「偉い」の意味って何だろう?

この意味で、詐欺、ぼったくり、談合、独占でなく、
ちゃんとお客を満足させてお金を稼ぐのであれば、
時給10万円稼ぐマッキンゼーのコンサル*3だろうと、
日給4万円稼ぐ風俗嬢だろうと、
政治運動して中央から引っ張ってきた金で無駄な道路を作って
金を稼ぐ土建屋や、ろくに仕事をせずに何千万円もの年収を受け取る利権オヤジや天下り役人
などよりも、はるかに「偉い」んじゃないか、
という理屈も、一理ぐらいはあるようにも思える。

「風俗嬢に説教たれる人々が痛い理由」と「売春を合法化し、厚生労働省売春管理局を作る案」 - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだ

上記で風俗嬢の「偉さ」について説明をしているが、どこか違う気がする。今読んでいる本の中に今回の場合の意味に合いそうな説明があったので紹介してみたい。

読んでいる本というのはマーク・ピーターセンという外国人の書いた続・日本人の英語 (岩波新書)という日本人が間違いやすい英語について説明した本。この本によると日本語の「偉い」に相当する英語の単語は無いそうである。その不便さやコミュニケーションギャップを、ある映画のワンシーンを使って説明している。以下、その本の中から引用する。

たんぽぽ:「ねえ、あたしよくやってる?」
ゴロー:「よくやってるよ」
たんぽぽ:「えらい?」
ゴロー:「えらい、えらい」
P.2

これは伊丹十三監督の『たんぽぽ』のワンシーンで、さびれたラーメン屋と立て直そうとがんばっているたんぽぽと彼女に惚れてラーメン屋の先生をしているゴローとの会話。
著者はこの「えらい」を訳せないと言う。長文で説明はできるが、一つのセリフでは無理だという。
英語字幕では次のように訳されている。

Tampopo : Am I trying hard enough?
Goro : Sure you are.
Tampopo : Am I good?
Goro : Sure.
P.3

私には上記でちゃんと訳せているように見えるが、著者は「ドライで、機械的な会話」「情けない英語」と言う。この英語を日本語にすると次のようになるらしい。

たんぽぽ:「私は十分に頑張っている?」
ゴロー:「それはそうだよ」
たんぽぽ:「私には才能があると思う?」
ゴロー:「思う」
P.4

確かにこれでは正しい意味は通じない。元の日本語にあった、たんぽぽの「褒めて欲しい」という感情がそぎ落とされてしまっている。
著者は『広辞苑』から「えらい」の意味として「すぐれている。人に尊敬されるべき立場にある。(えらい人)」を引用するが、これも映画のシーンで使われている意味とは違うという。そして、外国人が和英辞典で「えらい(great, grand, famous, illustrious, wonderful, extraordinary, phenomenal, etc)」を調べても、映画のシーンで使われている意味は分からないという。

日本人なら、一応そういうえらい「頑張りぶり」の前提があるのであろう。転んでも泣かなければ、親に「えらい、えらい」と誉めてもらえることは、日本では小さい子供にでもすぐに分かる。
P.6

元のエントリの「偉い」の本当の意味は、職業の貴賎とか収入の多寡といったこではなくて、上記の「たんんぽぽ」が使っていたような意味に近いように思うんだが、違うだろうか。