サンデープロジェクト:イランは悪の枢軸か

今日のサンデープロジェクトでイランの現地取材を特集していた。アメリカからはイラク北朝鮮と並んで悪の枢軸と呼ばれたこともあるイランだが、実際に取材してみると実態はどうも違うらしい。今までイラクの現地取材というのは観たことがなく、中東の国は民主主義とはほど遠い国だと思っていた(アルジャジーラTVは例外かな)が、大分認識が間違っていたことが分かり良い特集だと思った。
イスラム教との関係で政治的に不透明なところもあるが、なんでも密室で決めてしまう日本の政府とも五十歩百歩かとも思う。自由に政府批判ができるようなので、チラシを配っただけで逮捕されたり、共謀罪を導入しようとする今の日本政府よりも言論の自由という面では日本より上かも。
取材は2006年12月に実施。

取材に際し、当局側の監視役は一切付かなかった

先進国であれば当たり前だが、例えば北朝鮮では絶対にあり得ないことだと思う。
自由に取材場所を選べたとのこと。

「政府はメディアを統制・検閲する」と強く主張する通行人登場

駅前や投票所で取材をしていると、強く政府を批判する人が登場。彼によると政府はメディアを検閲していて、イランには人権もないらしい。ただ、リポーターの「公の場でそういうことを言って罰せられないのか」という問いに対して「話すことはできる」と返答。これって、言論の自由が保障されているということだろう。深読みして、この人が政府側のサクラの可能性もあるが、周りの人の反応も普通だったので、それも考えにくい。どうも日本にもたまにいる"変わった人"っぽい印象。

2006年度の経済成長率(GDP)予測 5.8%

物価高という課題もあるようだが、闇ドルやスラムもなく、経済はそこそこうまくいっているという感じ。

マスコミ

イランではテレビ/ラジオは政府管理だが、新聞/雑誌は民間に開放されている。新聞/雑誌の総数は約1300。6千人のジャーナリストがいる。こうした新聞/雑誌は発行前に検閲されることはないが、政府は出版の許可/報道の監督/発行の停止が可能で、昨年(2005年の事だろう)は20の新聞/雑誌が廃刊になった。廃刊になる条件は不透明で、風刺が一つで廃刊になる例が取材されていた。ただ、出版社の人が拘束されたりすることはなかった。

政治体制

政教一致体制で、最高指導者が一番権力があり、大統領の罷免権/軍最高司令官,司法長官,ラジオ局総裁などの任命権などを持つ。この最高指導者は86人の専門家会議の対数決で決められる。そして、大統領/国会議員/専門家会議などは国民の選挙で選ばれる。

選挙

保守派と改革派が対立しており、今は保守派が政権を握っている。改革者の立候補者は立候補段階で最高指導者が任命する護憲評議会の審査で失格となることがある。立候補資格なしと判断された人のコメントとして「イスラム法学者の組織は政府とは分離すべきです。」というのがあった。アメリカはこのイランの選挙の仕組み(立候補段階で資格審査される)を批判している。それでも改革派の人はアメリカの支援は望んでいない。改革派曰く「アメリカが支援していた王政時代よりも今の方が民主的。今は誰でも指導者を批判できる。」
投票は井戸端会議のような雰囲気で行われていて、新鮮。子供連れの親子もいて子供が投票箱に投票用紙を入れていた。イランでは参政権は15才以上の男女。この女性にも投票権が認められているというのは中東イスラムではめずらしいとのこと。例えば、アメリカと仲の良いサウジアラビアは選挙で選ばれた国会はなく、地方議会選挙も投票権は男性のみ。このためアメリカはダブルスタンダードと指摘されている。

教育

男女平等に教育は行われているらしい。女性の国会議員もいる。日本の国会と比べて男女比率はどうなのだろう。女学生(大学生)へのインタビュー(英語)で「イランは核兵器を持つべきか?」との問いに「もちろん持つべきでない。イランも米国もイスラエル北朝鮮もインドもパキスタンも。」と回答。自分が同じ質問を受けたらどう答えるだろうかと考えてしまう。
イランは男女別の5・3・3システム。王政時代は欧米風の文化が流行り親は心配していたが、革命後はベール(頭巾?)が義務づけられ安心して学校に行かせることができるようになり就学率は100%になったとのこと。この辺は日本と文化の違いが大きい気がするのでよく分からないが、取材風景を見る限りベールをしている以外、日本の小学校と違いはなさそうだった。で、小学生に将来何になりたいかを聞くと、「医者」、「考古学者」、「宇宙飛行士」、「建築家」(イランは日本と同様に地震が多い国とのこと)との回答。また、アメリカが嫌いな人に手を挙げて貰うと、ほとんど9割以上の人が手を挙げていた。が、逆に手を挙げない人がいるということに意味がある気がする。その後、壁に貼られているミッキーマウスの絵を指さして、好きかどうかを聞くと一斉に「はい」と答えるが、アメリカ生まれと知っているかを聞くと、沈黙してしまった。ちょっと、子供達にかわいそうな質問だと思った。
イランの大学生の65%が女性。政治部には女性が多く、スポーツ部には男性が多い。理由はサッカー場に女性が入れないなど男性に有利なことがあるらしい。

女性の地位とか

ノーベル平和賞を受賞したシリン・エバディ氏にインタビュー。交通事故では女性の賠償金は男性の半分だけであるなど、差別的法律があるとのこと。ただ、その程度の差別しかないのかと意外に思った。もちろん平等であるべきだが、他のイスラム諸国でのもっと酷い差別を聞いていたので逆に驚いてしまう。保守派からはかなり脅迫を受けており、窓には格子が付けられていた。
また、「イランの改革派国民自身がやることで米国は必要ありません」とコメントしていた。


以上