任天堂の危機の兆候

任天堂が危機に直面している。今期、連結決算を公表して以来初となる200億円の最終赤字に転落する見込みだ。

任天堂が危機に直面しているらしい。ちなみに危機を国語辞典でひくと「あやうい状態。」と意味だそうですが、任天堂は本当にあやうい状態なのなのでしょうか。しかし、この記事自身が「危機」を否定しています。

今期、200億円の赤字が出ても、経営自体は揺るがない。

危機に直面していると言いながら、経営事態は揺るがないと言っている。いったいこの記事は危機があるといっているのか、安泰と言いたいのか分かりません。


しかし、この記事に書かれていることとはまったく違う観点で、任天堂に危機が迫っています。
任天堂のビジネスの傾向は「年末偏重」でありこの年末商戦の売り上げを最大化させるために短期的な値下げを実施したとも言えます。つまり、今の赤字は織り込み済み、想定の範囲内であり、年末商戦に勝負をかけていると任天堂は言っています。しかし、その重要な年末商戦に黄色信号がともっています。

米Nielsenが現地時間2011年11月17日に公表したホリデーシーズンに関する調査結果によると、米国の子どもが買ってほしいと思っている消費者向け電子機器の1位は米Appleの「iPad」だった。特に6〜12歳の子どもではApple製品の人気が高く、トップ3をAppleのモバイルデバイスが占めた。

以前岩田社長は、ウィッシュリストを例に挙げて、点々堂の製品がウィッシュリストの一番にリストアップされているから景気低迷の影響をあまりすくないと言っていました。しかし、今回の記事を読みむとウィッシュリストの上位はApple製品で独占されています。

任天堂が幸いにして世界の経済環境の変化をあまり受けずに来ているのは、DSやWiiウィッシュリストの1番として欲しいと言っていただけるお客さまの数が多かったからだと私は思っています。

今のアメリカでは景気は決して良くなく「ウォール街を占拠せよ」などの大規模なデモが各地で起きている状況です。任天堂の言葉を借りれば、ウィッシュリストの上位を獲得できなかった任天堂製品を含むゲーム機は購入対象から外されてしまう可能性のが高いです。親の立場としても、ゲーム機より子供の将来にとって役立つことが多い思われるiPadに子供の頃から触れておくことは好ましいと考えるのではないでしょうか。これが、短期的なリスクです。
また、マリオやゼルダは幅広い世代で人気が高いですが、この結果は一朝一夕に得られた物ではありません。今の大人が子供の頃にマリオやゼルダのファンになり、それが続いている、または一時的に離れていたファンが帰ってきた場合がほとんどと考えられます。と言うのも、大人になるまでマリオやゼルダを知らなかった人が大人になってファンになるとは考えにくいからです。つまり、今の子供がマリオやゼルダを遊ばなかった場合、彼らが大人になってファンになるとは考えにくく、さらには彼らの子供もマリオやゼルダのファンになる可能性が低くなってしまいます。これが長期的なリスクです。

上記のニールセンの調査に表れている任天堂の危機を簡潔に表せば、米国の子供達の多くはゲーム機よりもアップル製品を欲しいと言っている、ということになります。
この短期/長期のリスクが実際に起こるかは、今月末のホリデーシーズン(米国のブラックフライデー)を迎えてみれば分かります。そして、それが現実として起こったとき、また、来年、再来年も続くような長期的な傾向として表れたとき、文字通り任天堂の危機になります。