ゲームレビューの点数とは何なのか

その理由には、採点方式がある。現行の採点では、難度の高いジャンプに挑戦して失敗するよりも、難度の低いジャンプを成功させるほうが大幅に良い点がつく。そこで、無理をしてまで4回転ジャンプに挑むよりも、3回転にとどめておいたほうが、無難に手堅く高得点が取れる可能性が高くなったのだ。

オリンピックでのフィギュアスケートの採点方式が話題になっています。難度の低い技より高い技の方がより点数が高いのは当然ですが、難度の高い技が不十分だった場合にどちらの点数を高くすべきなのかは人によって意見が分かれると思います。
採点する、つまり点数をつけるというのは、その対象の価値を数値で表すことですが、フィギュアスケートの演技の価値を数値化することはそもそも可能なのでしょうか。たぶん、選手それぞれで演技の内容もレベルも違うでしょうから選手の数だけ演技もあるはずなのに、それを一律に数値に置き換えることなどできるとは思えません。「フィギュアスケート競技」として開催している以上、順位をつけざるを得ないために、その理屈付けとしての誰から見ても分かりやすい点数が必要なのだと思います。ただ、この問題は道具としての採点方式に振り回されて、本来、大事にしなければならない「フィギュアスケート」の発展という目的が蔑(ないがし)ろにされていることだと感じました。


ここからが本題です。フィギュアスケートの演技に点数がつけられないように、ゲームの面白さにも点数をつけることはできないと思っています。しかし、新しいゲームソフトを買おうと思っている人にとっては、数値で面白さを示してくれる情報があれば非常にありがたいです。それが正しい情報ならば、という条件付きですが。
日本ではファミコン時代からファミ通クロスレビューがそういう役割を担ってきましたが、最近(もっと昔から?)は40点満点が増えて点数の信憑性に疑問が出るようになりました。そこで、いくつかのタイトルについて他のレビューサイトと点数を並べて比較してみました。選んだタイトルは有名なものや個人的に面白かったものを選んでいます。

タイトルファミ通mk2Amazon任チャン
FF1339D(54)3.0
デモンズソウル29S(89)4.5
DQ940D(58)3.0
ニューマリWii40B(70)4.0ゴールド
斬レギ28A(80)4.5プラチナ
スカイクロラ32A(87)3.5無印
FF13デモンズソウルドラゴンクエスト9(DQ9)は遊んだことがないので面白さは分かりません。ニュースーパーマリオブラザーズWii(ニューマリWii)、斬撃のレギンレイヴ(斬レギ)、スカイ・クロラはどれも面白かったタイトルです。
面白いタイトルを選ぼうとした場合、ファミ通だけを見るとFF13DQ9ニューマリWiiの3つですが、mk2、Amazonレビューを見るとデモンズソウルと斬レギは外せなくなります。さらにデモンズソウルはGameSpotのBest of 2009 GAME OF THE YEAR(GOTY)に選ばれてもいます。全体の傾向としてmk2とAmazonレビュー、任チャン(任天堂チャンネル)は似通っています。言い換えるとファミ通だけがまったく違う点数をつけています。穿(うが)った見方をすれば、ファミ通は大作の続編に高得点をつけているようにも見えます。デモンズソウルの難易度が高く、初心者に対する敷居が高いために点数を低くしているのかも知れませんが、本当の意味で万人受けするタイトルなどある訳がありません。ですから、初心者向けでないことが点数を下げる理由になっているなら、採点方針がおかしいと思います。


自動車雑誌「NAVI(ナビ)」が4月号で休刊するそうです。その理由についてジャーナリストの武田 徹さんは次のように書いています。

そして時には自動車好きの垂涎の対象である超弩級スーパースポーツカーの試乗もできるようになり、それを特集仕立てにできることがあった。

そうした号はよく売れた。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100223/212975/?P=3

従来のブランド自動車の所有が、本格的な不況や環境問題を議論せざるを得ない時代の中でかつての魅力を失うと、雑誌の所有をも魅力を失う一蓮托生の構図から逃れられなかった。短期的にみればやむをえなかった商品ジャーナリズムへの舵切りが、長期的に見ると雑誌の寿命をかえって短くした。そんな構図がNAVI休刊の背景にあるように思う。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100223/212975/?P=6

ブランド自動車に試乗してその特集を組めば、スポンサーにも受けがいいでしょうし、販売部数も伸びるのですから、そうしない理由はありません。もし、そういう方針に反対する人は追い出されるでしょうし、実際に著者は編集部を離れたと言っています。
この話はファミ通のおかれている状況ややっていることに良く似ています。事前に有名タイトルのゲーム借受けて高得点のレビューをつけて特集を組みます。そして、それはゲーム会社も読者も望んでいることです。しかし、将来、ブランドゲームの価値が下がるようなことがあった場合、雑誌の消滅にもつながりかねないのではないでしょうか。
武田 徹さんは商品紹介に留まる「商品ジャーナリズム」ではなく「商品がなぜ商品として成立するのか、そこまで批評の射程を伸ばしたラディカルな消費社会ジャーナリズム」がNAVIには必要だったと締めくくっています。同じことがファミ通にも言えるのではないかと思います。



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