24時間で新しいゲームを発明できるだろうか?

はてブのホットエントリーで電通の方が24時間でゲームデザインをする話が多くのはてブを集めていました。話としては面白いしやっている事も興味深いですが、あまりにも話が出来すぎな感じがします。

実は日本のゲーム会社でいっぱしのゲームクリエイターを名乗っている人たちも、ゲームの仕組みをきちんとクリエイトできる人はほとんど居ない。
「企画」と「設計」は明らかに違う仕事だが、そのあたりの分業が日本のゲーム会社ではあまりできていない。

大多数の人が常に「なんとなく」作っているという印象を僕はいつも受ける。
企画書も仕様書もあるが、仕様書は無視することを前提に作られたりする。
仕様書の意味が、いわゆるシステム開発とは天と地ほどにも違う。
結局、面白さの部分の大半は、実はプログラマーが設計しているというゲームは少なくないのだ。

専門学校であっても、「ゲームの作り方」という作業は学ぶが、ゲームの仕組みそのものを作り出すようなやり方は学ばない。

だから世にあふれるゲームは、何かのコピーか、そのまたコピーしかなくなってしまう。
目新しい要素として入ってくる新システムも、実はあまり目新しくない。
結局、ゲームの個性は世界観や絵柄といったことにしか反映されず、仕組みそのものが発明されることはほとんどない。

「世にあふれるゲームは、何かのコピーか、そのまたコピー」という点はその通りでしょう。でも、そうなってしまう理由は何となく作っているからでも、専門学校で作り方を学ばないからでもなく、単純に新しい仕組みを発明することが難しいからだと思うんです。


先日発売された「モンハン日記 ぽかぽかアイルー村」が売れているそうです。でも、ゲームの仕組みは任天堂のヒットシリーズ「どうぶつの森」とそっくりだそうです。

ゲーム屋一同「アイルー村舐めてた、まさかこんなに売れるとは思ってもいなかった。」

少しやってみたけど、「どうぶつの森」だった。
釣りとかまんま「どうぶつの森」だった。

実際のゲームはやっていませんが、オフィシャルサイトを見る限り、モンハンの世界観の中にどうぶつの森の仕組み+αを作ったような印象を受けました。モンハンもどうぶつの森も遊んだことがありますが、これはこれで面白そうに見えますし、DS向けに発売していたら買っていたと思います。

モンハン日記 ぽかぽかアイルー村 - PSP

モンハン日記 ぽかぽかアイルー村 - PSP

また、どうぶつの森とよく似たというかほとんど同じゲームデザインのゲームとして有名なものに「とんがりボウシと魔法の365にち」があります。


これらのゲームの元となったと言われているどうぶつの森の企画は、当初、広大なフィールドで展開されるRPGのようなゲームだったそうです。

江口
そうですね。『どうぶつの森』はその64DDの大容量のセーブデータを使っていままでにないゲームがつくれないか、とそんな話から企画がスタートしました。
そのときにわたしがテーマとして考えたのが「ほかの人といっしょに遊ぶ」ということでした。
広大なフィールドのなかにRPGのような世界があって、そこに複数の人が入ってきて、人が遊んだ結果が他のプレイヤーに影響が出るような、そんなものをつくれないだろうかと思ったのがこの企画のそもそものはじまりです。

だから、どうぶつの森の初期の企画に「どうぶつ」は登場せず、当然「どうぶつ」との会話もありません。その代わり「ダンジョン」や「冒険」といった従来のゲームに馴染みのなる言葉が登場します。それが様々な紆余曲折を経て、小さな村でほのぼのとした日常を送る「どうぶつの森」というゲームに変わっていきます。


でも、そんなゲームはこれまでに無いので、次のような疑問が生まれます。「こんなゲームが売れるのか?」という疑問です。

岩田
「人と違うこと」がこのゲームの大きなテーマになっていったんですね。
じゃあここで、大事なことを聞きます。
わたしはあの当時、こんなに目的のないゲームは初めて見たんですけど、このような商品を世に出すことに勇気がいりませんでしたか?


野上
実は、発売するまで大丈夫かなあと(笑)。


江口
僕らは絶対におもしろいと思っていたんです。
でも、いままでのゲームに慣れてきた人が、ゴールもエンディングもないのにこれをおもしろいと思っていただけるのか、そこはとても不安でしたね。

でも結果は予想以上のヒットになり、人気シリーズになりました。特にDS版は大ヒットとなり映画も作られました。

そして2005年11月23日にニンテンドーDS用に『おいでよ どうぶつの森』が発売され、携帯ゲームという手軽さとの相性や、同年の『脳トレ』ブームによるDSの女性・高齢層の拡大とともに潜在的需要が一気に爆発したのか、2009年2月時点で約500万本という、日本ゲーム史上の売上上位記録を更新するほどの本数を売り上げるというタイトルとなった。

こういう新しい仕組み・コンセプトのゲームが生まれるまでの話を読んで感じるのは、その困難さです。経験豊富なゲームデザイナーたちがお互いに知恵を出し合いながら、今までにないゲームの仕組みを模索していく。暗闇中を手探りで出口にたどり着こうとしているような印象を受けます。その結果として、新しいゲームの仕組み・アイデアが生まれます。でも、新しいがアイデアだからこそ、本当に売れるかどうかの不安がつきまといます。それが優秀な人を集めたとは言え24時間で新しい仕組みを生み出すだって?本当に?


それが本当なら凄いことだし、画期的なことだと思います。でも、それができないから、実績のあるゲームの続編を作ったり、実績のあるゲームのコピーを繰り返したりすると思うのですが、違うのでしょうか。