「OS X無料化」が意味するものはPCの家電化

この記事のはてブのコメントOS XApple製以外のPCにインストールできないのでこの主張は間違っているといったコメントが少なからずあったが、論点がズレていると思ったので書いてみる。

OSはパソコンを使うために必ず必要な基本ソフトなので自作PCでなければパソコン本体を買えば必ず付いてくる。なので、多くの人はOSを買っている意識はないと思う。そもそも「OSって何?」って人がほとんどでしょう。
さらに最近のデスクトップOSは違いが分かりにくい。DOSからWindows3.1、Windows95WindowsXPなんかは使い勝手も(安定性も)明らかに変わったし新OSを使ってみたいと思える製品だった。同時に当時としては高いハードスペックを要求したので快適に使うためにはパソコン本体そのものを買い換えることにもなった。しかし、Vista以降は違いが分かりにくい。違いが分からないのだから金をだしてOSを買い換える気にならない。使い勝手に関しては金を出して以前のOSに戻す製品すらある。

別にWindowsに限らずMac OSも傾向は同じ。使い勝手を戻したいとまでは思わないにせよ使い勝手は変わらない(と思う)。今回新しくなった「OS X Mavericks」にしたって目に見える違いはiBooksという読書アプリやマップという地図アプリなどが標準で追加された程度。たぶん、これからもWindowsMacに関わらずOSに過去のパソコン普及期のような新しさは期待できない。だからAppleはOSを無料にすると宣言したのだと思う。

ところで、普段意識することはないが、ほとんどの家電製品にはOSが入っている。テレビやHDDレコーダー、ゲーム機、電話機、デジカメ、洗濯機、電子レンジ。これらの製品のOSを買うことはないがOSを入れ替えることはある。たいだいはバグが見つかった場合で無償でアップデートできる。OSが販売されないのは目に見える新しい機能を提供できないから。新OSでテレビの画質が4倍になったり、HDDレコーダーのHDD容量が増えたりはしない。新機能を提供できなくなったパソコンのOSもこういう家電のOSと同じ扱いになっていくのだと思う。

なお、冒頭の記事の最後でマイクロソフトは「25%を占めるOSの売り上げを、どこか別のところで埋め合わせなければならない」と主張しているが、これは誤解を招く表現だと思う。マイクロソフトのOS売上が売上全体の25%だったとして、サーバー/パソコン比率、ハードウェア付属/OS単体比率などが、どの程度なのかによって影響は全然違う。今回のMac OSの無料化で影響を受けるのはパソコン用のOS単体の売上だけだろうから。