自分なりに電子書籍の歴史を振り返ってみた
電子書籍について
- http://ascii.jp/elem/000/000/569/569433/
- “動くハルヒ”が電子書籍を「読みなさい」 角川「BOOK☆WALKER」、エヴァやバカテス、はやぶさ本も - ITmedia NEWS
- 「変化を自分で作りたい」 村上龍氏が出版社と組まずに電子書籍を出す理由 (1/2) - ITmedia NEWS
今年になって電子書籍関連の発表が急に増えた印象があります。でも、この「電子書籍」とはなんでしょうか。ディスプレイに文字が書いてあれば、それは電子書籍となるのでしょうか。大辞林(iPhone)には「書籍をデジタル-データ化して、電子媒体に記録したものの総称。」と書かれています。では、「書籍」とは何かと言うと本、書物、図書。そして、「本」とは書籍、書物だそうです。ここで堂々巡りとなりこれ以上の意味は分かりません。
この大辞林や青空文庫、ブログ等を電子書籍とするかは人によって意見がわかれると思っています。このエントリでは、電子書籍を「文字を主体として電子媒体を通して物語を語るコンテンツ」と定義してみます。そういう定義に基づいて、自分がこれまで体験してきた電子書籍について語ってみたいと思います。
電子書籍以前
電子書籍以前、今まで本にはない新しい試みに挑戦する本がありました。もちろん媒体は紙の本なのですが、電子書籍ならでは特徴であるインタラクティブ性を備えていました。
- 『きみならどうする?』(1980年代)
きみならどうする? - Wikipedia
紙の本でありながら、アドベンチャーゲームのように所々で選択肢が提示されて、選択肢によってページをジャンプしながら読む本です。
かなり昔のことなので自分が実際にどの本を読んだのかさっぱり思い出せません。そういう普通の本とは明らかに違う本に驚きと強い興味を抱きながら読んだことは憶えています。
電子書籍
- ドラゴンクエスト(1986年)
普通、これはテレビゲームと考えられていますし、自分もそう思います。ただ、しかし、同時にこれは登場キャラクタの会話を軸に展開される定番のファンタジー物語でもあります。困っている人々を助け、様々な怪物を倒しながら経験を積み、お姫様を助け、そして最後は世界を救います。テレビゲームでありながらゲーム性は低く、時間をかければ誰でもエンディングまでたどり着けます。そう、まるで本を読むかのように。このゲームは大ヒットとなりその後に作られる続編もことごとく大ヒットとなりますが、それらはゲーム性が増してストーリーの比重は相対的に低くなっていったように思います。)もちろん、ストーリーが悪くなったとは思いません。)
以下のやり取りは、ゲームを遊んだことのない人でも知っている有名なイベントだと思います。
http://www7.ocn.ne.jp/~bacube/bangai/oldgame_ban05/DQ1.html
竜王:『私の味方になれば世界の半分をやろう』
勇者:▲『はい』 △『いいえ』
ちなみにドラクエと双璧をなす『ファイナルファンタジー』(1987年)は、それほど印象に残っていません。理由はよくわかりません。
- ポートピア連続殺人事件(1985年)
こちらも知る人ぞ知る名作ゲームです。ただ、残念ながら遊んだ記憶はあるのですが、よく憶えていません。自分で買ったのか、友人に借りたのか、友人宅でちょっと遊んだだけなのか。
それにして、今考えてみても、あの結末はよくできていたなと思います。
- 『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島 前編/後編』(1987年)
ファミコン・ディスクシステムのゲームです。桃太郎やかぐや姫といった定番の昔話のパロディですが、ポートピア連続殺人事件といったゲームが推理小説風の謎解きを重視していたのに対して、こちらはストーリーに重きを置いていたました。アドベンチャーゲームですので、間違った選択肢を選ぶとゲームオーバーになるのですが、それは物語を退屈させないための仕掛けだったように思います。
- 弟切草(1992年)
- 出版社/メーカー: チュンソフト
- 発売日: 1992/03/07
- メディア: Video Game
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あの当時はインターネットという便利なものは使えなかったので、頑張って「ピンクのシナリオ」を探したのを憶えています。その中でこういうなぞなぞがあった気がするのですが、もしかしたら勘違いかも。「目をつぶったら見える魚の名前はな〜んだ?」
- かまいたちの夜(1994年)
- 出版社/メーカー: チュンソフト
- 発売日: 1994/11/25
- メディア: Video Game
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でも、セールス的には弟切草よりも良かったようです。
- ダブルキャスト(1998年6月)
- 出版社/メーカー: ソニー・コンピュータエンタテインメント
- 発売日: 1998/06/25
- メディア: Video Game
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昨年からPSPでダウンロード配信をしているそうなので、興味のある人はオススメです。
- サンパギータ(1998年10月)
- 出版社/メーカー: ソニー・コンピュータエンタテインメント
- 発売日: 1998/10/15
- メディア: Video Game
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- 人間失格(2007年8月)
「出版不況」というタイトルのエントリを書く過程で青空文庫で読んだ作品です。そのエントリの内容はネットで書かれていることのまとめみたいなものだったのですが、はてブで「本を買わずに青空文庫で読むから出版不況に〜」というようなことを言われて、確かにその通りだと思いました。
パソコンのブラウザ(Firefox)で青空文庫を読むのはちょっと(いや、結構かも)読みづらい感じでした。画面いっぱいに文字が並んでいると読む気が失せるし、特に改行が分かりにくかったです。また、ページがないのでどのくらい読んだのか分からないのも抵抗がありました。この辺りは専用ビューアを使うと良いのかも知れません。
内容は正直期待していなかったのですが、認識を改めさせられました。いや〜、面白い。当時の時代背景が感覚的に分からないところもあり、どう受け取ればいいのか迷う箇所もありましたが、非常に「人間らしさ」を感じました。これの現代版を誰か書いてもらえないものでしょうか。
太宰治 人間失格
- DS文学全集(2007年10月)
- 出版社/メーカー: 任天堂
- 発売日: 2007/10/18
- メディア: Video Game
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DSで本を読むようなタイトルを買うのは日本人くらいかと思っていたのですが、AmazonやVGChartzを見ると、まったく逆らしいことが分かり複雑な気分になりました。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000VQOKBS
日本では24人が5つ星、20人が4つ星、7人が3つ星。
http://www.amazon.com/100-Classic-Books-Nintendo-DS/dp/B003B3V0MA
アメリカでは38人が5つ星、8人が4つ星。
http://www.amazon.co.uk/100-Classic-Book-Collection-Nintendo/dp/B001LK6XKE
イギリスでは68人が5つ星、18人が4つ星。
http://gamrreview.vgchartz.com/sales/12312/ds-bungaku-zenshuu/
http://gamrreview.vgchartz.com/sales/29476/100-classic-books/
日本の売上は16万本なのに対して、アメリカは10万本、ヨーロッパは54万本でした。
- 「猫の妙術」(2008年8月)
銃夢LOの12巻でこの話のパロディが紹介されていたので、読んでみた話です。話自体は非常に短いのですぐ読めます。以前にどこかで聞いたことのある話なので、結構有名な話のような気もしています。
猫の妙技
http://reijifur.main.jp/neko.html
- 「あたし彼女」(2008年9月)
ケータイ小説が相次いで書籍化や映画化されている状況があって、また、「あたし彼女」は独特の表現が話題になっていたので読んでみました。
iPhoneで読んだのですが、思ったのはこの細切れとも言えるような表現方法は1画面に表示可能な文字数に制限のあるケータイ画面にとても向いているということです。とても読みやすかったです。また、万事が主人公の主観で物ごとが語られるのですが、このストレートな書き方はそれを非常に活かしていると感じました。さらにメールのやり取りの場面では、まさにメールを読んでいるかのような錯覚をも感じることもでき、まさにケータイ小説のために作られた作品だと思いました。
なお、以前はパソコン経由で読めたサイトが今はケータイでしか読めなくなっていました。なので、今から読むならならケータイ経由か別のサイトを探す必要がありそうです。
ケータイ小説という疑似体験 −あたし彼女(著:kiki)−
- 428 〜封鎖された渋谷で〜(2008年12月)
みんなのおすすめセレクション 428 ~封鎖された渋谷で~ - Wii
- 出版社/メーカー: セガ
- 発売日: 2010/02/25
- メディア: Video Game
- 購入: 1人 クリック: 147回
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- 魔王はなかまをよんだ!しかしだれもあらわれなかった!!(2009/03/08)
http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-634.html
たしかはてブ経由で知って読んだ作品です。ドラクエの二次創作という分類になると思いますが、ゲーム中ではまったく登場しない名もないキャラクタが重要な役割を果たすという展開が面白かったです。電子書籍のCGM的側面がよく表れた作品だと思います。
- まおゆう(2010年4月)
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」まとめサイト
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 - うつせみ日記 (Utsusemi Nikki)
正式名称は『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』なのか、それとも決まったものはそもそもないのか分かりませんが、略称として「まおゆう」がよく使われている作品です。
かなり真面目に読んで3日間程度かかるくらいのボリュームも凄いですが、それだけのボリュームを飽きさせず、破綻させずにまとめきる力量は感嘆せざるを得ません。
上に挿入させたニコニコ動画は、この作品の漫画化、動画化プロジェクトのものですが、こちらも非常識なほどハイレベルです。
こういう作品を読んだり、観たりすると、プロとアマの境界線とは何だろうかと考えさせられます。
- 「嘘に「嘘」を吐いたなら」(2010/09/15)
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=48724
Pixivはイラストの投稿サイトとして有名ですが、小説の投稿も始めたということで読んでみたのがこの作品です。他の作品もざっと見てみたのですが、いわゆる「腐向け」が多いようで自分の趣味には合わなそうでした。
この作品は、シンデレラのその後を描いているのですが、主役は魔法使いです。なぜ魔法使いはシンデレラを助けたのか、著者の独自の解釈により話が大きく広がります。何と言うか、とにかく素敵なお話ですので、老若男女問わずぜひとも多くの人に読んでもらいたいです。
- "MOMOTARO"(2010/10/18)
"MOMOTARO"
これもはてブ経由で知った作品です。桃太郎のパロディですが、面白いです。作られた目的通り、親が子どもに話してあげるのが一番向いていると思います。
- タイムトラベラーズ(予定)
イシイジロウ氏が放つ『タイムトラベラーズ』はニンテンドー3DSに!【LEVEL5 VISION 2010】 - ファミ通.com
こちらは購入予定です。新作のサウンドノベルということで期待はしているのですが、不評だった「忌火起草」(イマビキソウ)の例もあり、少なからず不安もあります。
まとめ
結局、娯楽としての読書はこれからもなくなることはないと思っています。さらに、インターネットの普及によって簡単に小説を発表する場ができたことで、誰もが小説を書き世界に発表することができるようになりました。これまで文書だけで娯楽としての価値を維持できた小説家は無名の新人たちのプレッシャーに晒されることになるでしょうし、逆にアドベンチャーゲームのノウハウを電子書籍に持ち込むことも出来ると思います。ゲームと違って、小説に数千円はなかなか払ってもらえませんが、iPhoneやiPad向けに機能を絞り価格を抑えたタイトルであれば、需要はあると思います。
iPhone, iPad, Kindleなど電子書籍のインフラはアメリカ企業のほぼ独占状態となっています。でも、そのインフラの上で取引されるコンテンツでは、日本は決して負けていないと思います。