任天堂の勝利の方程式

7月に任天堂ニンテンドー3DSの値下げを発表した後、任天堂に批判的な記事がたくさん掲載されました。実際、3DSが予定していた通りに売れなかった訳ですし、発売から間もない時期の大幅な値下げは、任天堂がミスを認めたとも取れるので、批判しやすかったのだろうと思います。でも、そんな誰でも思うこと、書けることを記事にして何が面白いかとも思うわけです。当人たちは人の失敗をネタに原稿を書いて、お金が貰えてるのだから満足なのかも知れません。


さらに最近はGREEDeNA(モバゲー)などのソーシャルゲームと呼ばれるゲームを開発している企業の業績が好調なことから、王者交代とか任天堂が劣勢とか言いたい放題の状況になっています。特に以下の一つ目の記事ではソーシャルゲーム任天堂も作るべき、と主張しています。任天堂花札やトランプなどのカードゲームがメインの時代から「ソーシャルゲーム」を販売していたとも言えるし、ファミコンは標準でコントローラが2つ付いていたし、パーティーゲームが得意だし、十分に「ソーシャル」を活用していると思うのですが、「ネット」以外の人間関係はソーシャルに含まれないと考えている人が少なくないようです。

任天堂の商売のやり方は極めて単純です。商品はビデオゲームという高額なオモチャです。高額なので売上は大きいですが、そう気軽には買ってもらえません。だから年末年始の財布の紐が緩む時期を狙って売れ筋の商品を市場に投入します。この年末に財布の紐が緩むというのは日本に限らず世界的に共通しているらしくアメリカではブラックフライデーと言うそうです。そしてこの時期の主役は子供です。クリスマス、そしてお年玉などにより、この時期だけ子供の購買能力が飛躍的にアップします。だから、多くの子供たちが欲しいと思うオモチャを年末に揃えることで、高いレベルで安定的に売上を維持することができます。
岩田社長も3DSの値下げ発表時に「年末にはニンテンドー3DS用に有力タイトルが複数控えており」「私たちのビジネスは年末偏重」と言っていたので、冒頭のような批判が的はずれなことは明らかなのですが、批判すること自体が好きな人には何を言っても届かないのかも知れません。
そして、年末商戦を制するために重要なことは、『ウィッシュリスト(欲しい物のリスト)』の1番に入ることです。


具体的には、ニンテンドー3DSカンファレンス2011のようなことが、1番に入るために必要なことなのだろうと思います。これだけの年末ラインナップがあれば値下げしなくても良かった気もしますが、値下げしたからこそ参入したサードパーティもいるでしょうから、前もって値下げすることは必要だったのでしょう。

子供が見たら目を輝かせるようなオモチャを、1年で最も子供がお金を持つ年末に販売するというのは、オモチャを作っている会社なら当たり前のことだと思いますが、その中で一番になれるのは当然1社だけです。


なお、いわゆるソーシャルゲームビデオゲームに今後は置き換わっていくという人がいます。でも、クリスマスプレゼントやお年玉でマリオカートポケモンを買う子供はいるでしょうが、代わりに「〇〇ロワイヤル」を買う子供はいません。また、時々、ゲームソフトを買うために早朝から行列ができることがありますが、ソーシャルゲームをそこまで頑張って買うとは思えません。ソーシャルゲームを遊ぶために行列を作らなくても良いとも言えますが、そこまでして欲しいと思わないとも言えます。こういうまったく違うものを同列に並べて、片方がもう片方を置き換えるとは到底思えません。