文化の発展を目指す団体がチベット文化弾圧の手先になっている皮肉

中国の武力行動によってチベット仏教文化が失われようとしている現状に対して、日本の仏教者として初めて(?)「私たちは宗教者、仏教者として草の根から声を挙げていかなければなりません。」と自ら声を上げた大樹玄承氏のメッセージがYouTubeから削除された。YouTube上では削除依頼者はACCSとなっている。ACCSは自分たちが何をしたか分かっているのだろうか。
このACCSのウェブサイトのトップページには次のように書かれている。

社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会ACCS)は、デジタル著作物の権利保護や著作権に関する啓発・普及活動を通じて、コンピュータ社会における文化の発展に寄与しています。

ACCS - 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会

最も基本的な権利である人権がまさに脅かされ、1000年以上続く貴重な文化が危機に瀕しているのに、それを守るどころか弾圧する側に手を貸すようなことがなぜできるのだろうか。それも「権利保護」や「文化の発展」という看板をかかげながら。

「外形的に著作権侵害と判断できるものを対象に削除している。番組の内容までは精査していない」(ACCS広報部)

ACCSがYouTubeからテレビ番組削除 天台宗僧侶がチベット問題を語ったシーン - ITmedia NEWS

おもしろいことを言う。「囚われのチベットの少女」という本で有名なガワン・サンドルという女性は、11才の時に「自由チベット万歳」と叫んだ罪で投獄されたそうだ。日本では考えられないようなことだが、逮捕した人にその理由を聞けば「法に従っただけ」という答えが返ってくるだろう。法に従えば何をしても良いと考えている点で、ACCSと中国は共通している。その結果が、世界中を敵に回すことになると分かっているのだろうか。
盲目的に法に従うという行動がこれまでにどれほどの悲劇を生んできたのか「文化の発展」を目指すACCSは知らないのだろうか。ホロコーストは命令に従った兵士によって実行されたし、広島/長崎への原爆投下も兵士が命令通りに実行したにすぎない。一方、外務省の命令に反して多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝氏は、日本帰国後に外務省をリストラされる。おそらく、行為の「内容までは精査」せず、法の遵守を優先するACCSならば、前者の命令に従った兵士達の行動を支持するに違いない。