、プロトタイプを発表しただけのところとでは周回遅れ以上の差がついているように思えるので、挽回は難しいというのが正直なところ。ただ、それは体感ゲームに限った話なので、PS3にはブルーレイが、Xbox360にはオンラインというそれぞれの強みがあるので、現行世代で任天堂の一人勝ちはないと思う。

iPhoneとの差別化について

岩田:
同じことは、iPhoneiPod touchとの話についても言えまして、報道等を読みますと、「DSはiPhoneや他社さんのゲーム機に押されているからてこ入れするんだ」と書いてあるんですが、今日実際に資料を見ていただいて、確かに、日本の市場全体にDSの最盛期の「どこまでいっちゃうんだ」というような勢いがないことは事実ですが、DSが市場の中で存在感を減らしているということは全くないし、世界中で存在感が増している中で、なぜそう言われるのか分かりません。それはどちらかというと先に、「任天堂はアップルと戦ってることにしたい」というお考えの方がいて、その考えに基づいて断片的な情報をつなぎ合わせてストーリーを書かれるからああなると感じますので、そういう流れについては、私は違和感があります。

ゲーム機という市場において、iPhoneiPod touchはDSのライバルにはならないよ、という話。携帯ゲーム機への携帯電話機能の取り込みについては後でもう一度、出てきます。

Wiiの間」に対する広告主や番組制作者からの評価

岩田:
映像制作者の方からすると、「お客様の反応が知りたい」と強く思っておられるほど、ものすごく強力な刺激だそうです。現実に「Wiiの間」の関係者から聞きましたけれども、意図通りに評価をいただけなくて悔し涙を流される制作者の方、あるいは、評価されたことにものすごく喜ばれる制作者の方々がいらっしゃるそうです。(中略)もちろん一方で、「そんなのはけしからん」とおっしゃる方もいらっしゃらないわけではありません。

既存のドキュメンタリーで「意図通りに評価」を期待している番組って「マンガノゲンバ」のような番組だろうか。「Wiiの間」で物足りないのは評価結果のユーザーへのフィードバックがないことだと思う。

iPhoneキンドルのような無線と携帯機器を結びつけたサービスについて

岩田:
 私は、iPhone型のビジネスよりは、キンドル型のビジネスの方が興味があります。それはなぜかと言うと、お客様が通信費を負担するのではない、新しいビジネスモデルを提案しているからです。
(中略)
iPodはもともとビジネスも大きかったので、iPodのビジネスがそろそろ限界に到達した時に、アップルさんは実にいいタイミングで電話への拡大を図られたな、というのがむしろ私の見方です。iPhoneで化けたというより、もともと化けていて、化けていたものが成長を鈍化させずに済んだというのが、実態ではないかと思います。

発言に危機感が感じられないが、それはゲームに対する絶対的な自信が背景にある気がする。

SNS無料ゲームについて

岩田:
 いわゆる携帯電話の無料ゲームというものは、無料でたくさん存在するわけですから、もし、そこで得られる面白さや満足と変わらない程度のものしかDSで提供できないとすれば、我々のビジネスというのは瓦解すると思うんですね。(中略)
ですから任天堂がやったようなことの中から、今の携帯電話で実現できそうなことを、どんどん無料ゲームとしていろいろな方が作られる。そして違うビジネスモデルでビジネスをされる。(中略)
特別に特定のサービス、特定の製品を、「これはライバルだ」「これは脅威だ」という発想はしておりません。「いかにその場にとどまらないか」ということだと思っています。

この質問は可能であれば自分も聞いてみたかったことなのでとても楽しく読めました。つまりファミコン時代に任天堂が数千円で販売していたようなゲームを今はオンラインコミュニケーションというオマケまでついて無料で提供されている状況がある訳です。今後はさらに種類も増え、良質のソフトも出てくると思われます。それに対してゲーム専業企業としてはどう対抗するのか。自分なりの解釈としては、新しいソフトやサービスを提供し続けることで携帯電話の無料ゲームなんかには追いつかれることはないよ、という風に理解しました。
面白かったのは、「任天堂がやったようなことの中から、今の携帯電話で実現できそうなことを、どんどん無料ゲームとしていろいろな方が作られる。」という風に任天堂(岩田さん)が認識していたということでした。これまでゲーム文化を担ってきたという自負があるように思います。昨日今日、過去のゲームと似たようなゲームを作り始めたような企業に、ゲームという土俵で負けるはずがないという気概すら感じます。ただ、「DSで起こしたようなイノベーションがなければ、きっと、任天堂は今の地位にいない」とも言っており、かなり危機感は持っているようなので、DS発表時のようなサプライズがまたいつか期待できるかも知れません。