スマートフォンの未来

いわゆるマスメディアでは、スマートフォンのことを「高機能携帯電話」と括弧書きで書かれることが多いのですが、とても違和感があります。海外ではカメラやワンセグなどの特徴的な機能を持つ日本の携帯電話を"Feature Phone"と分類していることもあり、機能でスマートフォンガラケーを区別しようとすることに無理があると思います。

KDDI(au)が、米アップル製のスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」の次期モデルを発売することが22日、明らかになった。


マスメディアで気になるところはその二面性です。ダブルスタンダード、二枚舌、マッチポンプ等々と言い換えても良いかもしれません。このauiPhoneを販売するというニュースでは

スマートフォンの“原型”として絶大な人気を維持するアイフォーンの投入で、巻き返しを狙う。

と、iPhoneの人気ぶりを強調するようなことを書いていますが、3年前にiPhoneが日本で発売された時には、次のように日本での人気のなさを強調するような記事を書いています。

日本では100万台売れる−との予測もあったアイフォーンに、もはや当初の勢いはない。
(中略)
乾氏は「新しい提案のある製品だが、日本向けに手直しせず発売した点で市場を見誤っていた。一定のヒットはしたが、戦後処理も必要な段階だ」とアイフォーン商戦を総括。携帯が電話とメール機能にとどまっていた欧米と異なり、「日本はすでにネット閲覧や音楽再生機能を盛り込んでいる。アイフォーンの新規性は薄い」と市場環境の相違を指摘した。

なお、100万台売れるという予測については、マスメディアがアナリストの言葉をつまみ食いしているようです。(こちらの記事を参照)



ところで、先日、池田信夫さんという方が「「ガラケーワープロ」なのでガラケーは全滅するだろう」という内容の記事を書かれていました。

内容は同感なのですが、なぜ、携帯電話のキャリア各社がスマートフォンを積極的に販売している今になって、こういう記事を書くのかが分かりませんでした。こういう記事を書くのであれば、iPhoneの発表時や日本での発売時、auスマートフォンに方針転換した時など、もっと良い機会はあったはずです。いつでも書ける記事を、auiPhoneを発売という報道があってiPhoneの形勢が良い今の時期に発表するのは、余りにもタイミングが悪いです。


この記事を読んで自分も3年前に同じようなエントリを書いたのを思い出したのですが、同時に今後、スマートフォンがどうなるのかが気になりました。そこで、今、考えていることを書き残しておこうと思います。


スマートフォンガラケー、あるいはパソコンとワープロのもっとも大きな違いは、「部品の標準化」です。今のパソコンは汎用部品の組み合わせで作られているため、秋葉原などで部品を揃えて自作することは難しくはありません。対して、ワープロやテレビ、カメラなどの機器は、それぞれの機器ごとに作りが異なったり特殊な部品が必要なため、部品の入手が難しいですし、部品が揃っても簡単には組み立てられません。一方、部品を作る側からすると、パソコン部品は競争が激しい代わりに良い部品を作れば世界中でたくさん販売できます。その結果、パソコンは高機能、高性能、低価格が実現しました。スマートフォンも理屈は同じです。そして、価格競争に晒されない、OSメーカーやCPUメーカーが大きな利益を得ることができます。

パソコンはWindows95が世界的な大ヒットになったとWikipediaにも書いてありましたが、逆にこの頃から今に至るまでの15年以上もの期間、パソコンの操作性は変わっていません。モニターにウィンドウが表示され、それらをキーボードとマウスで操作するというスタイルのままです。別の言い方をすれば、このユーザーインターフェースがパソコンに最も適しているとも考えられます。90年代のパソコンは今から考えると非常に低スペックでありながら高価でした。その後、高性能に対する要求からクロック競争が起こりクロック数がそのパソコンの性能を表すようになりました。そして、クロックが上がらなくなってきた頃、性能への要求も余りなくなり、パソコンの低価格化が進みました。

一方、スマートフォンはデバイス全面のモニターと指でのタッチパネル操作が主流です。スライド式キーボードが使える機種もありますが、主流ではないと思います。パソコンがそうであったように、ユーザーインターフェースはこのまま変わらないでしょう。また、スペックも技術トレンドに合わせて、CPU速度やコア数、メモリ容量は上がっていくでしょうが、大きな変化はないでしょう。

パソコンが登場してから最も変わったのは、パソコンそのものよりも世の中のパソコンに対する認識です。特にインターネットが普及してからは、パソコンはネットの向こう側にあるサービスを使うための端末であり、かつサービスを提供するための端末になりました。スマートフォンも同じです。電話機能付き携帯型コンピュータとも言えるスマートフォンは、ネットの向こう側にあるサービスを利用するための端末になっていきます。最近ではウェブサイトもスマートフォンに最適化したページを提供するようになりましたし、GREEDeNAのモバゲーといったガラケー向けSNSゲーム会社もスマートフォンに対応しました。FaceBookGoogle+といったSNSは、もしかしたらパソコンよりもスマートフォンを重視しているかもしれません。SNSサービスにとって何より大切なのはサービス利用者であり、スマートフォンは24時間365日、利用者が肌身離さず持っているものだからです。そうやって、スマートフォンは今あるカタチから変わらないまま、その意味合いや価値を変えていくのだと思います。