NHKスペシャルが報道しない老後における格差社会

以前、録画しておいたNHKスペシャルを観た。概要はほぼhttp://kaorim.txt-nifty.com/blog/2007/03/nhk_a405.htmlに書かれている通り。番組の主軸は、老人福祉に情熱を持つ若者が低賃金から抜け出せない状況を悲観し退職するまでを描いている。まさにタイトル通り「介護の人材が逃げていく」という内容。こういうのを観ると番組の作り手の手玉に取られているように感じて、非常に気分が悪くなる。
ブログを検索してみると、他にも同じように感じた人がいるようだ。(Nスペ 介護の人材が逃げていく@3/11 21:00-21:50 NHK総合: 天漢日乗)ただ、「さすがNHK」と賞賛している人も結構いる。
余りに釈然としないので少し調べてみると、http://www.kantou-home.com/contents/knowledge_01.htmlが見つかる。老人ホームは有料老人ホームと特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)を含むその他の2つに大きく分かれているようだ。運営が「民間」とか「公」とか違いなんかより分かりやすい違いは、入居費用。有料老人ホームは「100万〜1億まで」で、特別養護老人ホームは「なし」。しかし、1憶ってすごい。まあ、お金があって年を取ったら、こういうところにお金を使うのが有意義なのかも知れない。また、医療・介護施設|法人のお客さま|大和ハウス工業というサイトまであった。タイトルが研究所となっているが、土地に有料老人ホームを建てるコーディネートをするところらしい。「医療・介護事業への土地活用は、高齢社会への貢献性はもとより、将来的にも有望な市場を期待され資産運用面でも高い収益性を備え、新なた安定収入への手段にもな」るらしい。土地オーナーも建設会社も運営会社もみんな儲かるし老人にも喜ばれるのだから、良いことずくめのようにも思えるが、こんなのは世の中大多数の一般サラリーマンには無縁の世界だろう。一般人は安月給、人手不足が常態化している特別養護老人ホームを順番待ちするしかない。

NHKスペシャルではせっかく資格を取っても給料に反映されない言っていた。いまいち信じられなかったので、有料老人ホームの採用情報を調べてみた。ライフコミューンという会社の新卒採用条件介護福祉士もしくはホームヘルパー1級となっている。介護福祉士 - Wikipediaによると介護福祉士というのは専門学校を卒業するか試験を受けるかの2パターンがあるらしい。こういう試験を受けなくても貰える資格とは何を現しているのだろうかと考えてしまう。中途採用項目を見ると採用者側のこの資格に対する認識が分かる。ホームヘルパー2級(130時間の研修、試験無しの資格)と同程度の扱いになっている。月給も20万円以下の約19万円。資格試験が伴うケアマネージャ(介護支援専門員)になると基本給は月額 284,500円以上と、全く給料が変わってくる。因みに看護師は基本給〔正看〕月額 327,000円、〔准看〕月額 322,000円だそうで、やはり専門職は強い。さらに「あん摩マッサージ指圧師国家試験」という国家資格もあるそうで、こちらは基本給 月額262,000円だそうだ。こうやって比べてみると、介護福祉士という資格の扱われ方が見えてくる。例えるなら、SEでの基本情報技術者(旧第二種情報処理技術者)試験みたいなものだろうか。

NHKスペシャルでは人材不足と言っていたが、有料老人ホームに限れば人材が不足していない気もする。(こういうところを是非取材して欲しい。)老人介護を取り巻く状況の一部だけを取材して、日本の介護全体を表しているかのような「介護の人材が逃げていく」というストーリーを作り上げるNHKのやり方は非常に気に入らない。介護の人材が特別養護老人ホームから有料老人ホームへ移っているということはないのか、検証して欲しいと思う。