正社員神話

3月11日に発言小町に以下の相談が投稿されました。

以下のエントリでそれが起業したい若者に対する大人の本音を探るための創作であることが明かされます。

さらに上記エントリについての記事が以下です。

状況を簡単に要約すると、学生が就職難だから起業したいという相談をしたら、否定的な回答が返ってきたという内容です。数えてみたところ、全レス数74(トピ主の3レスを除く)の内、肯定的なものは11(14%弱)しかありませんでした。回答者の多くは質問者よりも年長者になるでしょうし、長く生きた分だけ経験や知識も多いのかも知れませんが、こと「起業」に関してはどちらも素人です。そして素人同士の意見が極端に偏っているこの状況は何か理由があると考えられます。
回答者の多くの意見は、就職することを強く勧める内容でした。しかし、その理由は社会人になれば良いことがあるといった起業家を社会人と見なさない偏見的なものであったり、起業を否定したり、トピ主を批判するなど、なぜ就職すべきなのかの理由が明確ではありませんでした。新卒時が一番就職し易いという理由はもっともらしく聞こえますが、職業選択は期間限定のバーゲンセールとは違い、なぜ就職すべきかの理由にはなりません。

以下は自分の推測になりますが、回答者の多くには「企業への就職こそが人生の最良の選択」という模範回答が出来上がっているように思われます。思い込みや信仰と言っても良いかも知れません。これまでの日本社会では、企業に就職すれば、犯罪に関わるようなことがない限り、解雇されることがなく、一定水準の給与が保証され、長く務めれば昇進していくと考えてほぼ間違いありませんでした。おそらくこれらの過去の経験が多くの回答者が辛くても就職を勧めていた理由と思われます。正社員こそが正しい姿と考えているからこそ、非正規労働者も正社員にすべき、正社員の解雇規制緩和は反対、賃上げには賛成といった意見が出てくるのだと思います。

しかし、今は状況が変わりました。古き良き時代であった右肩上がりの経済成長期は終わりを迎え、今後は大企業・中小企業の大量解雇や企業倒産が増えていくでしょう。そうなれば「企業への就職こそが人生の最良の選択」という常識も自然と変わっていくと思います。(他人事のように書いていますが、その時に自分がどうなっているか想像も出きません・・・。)

また、回答者の中にビジネスモデル云々と書かれている方がいました。しかし、ビジネスモデルをいかに練っても実際に企業してみるとまったく計画通りに進まないか、予想外のことが起きて計画の変更が必要になります。ビジネスモデルは大事ですが、ビジネスモデルにあまり執着すべきではないと思います。

「良い仕組みを作れば良くなる」「儲かる仕組みを作れば儲かる」ということを
まっすぐに信じ、初期の仕組み(ビジネスモデル?)作りを念入りに行うことが
成功への第一歩だと考える風潮があります。これは実はとても不思議なことです。
 
最も大切なのは、仕組みを、時と共に如何に進化・洗練させていけるかどうか、
ということであり、初期に作られた仕組みは、単なる道しるべ にすぎません。
知恵も経験も足りない初期の仕組みで 失敗するのは当り前。失敗を重ね、失敗の度に
努力し、次は成功するように変えていく、その変化プロセスこそが最も重要なのです。

デジモノに埋もれる日々: 歯車は勝手には回らない - 回らないものが回り始めるとき

上記エントリは5年前に書かれたエントリですが、日本の新しい試みが否定されがちな状況と、そういう思い込みを覆した例(Amazon楽天)が紹介されており、今読んでもいろいろ参考になると思います。