みんなのシアターと米国iTunesStoreを比較してみて思ったこと

1月27日からMii向けの有料動画配信サービスである「みんなのシアター」が始まった。テレビを含め今は動画配信サービスの転換期にあるので新しく始まるサービスがどういうものか体験してみたかったことと、単純に好きな時に好きな動画を観ることができるという点に興味があったのだが、結局、500Wiiポイント(500円相当)を支払わないと試聴すらできないことが納得できず、実際のサービスは利用していない。絶対に観たいコンテンツがあるならば、話は別だが、興味本位で観るのにお金を払うのはやはり気が引ける。
ただ、やっぱり興味はあるので、このサービスを利用した感想が書いてあるブログをいくつか読んでみた。

これらを読んだ限りでは次のような感じらしい

  • 画質は綺麗(本当にDVD並みらしい)
  • 料金はそれなり(アニメ30分1話あたり100円相当)
  • コンテンツはこれから(今は昔のアニメがほとんど)
  • 「チケット」の仕組みが変(5日間で最大3話しか観られない。子供の無駄遣い対策?)

日本のiTunesStoreではミュージックビデオぐらいしか配信していないが、米国では有料で動画を配信している。これとみんなのシアター(以下、みんシア)を比較してみた。
米iTSには1980年にテレビ放送された鉄腕アトム(Astro Boy)があり、これはみんなのシアターの「鉄腕アトム(新)」と同じものの様だ。
一話ごとの単価で比べると米iTSは$1.99、みんシアは100円相当とみんシアの方が半額程度になっている。ただし、米iTMでは全51話をSEASONとして$29.99として販売しているため、みんシアで全52話を観た場合の5200円と比べると、みんシアの方が逆に1.5倍程度の割高になる。通常、こういうシリーズもののアニメを観る場合、2種類のパターンが考えられる。一つは見逃したエピソードを観たいという場合。もう一つはまとめて全部を観る場合。10話だけとか、40話だけというのは考えにくい。米iTSの価格設定を見ると、見逃した番組を観る場合は割高な料金を、全部観る場合はお得になるように価格や仕組みを設定しているように見える。逆にみんシアは300円チケットが3話分と、利用者の利便性よりもサービス提供者側の論理で仕組みを作っているように見える。また、みんシアと違って、米iTSは作品を購入するという扱いなので、一度購入すれば、それこそ何度でも繰り返し観られるし、iPodに転送して外へ持ち出すこともできる。
また、サービスが始まったばかりのみんシアと比べるのは酷な気もするが、米iTSはかなりバラエティ豊かなコンテンツが揃っている。日本のアニメも新しいものから手塚治虫の古いものまであるし、映画も放映したばかりのテレビドラマもある。映画は$9.99で販売しているが、一部は$2.99でレンタルもしている。

オンラインの動画配信に限らず、

DVDの価格も日本は海外全般と比べると割高なことから、日本の消費者は販売者側に足元を見られているように思えてならない。


有料の動画配信がうまくいっていない理由について、

基本的に「見るだけならタダ」という習慣が染み付いてしまっていること。

ある権利者側の人間の呟き2 結局コンテンツに金払うっていうのが定着しない。。。 - Life in Prison/生きるしかすることがない

広告モデルによる無料動画に慣れているので動画にお金を払うという習慣がないというのは、一理あるとは思う。しかし、

たとえば音楽配信iTunesとか、着うたフルとか)はわりとマーケットとして成立している。

ある権利者側の人間の呟き2 結局コンテンツに金払うっていうのが定着しない。。。 - Life in Prison/生きるしかすることがない

マーケットが成立しているという音楽配信も、iTunesMusicStoreの成功までは音楽配信鳴かず飛ばずの状況だった。音楽業界はCDが売れない、音楽配信がうまくいかない理由を違法ダウンロードがあるからと考え、多くのユーザーを訴えたり、CCCDというCDもどきのCDを販売したりした。しかし、いずれもたいした成果を得られなかった。
対して、iTunesMusicStoreを始めたとき、AppleジョブズCEOは、

「われわれは違法ダウンロードと戦う。訴えるつもりも、無視するつもりもない。競争するつもりだ」とジョブズCEOは述べた。

http://wiredvision.jp/archives/200310/2003101701.html

とのこと。
そう言えば、日本でiTunesMusicStoreが始まったとき、1曲あたり300円近くしていた国内にある複数の音楽配信サイトの料金が一斉にiTMSの料金に合わせて値下げしたときは、「なんだかなー」と思った。これって、自分たちでは自分たちが販売している商品の料金を決められないと言っていると同じじゃないだろうか。

音楽業界は音楽ビジネスが伸び悩んだ理由を自分たちのサービス内容ではなく、外部環境に求めて対応を誤ったように見える。同じように今、有料動画配信がうまくいっていないのも、単純にサービス内容に問題があるように思う。特に、みんシアみたいなサービスを見ると特にそう思う。