携帯音楽プレーヤー戦争とゲーム機戦争

少し前の話ですが、1月29日の任天堂 第3四半期決算説明会で本格RPGソフト「ラストストーリー」と「ゼノブレイド」が発表されました。

また、先週発売された「斬撃のレギンレイヴ」は従来の任天堂タイトルとはまったく違った内容でした。


ジャンルはまったく違いますが、過去に携帯音楽業界でも似たようなことがあったのを思い出しました。現在、BCNによる携帯音楽プレーヤーランキングを見るとトップ10はiPodに独占されています。しかし、iPodが携帯音楽プレーヤー市場に参入した2001年11月以前は音楽プレーヤーと言えばウォークマンが代名詞でした。そして、現在の主流はメモリタイプですが、ソニーがメモリタイプの製品を発売したのは1999年12月21日(NW-MS7)で、対するAppleは2005年1月11日(iPod shuffle)と約5年も後のことでした。たったの数年で携帯音楽プレーヤーという決して小さくない市場がガラリと変わってしまった理由は、明確には分かりません。しかし、大きな理由は、丁度、記録媒体がCDやMDのような固定媒体から本来の意味でのデータに切り替わる時期だったこと、そしてAppleはそのチャンスを逃さず新しい使い方に適した製品「iPod」を投入できたからだと思います。市場がAppleに席巻されていく間、ソニーが何もしなかったわけではありません。ネットワークウォークマンという名称をウォークマンに統一したり、音楽管理ソフトを新しくしたり元に戻したり、mp3に対応したり。たぶん、AppleiPodを発売した2001年時点でこうなることを知っていたら、まったく違った対応をしていたのではないでしょうか。少なくとも独自フォーマットに固執してmp3をかたくなに拒絶するようなことはしなかったと思います。たぶんiPodのことをもパソコンの周辺機器の一つ程度の認識しかなかったのではないでしょうか。そして、危機感を覚えた時には手遅れになっていたという状況ではないかと勝手ながら想像してしまいます。


話をゲーム業界に戻します。SCEの人が任天堂の製品を子供向けと発言したと言う記事がありました。

実は自分も子供向けとは言わないまでも「ニューマリWii」のようなファミリー向け、万人向けのタイトルしか発売しないと思っていたので、「斬撃のレギンレイヴ」「ゼノブレイド」「ラストストーリー」という任天堂らしからぬタイトルは意外に感じました。以前に任天堂らしくないと思ったタイトルとして「ガールズモード」がありましたが、今回のタイトルは明らかにゲーマー向けタイトルに見えます。
Wiiへの批判として「ゲームらしいゲームが売れない」「サードパーティのゲームが売れない」というのがあります。しかし、それは任天堂の弱点と捉えて、任天堂には作れないタイトルとして発売すれば良いだけだと考えていました。それが市場の棲み分けにつながると考えていました。しかし、任天堂は開発を社外にまかせることで、任天堂らしくない、そして日本では根強い人気のある大作RPGを発売すると言っています。人であれ企業であれ、過去にやったことのないことをするのは時間がかかります。斬撃のレギンレイヴの開発は3年以上かけたそうですし、他のタイトルも同じくらいの開発期間が掛かっているかも知れません。Appleがメモリタイプの携帯音楽プレーヤーを出したのもHDDタイプの発売から数年後のことでした。しかし、その新しい試みが成功した場合、他の企業は追いつこうとしても追いつけないほどの差ができてしまうのだと思います。任天堂が大作RPGのジャンルでもヒットタイトルを作れるとなると、弱点がなくなってしまい、最悪の場合、今の携帯音楽プレーヤー市場のAppleのようにヒットするゲームが任天堂ばかりになってしまうかも知れません。


こういう懸念が杞憂に終われば良いのですが、多くの新作がヒットしている任天堂と大作の続編やリメイクばかりの他のゲーム会社を見ると心配になってきます。