メディアリテラシー教育

POLAR BEAR BLOG: 「答えがググれる世界」の教育
この記事で初めて「完全数」というのを知ったのだが、教師?(研究員?)が3番目に小さい完全数を求めることを小学生に要求してどういうアウトプットを期待していたのか疑問に思った。やり方は答えである496まで、黙々と約数を求めて合計を算出する以外にないのではないのか。プログラムの知識やオイラーの公式を知っていればもっと楽に分かるかも知れないが、まさか、この出題者は小学生が「考える力」を養うことによってにオイラーの公式を導けるかも知れないと考えていたのではあるまいな。ちなみに完全数についてはこの記事の説明が分かりやすい。
この話を読んで思い出したのが、高校の数学の教科書に載っていたガウスの逸話。(こういう教科書のコラム?を読むのが好きだったので、授業そっちのけで読んでいた。)
Wikipediaーカール・フリードリヒ・ガウス

生い立ちと幼年期

ガウスはドイツのブラウンシュヴァイクで煉瓦職人の父親と、清楚な母親の元に生まれた。子供の頃から彼は神童ぶりを発揮し、逸話として、小学校での話がのこっている(彼は後年好んでこの話をしたそうだ)。ある時、1から100までの数字すべてを足すように課題を出された。それを彼は、1+100=101、99+2=101、98+3= 101・・・となるので答えは101×50=5050だ、と即座に解答して教師を驚かせた。実際、算術の教師は彼の才能を見るにつけ、このような天才に自分が教えられることは何もないと言ったそうである。
(注:この逸話では、よく前記の初項=公差=1の等差数列が例に挙げられるが、説明の便宜上であり、実際には初項=81297、公差=198の等差数列であった。)

(強調は引用者)
教科書に載っていたのは1〜100までの加算の話だったが、実際には81297, 81297+192, 81297+(192x2),...を出題させられたとのこと。いまいち実感がわかないので、表計算ソフト(ExcelじゃなくてOpenOfficeのCalc)で数字を並べてみた。



(左の列が1〜100までの数列で一番下の数字が合計値。右の列が81297, 81297+192, 81297+(192x2),..の数列で一番下が合計値。)
数列の最後の値は、81297+(198x99)=100,899で、合計値は9,109,800になる。これが小学生に出題する問題なのか、はなはだ疑問だ。この課題によって、生徒は何を学習することが出来るのか。(脳を鍛えることが出来る?)
この課題に対して小学生だったガウスは、(81297+100899)*100/2=9109800とまっさきに回答したことになる。


さて、最初の記事とガウスの逸話の共通点と異なる点はなんだろう。
まず共通点は、次の2点。

  • 非常識な数学の課題。
  • 出題者の予想を超える回答をした生徒(どちらも正解。)

異なる点は、以下の点。

  • 片方は答えを「検索」して回答。つまり、完全数が何かすら理解していない可能性すらある。一方は数学の閃きにより回答。


やはり、この記事の問題は「無茶な課題」を出してそれをおかしいと認識していない出題者だと思う。考える力云々と言うのなら、こういう安易な課題を出すのではなく、回答方法が複数存在するような課題を出すべきだろう。今回の問題の模範解答は何なのか、出題者に問うてみたい。それに対して「考える力を検証するのが目的だから正解はない」とか言うようなら、「おまえの考える力を見せてみろ」と言いたい。この記事の課題と比べると、ガウス達に課題を出した教師の方が、計算能力向上という出題意図が分かるだけましのような気がする。


実はここからが本題というか、言いたかったことなのだが、「答えがググれる世界」の教育とは何かと言うこと。
これからは日常生活でも企業活動でも「検索」は必要な技能だし、うまく使っていくべきだと思う。そういう世界で求められる能力は、メディアリテラシーだと思う。言い換えると情報の価値を判断し活用する能力。どういう授業が良いのかよく分からないが、例えば、何らかの課題/命題に対して各自/各グループが回答や反論を述べて討論するという方法が良いかもしれない。ポイントは課題や命題に正解がないようにすること。どういう課題があるかはすぐに思いつかないが、「新聞1ページ(朝刊でもOK)の情報量は何バイトか?」でも良いかもしれない。以前に「検索して」調べたらメディアによって値がバラバラだった。また、「はてな人力検索」から課題を持ってきても、いいかもしれない。ただ、討論形式の授業は日本は慣れていない(アメリカでは討論形式が基本と聞いたことがあるし、「おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状 (小学館文庫)」にもそう書いてあった。)ので、ブログとソーシャルブックマーク形式というのも、アリかもしれない。課題の回答はブログで書いて、各生徒はブクマでコメントを書く。なお、この場合も「はてな人力検索」を使って回答を作ることは禁止しておくべきだろう。