ゲームソフト発売日の行列が無くなる日

ゲームソフトの発売日。ゲームに興味の無い人たちにはごくごく普通の日。しかし、発売されるゲームを何ヶ月前から心待ちにしていた人からすると誕生日やクリスマスに匹敵する特別な日となる。ゲームソフト会社もそれを心得ているので、ゲーム情報を少しずつ公開していき発売日直前には、テレビCMをうったり、店頭にポスターなどの販促ツールが揃うように準備する。そして、初週に何十万本も販売される様な大作ソフト、たとえばドラクエやFF(ファイファンではなくエフエフ)、モンハンなどの場合、初日には早朝から大行列ができる。この行列が社会的に注目されたのはドラクエ発売日だったと思う。

こういう行列に並ぶのは、発売日にソフトを手に入れるためです。発売日から数週間、数ヶ月経てば定価より安い値段で新品なり中古なりを買えることは皆分かっていますが、それでは周りに乗り遅れてしまうので面白くない。だから、発売日に欲しい、それがダメなら翌日には欲しい。ところが、ゲームソフトの開発会社もお店もゲームソフトの売れる数を正確に知ることはできず、売れ残りは”損”となってしますので、気持ち余らないようにゲームソフトを準備するため、どうしても買えない人たち、難民が発生してしまう。これが、大作ソフトに伴う問題だった。


先日、この発売日にゲームソフトを買えないという問題に対して任天堂が対策を発表した。

2Dのスーパーマリオの完全新作、『New スーパーマリオブラザーズ 2』を8月に発売することをお伝えしましたが、このソフトから、従来のパッケージ形態でのソフト販売に加えて、パッケージソフトのデジタルディストリビューション、いわゆるダウンロード販売に取り組むことにいたしました。これ以降は、当社発売のソフトについては、原則として、パッケージとデジタルの2つの形態で、併売させていただき、お客様に選択していただけるようにいたします。

任天堂ダウンロード販売を始めると宣言した。任天堂が言うようにダウンロード販売にはメリットとデメリットがあるが、少なくとも発売日に確実に買えるというメリットは大きい。このダウンロード販売が一般的になれば、発売日に買えないかもしれないという不安はなくなり、もう発売日の行列を見ることも無くなるのかも知れない。


ところで、日本では電子書籍が売れていない。デジタルコンテンツと呼ぶならば、ゲームソフトも電子書籍も当てはまる。その電子書籍が売れていないのにゲームソフトのダウンロード販売は上手くいくのかという疑問もある。

電子書籍時代は本当に訪れるのか。市場規模は広がっているが、タイトル数はまだ少なく、電子書籍が生活に浸透しているとは現状では言い難い。

ただ、この点について個人的にはかなり楽観視している。おそらく従来型のメモリタイプも売れるだろうが、ダウロード販売もかなりの数が売れると思っている。形のないデータに数千円ものお金を払うのかと思う人もいるだろうが、これはデータを買っている訳ではない。ゲーム体験というサービスにお金を払っている。そう考えなければ、発売日に徹夜で並んで買う人たちの行動が説明できない。別の言い方をすれば「祭り」だ。その祭りに参加するためにお金を払う。たとえ、支払うお金が半分になったとしても、数ヶ月後に一人で祭りに参加しても楽しくない。だから発売日は非常に大切。それにも関わらず電子書籍を紙の本と同時販売せずに、電子書籍が売れないと嘆いている今の出版社は頭が悪いと思う。今回のダウンロード販売任天堂が成功すれば、少なからず電子書籍にも良い影響がある、いやあって欲しいと願う。数桁のシリアル番号と引き換えに数千円ものお金を支払う人が何万人、何十万人もいるのを目の当たりにすれば自分たちも真似したくなるのが人情というものだろう。