僕が大学に行った理由

調査をした学生も査読に入った教授陣も身の回りの経験から指摘していたのは、この大学の学生たちの「自信の無さ」であった。大学に入った時点から「大した就職なんて無理」と自己評価して、向上心をもつことを放棄しまう学生たち。就職活動の壁にぶつかるよりも前の三回生の時点で既に就職への執着がなく、フリーターでもいいと決めている学生たち。彼ら彼女らは、いったい何のために学ぶモチベーションをもつことができるだろうか。

このエントリを読んで、自分が大学に行った理由を整理したくなったので書いてみます。


自分が子供の時は賢いとは真逆の存在で、一言で言うなら「愚鈍」でした。理由は今でも分かりません。要領が悪く、周りの空気が読めず、運動もダメ、かと言って性格もよくなく、とても出来が悪い子供でした。両親は結構悩んでいたのかも知れません。よく「勉強しなさい」と言われていましたが、なぜ、勉強しなければならないのか分かりませんでした。親の薦めに従い公文やソロバン塾に通ったりしましたが、長く続きませんでした。
その頃から興味があったのは機械系や科学系でした。学研の科学の付録は毎回楽しみにしてましたし、NHKスペシャルのいくつかの番組は今でも憶えています。あと、父親に教えてもらった将棋は強くはありませんが、「先を読む癖」は色々と役に立ったと思っています。あと、誕生日やクリスマスに買ってもらったおもちゃのほとんどはバラして中身を調べてました。ただ、残念ながらほとんど元には戻りませんでしたが。プラモデルもよく作ってました。作ったあとは興味を無くして放置していました。なので、今流行っているフィギュアを買ってきて飾るという感覚は、実感としてはよく分かりません。子供の頃の失敗としてよく憶えているのは、100Vコンセントの切れ端を電池で動くロボットの電池ボックスに接続して、ヒューズを飛ばしたことです。当時の計画では「高速可動するロボット」になる筈だったのですが、交流と直流の区別がついていなかったのが失敗の理由でした。似たような失敗として、9Vの電池を豆電球に接続して線が切れたことです。一瞬、とても明るくなったところまでは良かったのですが、長続きしませんでした。
とにかく勉強は出来なかったのですが、技術系の仕事につきたかったので、高校時代は、できればどこかの工学系の大学、それがダメなら専門学校に行くしかないと思っていましたが、両親からは専門学校はお金がかかるということで折り合いがついてませんでした。高校の時の選択科目で物理を選択したのですが、これが面白く授業を無視して教科書を読みふけっていました。今考えると先生に対して非常に失礼な態度だったと反省しています。申し訳ありませんでした。
大学受験では都会に出る必要があるのですが、ほぼ毎回、大きな本屋に寄り道していました。自分の田舎には薬局とセットの個人商店の本屋しかなく、専門店に立ち寄れる機会は貴重でした。その頃、アイザック・アシモフの「アシモフの科学エッセイ」シリーズを発見し受験シーズン中にも関わらず全巻揃えて全部読みました。今考えると、恐ろしいことをしていたとゾッとします。
センター試験はほとんどが悲惨な点数でしたが、物理はあと1問で満点という悪くない点数でした(自己採点)。そして大学受験は工学系の4年制大学に合格することができたのですが、今でもなぜ合格できたのか不思議です。
電気とか電子がつく学科だったのですが、余り面白い講義はありませんでした。アルファベットを教わることはありませんでした、英語は高校英語の延長みたいな感じでした。当時、レアジョブのようなサービスがあって大学が支援してくれていれば、結構、役立ったような気がします。当時は特殊な才能を持った日本人しか英語が話せないと信じていました。大学で嬉しかったのは図書館があったことです。数学セミナーとか今まで見たことのない雑誌がゴロゴロしてました。また、4年で研究室に配属された時、UNIXがかなり自由に使えるようになったのが嬉しかったことでした。当初、OSも、シェルも、ディレクトリも、emacsも、muleも、mosaicも何も知らなかったのですが、当時、研究室に置いてあったUnixの入門書を一晩で読んだり、当時としては非常に恵まれていた24時間365日高速ネット接続という環境をフルに活用していました。確か、周りの人から「おまえパソコンも持ってないのに何でそんなこと知ってるんだよ」と言われた気がします。
その後、あっと言う間に1年が過ぎて、運良くIT系の会社に就職することができたのですが、工学系は推薦枠があるので文系よりかなり有利な気がしました。今はどうなのは分かりませんが。


入社当初は開発系の部門にいたのですが、今は同じ会社で別の仕事をしています。でも不満は特にありません。まあ、もちろん嫌なことはそれこそ掃いて捨てるほどあります。それはどんな仕事でもあるでしょうし、年を食った分だけ大人になったということなのかも知れません。今から学生時代を振り返ると、圧倒的に職業に対する知識が不足していたのだと思います。当時は、インターネットもなく情報の入手先はテレビや本屋くらいしかなかったせいかも知れません。会社にはいろんな人がいますし、厳しい時代ですが人それぞれが自分なりのやり方で精一杯働いています。でも、そういうものを学生が目にする機会は殆ど無いのかも知れません。もしかしたら、インターンシップで学生時代から会社で働く機会があると学生にとっても企業にとっても良い気がします。


冒頭の記事で「向上心を放棄」とか「モチベーションをもつことができるだろうか」と書いてあるのを読むと、自分より才能や頭のいい人がいっぱいいて、色んな可能性を持っているのにもったいないなと思ってしまいます。