ビックリマンチョコで読み解く著作権問題

ビックリマンチョコは、1980年代にヒットし社会問題にまでなったお菓子である。1個30円のウェハースチョコなのだがオマケとしてシールが同封されていた。そのシールのストーリー性とゲーム性、そして数種類のレアシールの存在が人気となり、シールだけ抜き取りチョコが捨てられる結果となりニュースにもなった。
その後、公正取引委員会による勧告によりシールの同梱頻度が同じにされたため、レアシールの価値が暴落しブームは終焉となった。
ここで、シールの同梱頻度を同じにせずに、逆にお菓子なしのシールだけを個別販売したらどうなるかを考えてみたい。

もしもビックリマンシールが単体で販売されたら

当時、レアシールは1,000円〜2,000円で取引されたり、40個入りの1箱を大人買いする人、盗難などがあったそうなので、1,000円、2,000円でも十分売れるだろう。”お菓子が捨てられることが無くなった”と歓迎されたかもしれない。ただ、ユーザーはお菓子を買わずに直接シールを買えるようになったため、飽きも早まるだろう。だから、お菓子メーカー(仮にビックリマンチョコ株式会社(KK)とする。)はシールの単体販売で増えた売上を使って新しいシールデザインを考案、新シリーズのビックリマンチョコとして販売し、レアシールの価値が十分高まった頃を見計らいレアシールの単体販売を開始するだろう。これを繰り返すことでビックリマンチョコKKは大きな利益を上げ続けることができる。
しかし、ここで安価なシールコピー機(仮に”シールごっこ”とする。)が販売されたらどうなるだろう。シールごっことレアシールがあれば、シール1枚あたり30円程度のコストでレアシールが大量生産できることとする。ビックリマンチョコKKは、ビックリマンシール著作権の保護対象でありそれをコピーすることは著作権侵害になるとしてシールごっこ販売会社を訴えるだろうが、ビックリマンシールを含むシール類をコピーするだけの機械であるシールごっこの販売を止めることはできないだろう。しかし、販売機会の損失になるとしてまだコピーしていないシール媒体に対して補償金を取ることや、不正コピーしたレアシールを販売する店舗を違法店舗として取り締まることは可能だろう。また、コピーガード機能付きビックリマンチョコの開発やそれによって販売不振が起こったりするかも知れない。
たぶん、ビックリマンチョコKKとユーザーのいたちごっこは、ビックリマンチョコの人気がなくなるまで続くだろう。(ビックリマンチョコKKはあらゆる手段を使って人気を維持させようとするだろうが。)

問題は、CMのオマケである番組の単体販売

NHKを除く民放はCMにより運営されている。というかCMを放映するために民放がある。CMだけだと視聴者がCMを観てくれないのでCMのオマケとして各種番組も放映している。また、ドラマの主題歌はCMのオマケである番組のオマケと言えると思う。これらのオマケはCMを観て貰うためにあるのだから一度放映してしまえば後は必要ないはずだが、後からコンテンツだけを販売することが決まっているために視聴者の手元にコンテンツが保存されたり他のユーザーにコンテンツがコピーされるのは機会損失に繋がってしまう。後からコンテンツを販売しないのであれば、コンテンツがコピーされたとしてもこんなに問題になることはないだろう。
現在、様々なコンテンツがテレビを通じて無料で各家庭に配布されているが、その使用方法は厳しく制限されている。しかし、無料で配布されているもので他にこんなにも厳しく制限されているものがあるだろうか。街中でポケットティッシュや試供品などを受け取ることがあるが、それをどう使おうと使う側の勝手である。テレビ番組のように、自分たちの販売機会が減るからという理由で、様々な制限をかけるようなものは、思いつかない。

共有知を独占し販売するビジネス

あるコンテンツを大量に販売する方法は、冒頭のビックリマンシールの例のように予めコンテンツに対するブームを起こしておく必要がある。全国に同じコンテンツを一斉放送可能なテレビは、そのための格好の道具だった。人気ドラマはもちろん、その主題歌も全国で知らない人はいなくなる。後はそのコンテンツを独占販売すればよい。テレビを使えば、みんなが知っているものを独占的に販売することが可能になる。
たとえて言えば、日本中で毎日、無料でビールの試供品を提供してアル中になったら有料でビールを買って貰うというのと似ていると思う。ビールを飲まない人や買ってまで飲まない人もいるが、何割かがアル中になって大量に買ってくれれば儲かる仕組みにすれば良い。そして、ユーザー間でビールをやり取りされると儲からないので、それは法律違反になるように予め決めておく。
こう考えると、テレビは洗脳機械のようにも思えてくる。

提案

実現されることはないだろうが、これらの問題を解決する方法を提案する。

テレビを使って全国にばらまいたコンテンツを後から有料で販売することが著作権問題の原因なので、テレビ放送をやめるか、コンテンツの有料販売をやめるかすれば著作権問題は起こらなくなる。ただ、どちらも制限する根拠がない。そこで上記の提案となる。
放送法には以下の条文がある。

公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信(放送法第二条第一号)

放送 - Wikipedia

公衆に受信されることを目的に公共のリソースである電波を半独占的に使用してコンテンツを配信しているのだから、配信したコンテンツをパブリックドメインにする理由としては十分だと思う。また、ニュース報道などはまさに公共の福祉に属するものだし、後から参照・検証するニーズも高いと考えられる。本来、テレビ放送とはそういうものではないのだろうか。