「PS3は11月出荷」が信じられない3つの理由


以前からSONYPS3を2006年春に出荷すると言っていたが、先週になって突然、11月上旬に延期すると発表した。
ただ、この発表内容を鵜呑みにはできそうにない。

1.ライバル機XBOX360の出荷に対して無反応

かねてから対抗心をむき出しにしてきたXBOX360が昨年11月22日に北米で出荷され、日本国内で12月10日に出荷された際もSONYは全くコメントを出さなかった。
もしPS3を春に出荷するのであれば、あまりに不自然な対応だ。
ゲーム機の競争はどれだけ多くのシェアを握れるかという競争でもある。
多くのシェア、つまり本体の出荷台数を稼げれば、ソフトベンダーも多くのソフトを販売でき、それが更に本体の出荷台数に繋がっていく。
高価なゲーム機本体を複数購入できるユーザは少ないことから、なんとかXBOX360の購入を思いとどまらせるために、PS3をアピールするのが普通だ。
それが全くない。
これが理由で、PS3の2006年春出荷は無いと私はこの時確信した。
ただ、春を目前にしてSONYから何の発表も無いのはおかしい。
発表しないでいることのメリットは何もないからだ。
考えられるのは、発表したくても、出荷日が決められなくて発表できなかったのだろうということだ。
そして、3月になり発表のタイムリミットがきて、延期を発表せざるを得なくなったというのが実際のところだろう。

2.出荷遅延の理由は、BD、HDMIの規格確定の遅れが原因

後藤弘茂のWeekly海外ニュース−久夛良木健氏が語ったPS3遅延の理由

 久夛良木氏は「去年(2005)の春に、今年(2006)の春と言ってしまい、そのままにしてしまって、非常に申し訳なかった」と、これまでの空白について発言。遅れた最大の原因は、BDやHDMI(High-Definition Multimedia Interface)などの規格の確定を待っていたためであると説明した。

SONYが理由で出荷が遅れたわけではないという説明だ。
BDとHDMIの規格が遅れたのは事実だろうからウソは言っていないが、以下のような記事もある。

後藤弘茂のWeekly海外ニュース−PS3の次の課題はローンチタイトル

「(BDやHDMIの)規格化の遅れを待っている間、この機能はいらない、これを追加するといったさまざまな仕様の変更を行なってきた。また、生産性を高めるために、チップをさらに小さくしようとした」

 「そのため、色々なバージョンのLSIが存在してしまっている。今まで出ているツールは、途中のもので、機能が足りなかったり、スピードが遅かったり、ライブラリが成熟していなかったりした」

 「そこで、5月の中旬には、ほとんどファイナルのツールを皆様に配布させていただく。7月くらいに安全基準をクリアして販売するが、5月の段階で(仕様的には)ほとんど最終になる」

(BDやHDMIの)規格化が遅れたから、PS3本体の改良行っていた。
だから、ソフトベンダーの開発に必須のツールの販売が7月になるというのだ。
当初の出荷予定日が2006年3月だったとすれば、それが11月に延期になるのであれば8ヶ月も伸びるのだから、規格化が遅れている部分を保留にすれば、全体としての開発は余裕ができるはずだ。
それが、ツールの販売まで7月までずれ込んでしまうのはおかしい。
普通は、「PS3そのものの開発が遅れているから、出荷時に最新のBDやHDMI仕様をサポートできるように仕様を調整中」と考えるのが自然だ。
また、SONYの自己正当化コメントは前科があり、PSPの不具合も信じられないようなコメントで自己を正当化している。

3.出荷日は2006年11月上旬

BD/HDMI規格化の遅れが理由でPS3の出荷日が延期になったそうだが、新しい出荷日は余裕を持った日程になったそうだ。
少なくとも久多良木氏はそう言っている。

後藤弘茂のWeekly海外ニュース−久夛良木健氏が語ったPS3遅延の理由

●海外の年末商戦に合わせた発売日の設定

 新しく決まった11月上旬という発売日について、久夛良木氏は次のように説明する。

 「(11月上旬に設定した)目的は、海外のサンクスギビングデー(感謝祭:11月の第4木曜日)から始まる時期に、余裕を持って望むこと」

 「いろいろな案があった。9月で日本という話もあったし、7月にしちゃえ話というのもあった。しかし、ソフトメーカーの皆様が、きちんと作り込めるようにしようと(このスケジュールとなった)」

上記で7月とか9月とか言っているが、開発ツールの販売が7月なのに7月に本体を出荷できるとは、私には思えない。
最初にも書いたがゲーム機の勝負はシェアの勝負だ。
出荷が遅れれば遅れるほど、不利になってしまう。
ビジネス面から考えれば、1日でも早く出荷したいというのが本音だし、最も販売が見込める年末商戦を逃すのは絶対に避けたいだろう。
特に今年の年末は任天堂の次世代機が出荷される。
久多良木氏は、「余裕を持って」とか「きちんと作り込めるように」と十分に余裕があり実現可能な日程であることを強調していたが、開発ツールが7月に販売されるのに余裕があるはずがない。
この日程が開発日程ではなくビジネス面で考えられている以上、さらに日程が遅れることは十分に考えられる。
さらに日程を守るために無茶をすれば、十分な検査ができず、品質が低下してしまうだろう。

結局

PCと並んでテクノロジドライバとなったゲーム機は、見るだけでも楽しいので、できれば予定通り出荷して欲しいと思う。
また、PS3XBOX360よりも高い性能が期待できそうなことから、単に画面が綺麗なだけではない「リアリティ」が見られるのではないかと思っている。
私も日本人なので、できれば日本企業にがんばって欲しいと思っているのだが、最近、失望させられることが多い。
ゲーム機は日本が引っ張ってきた分野なので、ぜひ、がんばって欲しい。