高価な媒体に愚痴を書くだけなのはもったいない。

マスコミによる理不尽な取材を受けた際のいきさつを述べ、日頃溜まったマスコミへの鬱憤を晴らすかのように正論でメッタ切りにしていく。はてブでも多くの称賛コメントがあつまっている。

okataco なんと心地よい正論。

はてなブックマーク - 【正論】慶応大学教授・阿川尚之 「マスコミの常識」は非常識 - MSN産経ニュース

このコメントはその心情をよく表しているように思う。
だが、よく考えてみて欲しい。ある対象を悪者にして、それを正論で批判するのはマスコミの常套手段ではないだろうか。もちろん「悪者」には非があり、正論は文字通り正しいのだから、決して間違ってはいない。しかし、少しでも状況が良くなるかと言えばまったく変わらないように思う。うっぷんが晴れて、気が晴れるぐらいだろう。こういうのをガス抜きという。

深夜に電話で取材してくる記者や、陳腐な言葉を並び立てるテレビキャスターを批判しているが、なぜ彼らがそういうことをしているか、せざるを得ないのかを考えないのだろうか。

本来マスコミの役割は、世の中の常識に照らして疑問を覚えるような事象につき、正確な情報を伝え読者や視聴者の判断に資することにある。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080508/trd0805080326000-n1.htm

このことはマスコミ自身が一番よく知っているだろうし、一般家庭に深夜に電話をかけることの非常識さも分かっていないはずがない。だったら、それでもそうしなければならない理由があると考えるのが普通だろう。そういうシステムだとしたら、個人の非常識さをいくら批判しても意味はない。

問題は、何をしても退場させられないシステムなんだと思う。テレビ取材や新聞の取材に関する不満は後を絶たず、なくなったり改善される気配は感じない。それは当事者にまったく危機意識がないためだろう。それも当然で、日本にはマスコミにとっての多くの安全装置があるのだから。

クロスオーナーシップ記者クラブ、それから再販が、強烈な保護策となっていて、メディアが単に空前の独占的な繁栄を享受できるばかりでなく、競争原理がまったく働かない。おまけに、クラブ等で癒着をしていますから、当然出てくる情報はバイアスがかかる。

http://www.systemken.org/geturei/32.html

これらの安全装置がある限りマスコミは安泰で、たまに冒頭のような記事を掲載してガス抜きをすれば、評価が上がることはあってもそれによって、経営が脅かされることはない。逆に、これらのタブーに触れた人は一斉にマスコミから批判を受ける。(例えば、長野県の田中知事とか宮崎県の東国原知事とか)
さらに、安全装置があることで、いろいろとマスコミにとって都合いい仕組みも作ることができる。

2006-02-08

  • ヤマ場CM

http://blog.a-utada.com/chikyu/2007/09/post_8129.html

私は、阿川氏がさんざんマスコミを批判しながらその改善に結びつくであろうこれらの問題点にひとつとして言及しないことに不思議に思う。クロスオーナーシップ記者クラブ再販制度のどれか一つでも取り上げてくれれば、それは凄いことだと思うのだが。ただ同時に、新聞社がそんなのを黙って見過ごす訳がないので、やはりそれはあり得ないとも思う。