任天堂のマンネリズム

6月25日に発売されたWiiSports2ことWiiSportsResortを購入、一通り遊んでみました。期待以上のできと予想を超えるボリュームにちょっと驚きました。まだ一人用しか遊んでませんが、みんなで遊ぶ機会があればさらに何倍も楽しめそうです。

Wiiスポーツ リゾート (「Wiiモーションプラス (シロ) 」1個同梱)

Wiiスポーツ リゾート (「Wiiモーションプラス (シロ) 」1個同梱)

個人的にお気に入りのゲームは、スカイレジャーの遊覧飛行。基本的にはWiiリモコンを飛行機に見立ててプロペラ機を飛ばすだけ、ぶっちゃけ子供の飛行機遊びと同じ様なことなのですが、これが理屈抜きに楽しい。一応、80個のチェックポイントを集めるという目的が用意されていますが、ただ、飛行機を飛ばしているだけでも十分楽しめます。フライトシミュレーターなんかではふざけて橋の下をくぐったりもしますが、このゲームの場合、橋の下どころか車用のトンネルの中にまでチェックポイントがあり、よく分かっているなぁという感じです。

ここ一番ではスポーツゲーム

任天堂は、1968年にウルトラマシンという子供向けのピッチングマシンを発売し、1970年〜1973年には「光線銃」「光線銃SP」「レーザークレー射撃システム」を発売、またファミコン本体の発売年と翌年には「ベースボール」「テニス」「ダックハント」「ゴルフ」「F1レース」「エキサイトバイク」、そして今の据置ゲーム市場をひっくり返す原動力となったWii発売時にはWiiSportsを同時発売(海外では同梱)し、今回のWiiSportsResortへと続いています。ファミコン以前の任天堂は経営状態は安定していませんでしたし、ファミコンは社運がかかった大きな賭けでした。WiiWiiモーションプラスも据置市場戦略において極めて重要な製品でした。そういった重要な局面で任天堂は常にスポーツゲームを出してきているように見えます。WiiのローンチタイトルにWiiSportsやゼルダはありましたが、マリオやドンキーコングはありませんでした。長い目で見た場合、任天堂にとってスポーツゲームは定番、悪く言えばマンネリにも見えます。

ゲームとスポーツ

Wiiのダウンロードゲーム(Wiiウェア)に「マッスル行進曲」(YouTube)というのがあって、一発芸的なゲームで最初は面白かったのですが、やることが単純なのですぐに飽きてしまいました。一般的にゲームはルールが単純な方が受け入れやすいですが、単純すぎると単調になり飽きやすくもなります。しかし、だからといってルールが複雑になるとそのゲームの理解するのが難しくなり、飽きる以前に買ってくれなくなります。ルールが単純でありながら、面白く、かつ奥深いゲーム。例えばスーパーマリオブラザーズのようなゲームは極々稀にしか生まれません。
ゲーム業界に対する批判の中に「シリーズものばかり」というのがあります。しかし、それは続編が作られるほど売れるゲームを新たに作ることの難しさを表していると思います。だからこそ、対戦格闘ゲームブームの時のようにあるジャンルのゲームが売れると分かった時には、いろいろなメーカーから似たようなゲームが雨後の竹の子のように発売されます。しかし、やがて、人々に飽きられてブームが去り、売れなくなってしまいます。
ある程度の複雑さを持ったゲームを、人々に受け入れて貰う手段としてスポーツは格好の材料になります。スポーツと呼ばれているものの起源をたどると占いだったり儀式だったりすることが多いようですが、今は娯楽として多くの人に支持されています。
スポーツはブームと飽きの繰り返しの中で洗練、改良されて今まで生き残ってきた競技です。多くの人に知られていて、かつ面白く、奥深くて飽きない。例えるなら日本人にとってのラーメンやカレーライスのような存在がテレビゲームにとってのスポーツなのだと思います。

任天堂にとってのスポーツゲーム

私が知る限り、任天堂が余り自慢しているのを聞いたことがありません。Wiiの大ヒットについても偶然薄型大画面テレビの普及と重なったのが良かったという話をしていたと思います。しかし、以下の記事では明確に任天堂の強みについて主張していました。

岩田 飛行機の時間が迫っているのですが、どうしても言いたくなったので言わせてください。ビデオゲームは「つまらないことを楽しく人に続けてもらう」ということについて、ものすごくノウハウがあるものだと思うのです。僕らはビデオゲームを触ってもらって、すぐに「つまんない」「飽きた」と言われてもらうと困るので、お客さんにとってのご褒美を途中にいっぱい散りばめながら続けてもらうということについて、ものすごく鍛えられているのです。

DSで生活が便利になる――任天堂・岩田聡社長と宮本茂専務、ゲーム機の現在と未来を語る (6/6) - ITmedia ビジネスオンライン

ビデオゲームの会社、つまり任天堂は、つまらないことを楽しくすることについて「ものすごくノウハウがある」と言っています。つまらないことを楽しくできるのであれば、当然、元々面白い素材があればとても面白くすることができるでしょう。その面白い素材が任天堂にとってのスポーツであり、ものすごいノウハウによってできあがったゲームがWiiSportsResortなのだと思います。重要な局面であればあるほど、確実なヒットが見込めるスポーツを素材として持ってきます。今でも世界中で売れ続けているWiiFitも多くの人に知られている「ヨガ」「フィットネス」を中心に据えてきました。もしWiiFitミニゲームや体重測定だけで販売していたら今の1/10も売れなかったのではないかと思います。

マンネリについて

任天堂以外の会社からも野球やサッカー、テニスなどのゲームが定期的に発売されていますが、ゲームの内容そのものよりもプロリーグの情報をいかに取り込んでいるかに焦点が当たっているように見えます(ほとんどやったことがないので推測ですが)。少なくともPVではそれらをアピールしていますし、ゲームタイトルに著名選手の名前を使ったりもしています。もちろんゲームの中で有名選手を操作できることは、それはそれで面白いとは思いますが、ゲームの本質からずれているような気がしますし、毎年選手の情報が更新されるだけであれば、それこそ飽きられてしまうでしょう。

FFのマンネリについての記事です。個人的にはFFはムービーゲーム化してから興味が無くなりました。ゲームの面白さが失われ、複雑怪奇なシナリオについていけなくなり、映像だけは綺麗になっているように見えます。FFはマンネリと言うよりアイデアが尽きたので、設定と映像だけで新鮮味を出そうとして別のゲームに変わってしまったような気がします。


ゲームではありませんが、良いマンネリのあり方について書かれていたので引用してみます。

長い。いったいどこまで続くんだ、人気が続くまで無限にさ、という魔法学園ラブコメ。数えてみたら20冊目ですよ。始まってから7年目。ここまで続くとは……。まあラブコメというヤツは一度キャラクターが回り出せば、割と延々と続けられる性質の物語ではあります。マンネリズム万歳。それがラブコメだ!

さあ? マンネリズムの美学! それがラブコメだ!『まぶらほ』

この小説は読んだことがないのですが、この主張には共感できます。「魔法学園ラブコメ」という読者ニーズに応えるために手を変え品を変えて同じ事を延々と繰り返す。長寿番組である水戸黄門サザエさんドラえもんなんかと同じ構造かと思います。