死ぬ死ぬ詐欺とジャーナリズム

以前、「死ぬ死ぬ詐欺」という言葉がはてブで注目を集めていたときは余り興味が無く関連記事を読まなかったのだが、今回、死ぬ死ぬ詐欺 まとめサイトを批判したオーマイニュースの記事が10月の「月間市民記者賞」に選ばれたそうなので、その記事を読んでみた。

まず、そのまとめサイトを読んでみた。
死ぬ死ぬ詐欺」の意味については前述のまとめサイトのトップページに

みなさん助けてっ!
うちの金使いたくないから
全額募金でお願い!!

と分かりやすくアスキーアートの絵も添えて書いてあり通り、海外で治療しなければ助からない難病の子供の治療費を自己費用負担せずに全て募金で賄おうとすること、を指していると思われる。ただ、wikiのフロントページには

このサイトは、さくらちゃんを救う会を通じて募金活動の在り方とその組織化を支援し、余剰金を運用する団体についての意見をまとめたものです。

とも書かれており、難病の子供の両親と言うより、募金活動と家族の間を仲介して募金を運用している団体を批判しているようだ。

このまとめサイトでいくつか知らなかったことが分かったので、列記してみる。

Q:どうして1億3600万円もかかるのでしょうか?
A:治療費自体はそれほどかかりませんが、デポジット(保証金)制度により前もって多額の医療費を支払う必要性があります。
 救う会による目標金額は以下の通りです。

●移植医療費:9,000万円
●医療予備費:3,600万円
渡航費:350万円
●現地滞在費:500万円
●事務局費:150万円

 このうち、実際に医療活動に使われる募金は1億2600万円です。
 すんなりと手術が成功した場合は、保証金の8割7200万円と使われなかった予備費3,600万円が帰ってきますので、合計で1億800万円が病院より返還されます。

今回のように海外渡航アメリカなどで手術をする場合、保険が適用されず(国外なので当然)、手術費用や滞在費もとても大金が必要になると聞いていた。今回も1億3600万円と一般家庭では到底捻出できないような大金が必要と言われていたが、ほとんどはデポジット(保証金)なので、約1億円が手術後に返還されるらしい。
普通に考えて、そういう返還されたお金(もちろん募金で集めたお金)がどうなるのか気になるが、そういう余剰金は募金を集めた側の裁量で使い道が決められているらしい。
今回の1億3600万円も自己負担金3000万円を除き、ほとんどを募金で集金したようで、過去の同様の手術のデポジットの返還金はほとんど流用されていないことから、今回もデポジットとして返還されるであろう1億円がどうなるか気になる。
トリオジャパンが支援した移植患者まとめ」によると、資金が不足している基金と余剰金のある基金の差がとても大きいのが分かる。数千万円の余剰金を「不測の事態」に備えて4〜5年保管しているところがあるが、それらは資金が不足している基金に回すべきではないだろうか。(自分が募金して貰ったお金なのだから、自分で使って何が悪いと言うことなのだろうか。)
両親がテレビ業界にコネがある場合などテレビで取り上げて貰える場合と、地道に街頭募金をするしか手段がない場合では集まる募金の総額の桁が違ってくると思う。更にテレビ業界にコネがある家庭の方が裕福だろうし。

Q:さくらちゃんのご両親はドナーカードを持っていますか? ドナー提供してくださるお子さんとそのご遺族の気持ちを想うと。
A:所持していないとのことです。
 募金開始時にご両親はドナーカードを取得しておらず、「ご両親はドナーカードを所持すべきでないでしょうか?」という殺到する要望に対し、
 現在はやっと、「やらなければ、と思っておりますが、まだ、できておりません」「必ず近日中にする」というご両親の回答を、広報の方経由で頂いています。
 しかし、その後、募金活動を始める前に都知事へ提出した要望書を書いたのは、さくらちゃんの父親であったことが判明。
 「本人の臓器提供の意思が書面で確認できない場合でも、遺族の承諾によって臓器提供ができるよう」臓器提供対象者の拡大を要望しておきながら、
 また、わが子に臓器を提供してもらう身でありながら、自らはドナー登録さえしていなかったのです。

人によってはどうでもいいと思うかも知れないが、個人的にはこういうのが一番納得できない。もちろん本当に両親がドナーカードを持っていないのかは分からないが、もしドナーカードを持っていないなら自分勝手すぎると思う。自分の子供は提供して貰った心臓で命が助かるのに、自分たちの臓器は死んでも提供する気はないというのだから。ドナーカード登録といっても自己申請なので、ここからダウンロードして印刷して”○”をいくつか書いて署名すれば終わり。早ければ数分で終わる。人様から臓器を貰ったことはまだ無いが、自分もドナーカードは持っている


移植者を支援するトリオジャパンとは? - アメリカ本部との比較

■運営メンバーの選定
アメリカ本部:選挙
立候補条件はお金払ったトリオメンバーでがんばって活躍している人
メールで立候補を連絡。推薦もあり
http://www.trioweb.org/about/elections.html

トリオジャパン:第十三条(役員の選任)  

1.役員は会員及び役員の推薦により、役員会に於いて選任され、総会の了承を受ける。
2.選任された役員の互選により、会長、副会長、事務局長を選任し、総会の了承を受ける。

http://square.umin.ac.jp/trio/rules.html

トリオとはアメリカでの臓器移植に関係する人々を支援する団体で、トリオ・ジャパンはその日本支部だそうです。問題はトリオという名称を自由に宣言して使ってい良いことになっているらしいこと。上記のようにアメリカは選挙で役員を選出しているが、日本支部は密室で仲良く決めており非常に閉鎖的。総額が数億円と思われる募金を扱っていながらホームページ上に会計情報が無いので、どういうお金の使い方をしているのかが分からない。


以上のことから、このwikiの冒頭のタイトル「募金活動の在り方とその組織化を支援し、余剰金を運用する団体についての意見をまとめたものです。」になったと思われる。


さて、10月の月間市民記者賞を受賞したオーマイニュースの記事はこのwikiについて、以下のように一言で切り捨てている。
「死ぬ死ぬ詐欺・まとめサイト」の卑劣さを考える

匿名の批判者たちは、さくらちゃんの両親がNHK職員で高収入であることなどを理由に、両親たちは自らの資産を使うことなく社会に甘えて募金活動をしているのではないかなどと、糾弾している。

このオーマイニュースの記事が投稿されたのは10/05であり、上記のwikiは随時更新されているので10/05当時のwikiの内容は分からないが、引用している2chのログでは10/01時点でトリオ・ジャパンの余剰金管理の甘さや組織の怪しさを指摘してるものがある。それらを無視して、上記のようにwikiの内容をまとめるのは情報の偏向というものだろう。以降の記事の内容も同じように、2chを批判しやすいように貶めて、批判する内容の繰り返し。現在の募金活動の様々な問題点には一切触れず、2chの批判で終始している。
なぜ、人の批判ばかり書いている記事が賞を受賞したかというと、鳥越編集長曰く、「間違いなく今病気に冒されている患者のことを推測と憶測だけで攻撃する「2ちゃんねらー」と称する連中の弱点をずばっと切っている点」が良かったからとのこと。wikiを読む限り2ちゃんねらーは患者や家族を攻撃しているだけでなく、不透明な募金余剰金の扱いを問題提起しているのだと思うが。そういった物事の背後にあるものから目をそらし、ひたすら命の尊さを訴えるオーマイニュースの記事こそがジャーナリズムと真逆に位置する内容としか思えない。


なお、日本の法律では15才未満の子供は臓器提供できないので心臓移植が必要な子供は海外で手術を受けるしか助かる方法はないが、以下の記事によるとアメリカでは移植する臓器の数は不足しているらしい。つまり、日本から移植患者がアメリカに行くと、誰かが移植を受けられなくなるということになる。だから移植を受けにアメリカに行くなと言うわけではなく、そう言うこともふまえた上で、募金をすべきと書いてある。
こういう記事を読むと、15才以下の臓器移植を禁止している日本の法律が問題だと思うが、オーマイニュース含めて日本のメディアは、あまりそのことを言及しない。2ちゃんねるの批判の前にもっとすることがあるだろうと、思えてならない。

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