任天堂 岩田社長の「ゲーム人口の拡大」の意味

PS3は視野に無し…任天堂社長“脱線”宣言-話題!ニュース:イザ!

任天堂の岩田社長は相変わらず「ゲーム人口の拡大」を主張して続けているが本当にゲーム人口を拡大する気があるのだろうか。ソニーマイクロソフトPS3XBOX360でゲーム人口を拡大すると言うなら(実現できるかどうかはともかく)、ファミコン→PS→PS2の延長線上で考えられるので話は分かりやすい。

そもそも、最近の任天堂のゲーム機は名前からして、ゲームから離れていっている。DS以前の任天堂のゲーム機は、据え置き型ならファミコンスーパーファミコンNINTENDO64ゲームキューブ、携帯型ならゲームボーイ(カラー、アドバンス、ミクロ)とほとんどが"コンピュータ"や"ゲーム"が名称に含まれている。NINTENDO64はCPUのビット数が名称に使われている。つまり、"これはコンピュータですよ"、"ゲーム機ですよ"という主張をその名称からしてしていた。
ところが、DSやWiiは"コンピュータ"の"コ"の字も"ゲーム"の"ゲ"の字も含まれていない。DSはDouble Screenの略だからまだ意味が分かるが、Wiiはその名称の理由すら判然としない。名前だけなら、以前の製品の方がよっぽどゲーム機らしかった。ゲームと思えないような名前を付けることが、ゲーム人口の拡大に繋がるのか。


そして、タッチジェネレーションズと呼ばれるDS用ソフトはどう考えてもゲームとは思えないものが多い。
漢字そのまま DS楽引辞典
これはゲームではなく辞書。(手書き入力が便利そうなので近いうちに買うかも。手書き入力の電子辞書だとPapyrus PW-AT750という製品もあるが2万5千円もする。)

しゃべる!DSお料理ナビ
健康応援レシピ1000 DS献立全集
これもゲームではなく、料理を手助けしてくれるソフト。

他にも以下の自己啓発系ソフトも有名。
東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング 特典 ニンテンドーDSLite専用 保護フィルム(下画面用1枚入)付き
英語が苦手な大人のDSトレーニング えいご漬け 特典 ニンテンドーDSLite専用 保護フィルム(下画面用1枚入)付き

また、こんなのもあった。
DS美文字トレーニング
どこでもラクラク!DS家計簿
てくてくエンジェルPocket with DSてくてく日記ホワイト&アイスブルー (特典なし) (万歩計ソフトらしい)

DS向けのこれらのゲームとは異なるソフト群やDSの持つタッチスクリーンという機能のために、DSを電子手帳にしてしまおうというネタもあったが、子供向けであればすでに電子手帳+ブログツールが製品化されている。たぶん、今のスペックでDSを電子手帳として使うのは無理だろうが、次世代 or 次々世代の製品(スーパーDS?)なら可能になっているかも知れない。

スタイルブック ~ジュニアシティ~

また、Wiiは本体が先月発売されたばかりでソフトの種類も少なくゲームらしいゲームばかりだが、ヘルスパックという体を鍛える製品を開発中とのこと。


以上のことから、任天堂がDSやWiiを使ってやろうとしていることは、ゲームをするひとを増やすことなんかではなく、生活の中へ情報通信機器を浸透させることなのではないかと思う。今ではPCや携帯電話、携帯音楽プレーヤーなど多くの情報通信機器を使うようになったが、たぶん、ぜんぜん使いこなしていないのだと思う。脳トレシリーズや英語漬けがDSのキラーソフトになったということはそれだけのニーズがあったということだし、DSにできることは既存のPDAでもできたと思う。それが、DSが登場するまでそういうニーズがあることにすら気がつかなかった。たぶん、同じ様なことはまだまだたくさんあり、DSやWiiはそれらの見えないニーズを掘り起こしていくのだと思う。
今までの情報通信機器はキーボードでの入力が必要など人に学習を要求していたが、DSやWiiの直感的なインタフェースは人のスタイルに機械の側が近づいたと言える。そういう意味では、より音楽を身近なものにしたソニーウォークマンの発明や、音楽管理の物理的な制約を取り払ったAppleiPodに似ていると思う。いずれも、いずれの製品も最新の技術を使って、従来にないカテゴリーの製品を開発し、社会を、人々の生活を変えることに成功した。ただ、DSやWiiでやっていること、そしてこれからできることを考えると、「生活改善」、「自己啓発」、「コミュニケーション」など桁違いに応用範囲が広い。

今の任天堂は単なる玩具メーカーにすぎず、DSも役に立つソフトもあるゲーム機にすぎない。それが、生活必需品とまではいかなくても、携帯電話並に「無いと困る」製品になるかどうかは、これからだと思う。昔のPCもまた、おもちゃに過ぎなかったが、今はPC向けOSを開発していたマイクロソフトが社会のインフラを少なからず支えている。任天堂も同じ様なことが起きてもおかしくはないと思う。