AndroidがiPhoneに勝てないと考える理由

先週、ソフトバンクから携帯電話の新モデルが発表されました。最近になって各社のスマートフォンがようやく充実してきた感じです。

2010年度上期の携帯電話全体の出荷台数1,913台に対し、スマートフォンは223万台と11.7%程度のシェアしかありませんが、携帯電話の出荷台数が伸び悩む中でスマートフォンは順調に出荷台数を増やしていおり今後も伸びると上記記事では予想しています。
携帯電話業界としては、まだまだ市場の大きいガラケーと成長が期待できるスマートフォンと、それぞれに製品を投入していくのだろうと思います。AU「われわれはAndroidに出遅れた」とか言っていましたが、携帯電話を売っていながらユーザーが求めているものが何も見えていなかったんでしょうね。

スマートフォンが支持された理由

AUガラケーの未来を信じていた、2年以上前のエントリで以下のように書きました。

今のケータイとiPhoneの比較をめぐる議論は、ワープロとパソコンの比較とよく似ていると思う。

要はワープロがパソコンに駆逐されたように、ケータイ(ガラケー)もスマートフォンに駆逐されるだろうという内容です。理由は単純でスマートフォンの方が効率が良いので、世界という広い市場向けに安く良い製品が作れるからです。このエントリを書いた当時はAndroidがなかったので、スマートフォンの今後を考えてみました。


2010年上半期のスマーフォンの国内シェアはiPhoneが60.1%で過半数を占めています。今後はこのシェアが増えるのか減るのか、それとも変わらないのかがポイントです。ところで、今まで携帯電話を作ったことのないAppleiPhoneがなぜこれほど普及したんでしょう。Apple製品なら何でも買うという人もいるのでしょうが、それは極々一部でしょうから、説明にはなりません。新しいもの好きの人を加えても数が足りません。答えは、ケータイユーザーの通常の通話やメール以外で携帯電話でよく使う機能」という質問に対するアンケート結果から見えてきます。

カメラ:51.9%
インターネット:47.7%
アプリ(ゲームなど):22.2%

時計・アラーム:20.0%
写真を撮る:19.5%
インターネット:15.1%
ニュースを読む:7.5%

※「ニュースを読む」をインターネットに加えれば、22.6%
どちらも「通常の通話やメール以外で携帯電話でよく使う機能」という質問の回答ですが、前者が2006年、後者が2008年の結果とちょっと古いです。有効回答数は前者が5,736人、後者が1,000人です。別の20代向けアンケート結果ではメールが通話を上回っていたことから、通話以外でよく使う機能のトップはメールでしょう。これらの結果は、携帯電話ユーザーが、通話/メール/カメラ/インターネット/時計(アラーム)が快適に使える端末を望んでいることを示しています。そしてこれは私の推測ですが、iPhoneなどのスマートフォンが、彼らにとって使いやすい製品に見えたのではないかと思います。ソフトウェアキーボードに抵抗や不安を感じている人も多いような気がしますが、単なる慣れの話だと思います。

また、別のアンケート結果からガラケーのオリジナル機能がそれほど支持されていないことも分かります。

「これは無駄かも……」と思う機能
1位 おサイフ携帯機能……168票
2位 ワンセグ……131票
3位 音楽プレーヤー……121票

こちらのアンケート結果は約1年前の2009年12月です。
つまり、これらのアンケート結果から見えてくるスマートフォンが選ばれる理由は次の2つと考えられます。
-いつも使っているメールやインターネットなどの機能が使いやすい
-ガラケーにしかないおサイフ携帯やワンセグ機能はいらない
そうして、最初に販売されたiPhoneスマートフォン市場でトップシェアを取りました。

AndroidiPhoneに勝てない理由

AndroidiPhoneに勝てない理由は非常に単純です。それは、AndroidiPhoneに比べて使い勝手が悪いから。ただそれだけです。仮にAndoroidがiPhoneと遜色ないレベルの使い勝手を実現できたとしても、それでもiPhoneには勝てません。市場でシェアを握っているのはiPhoneなのですから、ユーザーは同じものならiPhoneを選ぶでしょう。あえてマイナーな製品選ぶ理由がありません。
さらにAndroid自体の問題として、OS互換、機種互換の問題があります。国内向けiPhoneは色違いを除けば3G/3GS/4の3種類しかありません。そして、それぞれの端末毎の特徴も明確です。対して、Androidは各キャリアやメーカーから様々な端末が販売されています。OSのバージョンだけでも1.6/2.0/2.1/2.2があり、各端末ごとに対応OSが違っていたり、バージョンアップができたりできなかったりします。また、OSバージョンが同じでもその動作はけっこう違いがあるようです。
Yahoo! Japanの講演のこちらのプレゼンがよくまとまっています。

動画の説明も見てもらった方がいいのですが、同じAondroidでも同じようには動いてくれないのでかなり苦労しているようです。
また、アプリ互換の問題もあります。

HT-03AXperiaのスペックや搭載デバイスをまとめてみると(図1)、2機種の差は一目瞭然(りょうぜん)です。
画面のサイズで見ると、HT-03AがHVGA(320×240)であるのに対して、XperiaはフルWGA(854×480)です。また、端末に搭載しているセンサー類に着目すると、Xperiaは近接センサーと照度センサーを搭載していますが、HT-03Aにはありません。
また、HT-03Aには入力手段としてトラックボール(機械式)がありますが、Xperiaにはありません。
これほど異なる両端末ですが、Androidプラットフォームを搭載している点は共通しています。従って、どちらにも同じアプリケーションをインストールできます。
そして、それぞれの端末のユーザーは、アプリケーションが「自分の端末で正常に動作すること」を期待するのです。
1つのアプリが、すべてのAndroid端末で動作する。これは、Androidの良いところでもあります。ただ、前提となるハードウエアが異なると、正常に動作することは必ずしも保証されない。これが、開発者にとっては不安の種です。

Androidのメリットは各端末メーカーが様々な端末を開発できるので、ユーザーは個性豊かな端末の中から自分の気に入ったものを選ぶことができます。しかし、その裏返しとしてその使い勝手やブラウザ、アプリについての互換性はiPhoneに比べると低くなってしまいます。上記で引用した記事の趣旨は機種依存しないアプリ開発の説明ですし、“アンドロイドやろうぜ!by GMO”プロジェクトというアプリ開発を支援する活動も始まっています(まだ始まったばかりという感じのようですが)。iPhoneにも互換性の問題はあります。でもこちらも良い面と悪い面がありますが、Appleの中央集権型の体制のためにその差は最小限に押さえられています。このAndroidのOSや端末ごとの互換性の低さはユーザーからは「よく分からないもの」としてしか受け取られないのではないでしょうか。そもそもAndroid OSのバージョンも理解して貰えないでしょう。

パソコンとの比較

パソコンの世界では、ウィンテルと呼ばれるマイクロソフトIntelによる共通プラットフォーム上で各機器メーカーが様々な製品を開発して販売するシステムが上手く機能して市場が広がりました。AppleMacWindowsと比べると非常にマイナーです。そしてLinuxはさらにマイナーなOSです。
Windowsを使っていた頃、なぜOSがこんなに高いのか理解できませんでした。OSなんてアプリケーションが動けばいいだけなのだから、マイクロソフト以外の企業がLinuxをサポートすれば、ユーザー/ソフトメーカー/パソコンメーカーのみんなが幸せになれると思っていました。
Linuxの普及を考える上での課題を以下のエントリでは次のようにまとめていて、自分もその通りだと思います。

1.プリインストールされたパソコンの販売
2.ディストリビューションの統一
3.過去の遺産の使用
4.オリジナル機能

こういう風に整理してみると、Windowsに変わってLinuxを普及させることがどれほど困難か分かります。LinuxではなくMacに置き換えて考えてみると、1、2、4はクリア出来ているのに、それでもWindowsを置き換えるほど普及させることはできていません。


そして、携帯電話の世界でも同じことが言えます。LinuxAndroidと名前を変えて各メーカーからプリインストール済みで出荷されています。そして、各端末ごとにおサイフ携帯やワンセグといったオリジナル機能もあります。でもやっぱりそれは「iPhoneもどき」でしかありません。Windowsと同じようなことしかできないLinuxが支持されなかったのと同じ理由で、iPhoneと同じようなことしかできないAndroidが指示されるとは思えません。
Windows搭載パソコンは様々なメーカーから発売されていますが、Windows対応のソフトであれば、ほぼ動作すると考えて間違いありません。対してLinuxディストリビューションの違いやハードウェアの違いを誰も保証してくれません。iPhoneSafariであればブラウザ見えの動作は統一されています。でも、Androidは端末ごとにバラバラです。アプリの動作も各アプリ開発会社に任せられています。つまり、パソコンの世界でLinuxが支持されなかったのと同じ理由で、携帯電話の世界でAndroidが支持されないと考えられます。


ただ、Androidにとって有利な点もあります。それはパソコンと違い、携帯電話の世界ではまだiPhoneデファクトスタンダードになっていないことです。約9割を占めるガラケーユーザーはiPhoneを実体験として知りません。この点はパソコンとは違います。
ただ懸念材料は、Andoidユーザーで次はiPhoneを使いたいと考えている人が21%もいるのに対して、iPhoneユーザーで次はAndroidを使うと答えている人がたった6%しかいないことです。

いろいろ思ったこと

結局、携帯電話の世界でもパソコンの世界でも、そしてオフィスソフトの世界でも、オープンソースが普及していない理由は、本当の意味でのオリジナリティが欠如しているからのような気がします。LinuxAndroidOpenOfficeに共通しているのは、主流となっている有償ソフトを使わなくても同じことができるという思想で作られているように見えます。それは悪く言えば、二番煎じ、猿真似に過ぎず、オリジナルの後追いにしかなりません。