著作権と文化の発展とYouTube

『オリジナリティ』は、人間はもっていません。それは人の手に余るものです。」とFIFTH EDITIONさんは言っていました。私も同じ意見です。だからこそ、同時代および過去の多くの先達の残してくれた作品に敬意を払いながら、参照・引用すべきだと考えています。

著作権法の目的

著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)第一章 総則 第一節 通則

(目的)
第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

著作権法は第一条で「文化の発展に寄与することを目的とする。」と明記しています。「著作者等の権利の保護」は文化発展のための手段であって著作権法の目的ではありません。
具体的には、文化の発展を促すために著作者に著作物に対する独占的な権利を与えると同時に、学校教育での無許可使用や無許可での引用などその権利に制限を加えています。そして、著作権に保護期間を設けることで一定期間後パブリックドメインとして社会一般の利益となるようにしています。

引用

著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)第二章 著作者の権利 第三節 権利の内容 第五款 著作権の制限

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法に書かれている引用の記述はこれだけです。目的が正当であれば、著作物を引用できるとしています。優れた価値ある作品を、報道/批評/研究することは「文化の発展」という著作権法の目的にも合致するものです。

YouTube=TV+新聞+雑誌ーα

まず、上記のメディア・パブさんの記事によると極楽とんぼの不祥事関連が、その日の閲覧数(Most Viewed)で2位以下と桁違いでトップとなっています。この結果は、この話題に対する関心が高かったことに加えて「見たい番組の存在は『放送後』に知ることが多い」というのが理由だと思います。
TV番組は動画なので情報量は多い(情報の価値は別として)ですが、基本的に垂れ流しなので、録画でもしない限り後で観ることはできません。見逃したらそれでアウトです。それに対して、新聞はテキストと写真のメディアですが、購読していれば空いている時間に読むことができます。雑誌もテキストと写真のメディアですが、気に入った雑誌を選んで購入することが出来ます。
そして、現在、引用が社会通念上認められているのはテキストメディアである新聞や雑誌だけでした。TV番組様な動画メディアは動画を引用するという技術的な課題もあり、今までは行われていなかったのだと思います。
しかし、現在、TVは新聞、雑誌等と比べて圧倒的に大きなメディアです。関係する企業の規模もそうですが、社会的な影響力は突出していると思います。(「TVと新聞、どっちの情報が信頼できるか?」とは別の意味で。)
著作権法の目的が、「文化の発展」である以上、著作物であるTV番組は新聞等と同様に保護されると同時に適切に引用されることが望ましいです。後はどう「適切な引用」を実現するかという話だと思います。
YouTubu単体でできることは動画の保存/参照だけですが、ブログと組み合わせることで、TVの様な動画放送ができることに加えて新聞や雑誌のような引用可能な文献としての役割もこなせます。ブログとの組み合わせを前提としているなら逆にこの一見機能不足とも見えるインタフェースが適しているのかも知れません。

ブログでTV番組を引用する場合

裁判での判例から書籍の場合の適切な引用の条件は、以下とされています。
Wikipadia−引用

著作権法において正当な引用と認められるには、公正な慣行に従う必要があり、判例によって公正な慣行とは以下の条件を満たすことであると解されている。

1. 著作物を引用する必然性があり、また、引用の範囲にも必然性があること。引用先が創作性をもった著作物であることが必要。「次のような文章がある」として、あとは丸写しにしたようなものは、引用には当たらない。
2. 質的にも量的にも、引用先が「主」、引用部分が「従」という関係にあること。
3. 本文と引用部分が明らかに区別できること。
4. 引用元が公表された著作物であること。
5. 出所を明示すること。(著作権法第四十八条)

同様のことがTV番組を引用する際に満たすことが出来れば、現行の著作権でも合法と言えると思います。例えば、極楽とんぼの相方の号泣シーンをブログに掲載して、感想を述べた場合、1はそのシーンに対する感想を述べるのだから必然性はありますし自分の感想なのですから創作性を持つ著作物です。3〜5も問題はなさそうです。ただ、2は判断が難しい。テキストの中に動画を引用させて、質や量をどうやって比較していいのか分かりません。
また、「スプー事件」や「極楽とんぼの不祥事」の様な記事は、TVで放送されると基本的に二度と放送されることはありません。そういった一部の人だけが観て他の人は知ることなく忘れ去られる運命にある価値ある、もしくは人々にとって興味・関心あるシーンを、引用によって多くの人が参照できるようにすることは、「文化の発展」に寄与することだと思います。さらに、忘れられるだけのシーンなので著作権者が損害を被るとも思えません。
この場合は著作権法の目的にも合致していて基本的には問題ないと考えています。

YouTubeに掲載する場合

こっちの場合は、上記の引用の条件に照らし合わせて、NGだと思います。YouTubeの場合、単に引用部分だけが公開されるのですから、引用とは言えません。ただ、「ブログに掲載する手段としてYouTubeを使うのなら?」という条件を付ければ可能になる気もします。もしくは、YouTube単体では使えないようにYouTube内の検索機能を削るなど、改善(デグレード?)が必要かも知れません。