結局、日本の大学は自立できていないと言うことか

中岡望の目からウロコのアメリカ - ハーバード大の教育改革:日本の大学改革とどこが違うのか

大学基金は、ハイリスクの運用を行なっていると知って、驚いたのを覚えている。アメリカの大学は専門的なファンド・マネジャーを雇って積極的な基金の運用をしているのである。ハーバード大学は総額で259億ドルの基金を持っており、昨年の利回りは19%であった。

専門的なファンドマネジャーとか高利回りという話を聞いて、村上ファンドの村上さんの話を思い出した。
うつせみ日記 - 村上さんの会見を観て(その2)

米国の大学財団は一生懸命儲けて、儲けたお金で無料で海外からの留学生を入学させている。もっと日本の大学ががんばるようなシステムにならなかったのかなと、日本の大学に声を掛けていた。

村上ファンドの運用資金の6割は大学基金という話もあり、上記の言葉は常日頃思っていたことだろうと考えられる。
そもそも、大学の目的は教育と研究である。そのうちで教育に関しては優れた人材をより多く卒業させることがその大学の教育に対する評価になる。そして優れた人材を卒業させる最も近道は優れた人材を入学させることである。優れた人材は、貧富の差や人種に依らないので、できればそれらの人材の優劣に関係ない条件は排除した方が望ましい。そう言う意味で以下のハーバード大学奨学金制度や授業料免除制度はすばらしいと思う。大学は優れた人材を卒業させることができるし、学生は大学で学ぶことができるので大学に感謝するだろう。Win-Winの関係になれる。

3年前、筆者が教鞭を取っていたワシントン大学でのことだが、バス亭で日系の学生と話をする機会があった。彼女は「家は貧しいが大学の奨学金があるので進学できた。将来は医学部に進みたい」と語っていた。同大学の授業料は3万ドルを超えている。これは同大学に限らず、アメリカの大学に共通していえることである。ハーバード大の学部授業料も3万ドルである。主要大学の中で一番授業料が高いのはコロンビア大学で3・2万ドルである。日本の大学よりもはるかに高いが、豊富な資金を背景に潤沢な奨学金を提供して優れた学生を集めている。ハーバード大は、04年に低所得層の学生に対して授業料減免制度を持っている。最近、親の所得が4万ドル以下の学生に対して授業料を免除する決定を行なっている。


そういえば、以前に話題になったNHKスペシャルワーキングプアで、子供を大学に行かせるために複数のアルバイトを掛け持ちしているお父さんの話があった。
あの話の中でナレーターは一切奨学金や大学の授業料が高額なことについて言及がなかったが、それは不自然だと思う。こういう日本の社会の問題を意図的に避けるメディアの姿勢にもやはり問題がある気がする。


内田樹の研究室 2006: これで日本は大丈夫?

大学教授のデータ捏造や研究費の不正使用は(2)である。
これは文科省が音頭取りをしてはじめたあの「自己評価・自己点検活動」のマイナスの成果だと私は見ている。
自己点検・自己評価というのは、要するに教員の業績や能力をカタログ化し、標準化し、数値化することである。

内田樹さんも文科省のやり方には問題があると思っているようだ。それが、大学教授のデータ捏造や研究費の不正使用に繋がっている可能性があるとのこと。
別の箇所には「気の毒だが、なにしろ国立の理系の場合、年間研究費が15万円(!)というようなところもある。」とも書かれており、日本の大学の置かれている状況がかいま見える気がする。そんな状況の大学からすれば、ハーバード大学の約2兆8000億円(258億ドル)という膨大な大学基金はとてもうらやましいだろうと思う。


中岡望さんは、「日本の教育をダメにしてきたのは文部科学省であるというのが、私の持論です。」とのことだが、私は責任の多くは大学自体にある気がします。