日本のサードパーティが海外展開したい理由
以前から日本のサードパーティは「海外展開」「グローバル化」と言い続けていますが、余り上手くいっていません。海外では日本で人気のJRPGは余り人気がありませんし、逆に海外で人気のFPSは日本では人気がありません。これは国民性の違いによるものと考えられるため簡単には変わりそうにありませんが、なぜ日本のサードパーティは不向きな海外市場を目指そうとしているのでしょうか。
答えは簡単で、海外の方がゲームが売れるからです。それを主要市場別(米国、欧州・他、日本)の据置機の売上上位5タイトルを例に説明したいと思います。(ソースはVGChartzです。)
Xbox360市場
典型的な例はXbox360です。
- Xbox360:米国、欧州・他、日本別の上位5タイトル売上比較
米国ではXbox360のヒットタイトルは数百万本売れますが、日本向けではエースコンバット6の22万本が最高です。Halo3の784万本と比べると35分の1にしか過ぎません。だからといって、ゲームの品質は同等以上を要求される訳ですから、日本向け、つまり日本人の趣向に特化したゲームを作るという発想が出てくる訳がありません。強いて言えば、日本を含む世界中の人に受け入れられるゲームよりも欧米人の趣向に特化したゲームを開発する方が合理的な考えでしょう。そんなことは、ゲーム会社も分かっていると思うんですが、なかなか欧米には売れない。例えば、エースコンバット6は米国で54万本しか売れませんでした。
PS3市場
Xbox360ほど顕著ではありませんが、PS3でも同じ傾向が見られます。
- PS3:米国、欧州・他、日本別の上位5タイトル売上比較
PS3はXbox360とは違ったいくつかの特徴があります。一つは米国と欧州・他でほぼ同等の売上となっていること。また、メタルギアソリッド4(MGS4)やグランツーリスモ5プロローグ(GT5 Prologue)のように日本だけでなく世界中で売れているタイトルがあることです。しかし、グランドセフトオート(GTA4)といったヒットタイトルは欧米合計で600万本以上売れており、日本向けゲームの売上とは大きな差があります。これは、Call of DutyといったFPS系ゲームでも同様です。
また、世の中の潮流としてマルチタイトル化があり、GTA4の場合、Xbox360とPS3の合計で1,400万本となり日本向けゲームとは二桁も違うビジネスを行うことが出来ます。ゲームはソフトウェアなのでハードウェアと違ってオリジナルのソフトを作ってしまえば、販売本数がそのまま利益になります。だから、より大きい売上が期待できるタイトル開発ならより大きな開発費を投入可能になり、さらにゲームのボリュームや品質を上げるというポジティブな連鎖にもっていくことが可能になります。
WIi市場
次にWiiですが、上記のXbox360やPS3とは全く違う状況になっています。
- Wii:米国、欧州・他、日本別の上位5タイトル売上比較
上位5タイトルをリストアップすると全て任天堂タイトルになります。つまり、同一タイトルを日本を含む世界中に売るというサードパーティの目標を実現してしまっています。また、米国と欧州ではWii Sportsは本体同梱になっているため、Wii Sportsの販売数=Wii販売数となっています。ただ、日本の売上が一番少ないという傾向は他のプラットフォームと同じです。
まとめ
欧米には巨大なゲーム市場がありますが、ヒットタイトルは欧米系ゲームばかり。一部の例外を除き日本のゲームは売れていません。しかし、ゲーム開発費は高騰し続けており、日本のサードパーティとしては時間がかかっても欧米人好みのゲームを開発して海外向けタイトルの売上を拡大したいと考えているのだと思います。
おまけ
最後に米国のWIi/Xbox360/PS3の比較グラフと追加します。
Wii Sportsを除外したとしても、他のタイトルも1,000万本前後を売り上げているのでXbxo360やPS3のタイトルの売上相対的には小さく見えます。さらに今年の年末ごろにはニューマリWiiがおそらく1,000万本クラスまで売上を伸ばしてくると考えられます。
なお、このグラフは米国でのWiiの売上グラフを基準にしているため、前述のPS3のグラフとは縦軸の縮尺が違っています。その点を考慮して、前述のPS3の米国グラフと比較すると、日本のXboxo360やPS3市場がどれだけ小さいかが想像出来ると思います。
カプコンはモンハン3というメジャータイトルの続編をWiiで発売し日本で100万本を販売しました。4月20日には米国での発売を予定しています。3,000万台以上という現行据置機世代において最大となる米国ゲームプラットフォームで、Wiiスピークによるボイスチャットと無料オンライン協力プレイをサポートした日本初のゲームがどこまで普及するか興味深いです。