iPhone 3G関連の議論について
知り合いから「あんなに毎月の料金が高いのにApple製品だからiPhoneを買うんでしょ。」のようなことを言われた。何か大きな勘違いをしているようなので訂正しようと思ったが、昔、それもかなり前にも同じ様なことがあった気がして考え込んでしまった。
確かにiPhoneにはケータイにはあるいろいろな機能がない。
だからと言って、宗教のような強いブランド志向で買うわけでもない。
そういう意味で上記のような誤解を招くエントリにはうんざりする。
昔の何を思い出したかというと、10年以上前のワープロ全盛の時代のこと。家族会議で新しいワープロを買うことが議題になっていた。私は、ワープロではなくパソコンを買うべきであることを己の乏しい知識を総動員して主張したが、
- パソコンは高い
- パソコンは難しい
などを理由に早々に却下されてしまった。
パソコンはワープロには無いいろいろな機能があるのに、それがまったく伝わらず、逆に「必要のない余計な機能」と思われてしまっていた。
今のケータイとiPhoneの比較をめぐる議論は、ワープロとパソコンの比較とよく似ていると思う。前者は携帯電話、後者はワードプロセッサというカテゴリにそれぞれ含まれる製品だが、実態は違う。ケータイユーザからすればiPhoneは当たり前の機能が無いのに料金の高い端末に見えるし、ワープロユーザからすればパソコンは余計なものがたくさん付いているのにワープロソフトは使いづらいという製品に見えるだろう。
別に私はワープロを否定しているわけではない。実際にはその逆である。
次々と新しい機能を付け加えていったワープロは、インターネット、電子メール、タッチペン、FAX、スキャナーと今のパソコンを上回る豊富な機能を持っていたようだ。たぶん、ワープロ本来の使い勝手もパソコンよりも良いに違いない。少なくともプリンタを内蔵しているので、プリンタの電源を入れる手間はかからないだろう。
そんな優れた製品であるワープロもパソコンとの競争に敗れて、市場から消えていった訳だが、パソコンが入ってこなければ、さらに機能を詰め込み続けて想像もできないようなワープロが誕生していたかも知れない。(何となく、今のケータイと進化したワープロのイメージがダブる。)
結局何を言いたいかというと、ケータイに満足している人にiPhoneの良さを伝えるのは至難の業だし、そもそも伝える必要はないのではないかということ。自分は自宅のネット環境を外に持ち出せるようなモバイル情報端末が欲しいと思っていて、該当するのはiPhoneしかないのでiPhoneを買うだけ。WILLCOM W-ZERO3[es]が使えそうな気もしたが、実機を触って違うことを実感。Appleだから買うわけではなく、iPhoneぐらいしか選択肢がない。iPod touchのWEBブラウザはちょっと重いサイトを開くとよく落ちるのが不満だが、iPhone 3Gで改善されていることを願う。
追記(2008/06/26)
はてブのコメントで以下の記事を教えて貰った。
2008年06月26日 kanose 携帯電話はワープロでスマートフォンはパソコンってのはウィルコムファンでも言われていた http://www.willcom-fan.com/wzero3/entries/staff/000435
はてなブックマーク - kanoseのブックマーク / 2008年6月26日
確かにW-ZERO3の様なスマートフォンを閉鎖的なケータイと比べてオープンなパソコンと言う気持ちは分かるのだが、スマートフォンは欲しいと思っていた「ネット環境を外に持ち出せるようなモバイル情報端末」ではなかった。それは多少動作がモッサリしているとかデザインが気に入らないとかという小さな話ではなく、もっと本質的な違いのような気がする。
デバイスの小型化によって、入出力のレンジが細くなることは、昔からの永遠の課題である。iPhoneが Mac OS X を搭載することは、その問題が先鋭化してくることの象徴だ。
メモリもCPUも、フル機能のUNIXに先進的なグラフィックをサポートするのに充分なレベルになっている。しかし物理的な形状に縛られるユーザーインターフェースは、そのような富豪的進化は望めない。
iPhone×Wiiリモコン=ユーザインターフェースとしてのセンサー - アンカテ
スマートフォンが、パソコンになるためには大多数の支持を得ること、つまりWindows95のように多くの人に受け入れられ、プラットフォームがデファクトスタンダードになる必要があるが、あの小さな画面とタッチペンで、それを実現するのは無理のように思える。
Windowsが多くの指示を集めたのは、表示は「窓(ウィンドウ)」、入力は「キーボード」と「マウス」という使いやすい共通プラットフォームを確立したからこそだと思うが、スマートフォンではそれができていない。
今、モバイル情報端末で使いやすい共通プラットフォームを実現しているのは、iPhoneだけのように見える。だからこそ、発売前の日本でこんなにも話題を集めているのだと思う。今後、メモリやCPUが強化されればiPhoneはより使いやすい端末になるだろう。まるで、過去にパソコンがそうであったように。
モバイル機器のほぼ全面をスクリーンにし指で操作するという発想は、単純だからこそ画期的な発明なんだと思う。物理的な形状に制約のあるモバイル機器である限り、このインタフェースは有効であり続ける。それこそ、ゲームコントローラの十時キーやマウスと同じくらい常識になるような気がする。
本当はスマートフォンにはiPhoneの良いライバルになって欲しいのだが、ワープロ呼ばわりしているケータイにすら太刀打ちできていない様に見え、その先行きに不安を感じる。