2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)

この人目を引きそうなタイトルは、「釣り」と思う。第一章でいきなりタイトルの質問に対する答えが書かれている。
じゃあ、この著書の主旨が何かと言えば、よく分からない。2ちゃんねる、インターネット、Web2.0セカンドライフなどをキーワードにひろゆき氏が持論を展開したり、佐々木俊尚氏や小飼弾氏と対談したりしている。

うまく総括はできそうにないので、この本の中で印象に残ったことについて、感想を書いてみる。

インターネットの未来

P.99にインターネットの未来について書いてある。多くの人が思っている何か凄いことが怒るという期待は幻想でしか無く、何もないというのがひろゆき氏の考え。ただ、携帯電話は別格で、キーデバイスとして進化していくらしい。理由は文字通り24H365D携帯されていることや個人情報のハブになっているから。PCなんかとは接している時間が全く違う。携帯電話会社が何もしないのが不思議とのこと。
この携帯電話についての考えは全く同意見。たぶん、iPhoneひろゆき氏の考えている製品に向かっていくと思う。

佐々木俊尚氏との対談

P.107以降が佐々木俊尚氏との対談になっている。内容はWeb2.0とかメディアと2ちゃんねるについて。
全体としては、インターネットや2ちゃんねると良い意味でも悪い意味でも特別視する佐々木氏とインターネットがあってなくても世の中大きく変わらないというひろゆき氏の議論になっているように見える。
結論的なものとしては、テレビや新聞など(マスコミ、メディアなど)が国民の代弁者ではなくなってしまったので、行き場所が無く集まってできたのが2ちゃんねるではないか、ということ。結構納得できる。

間違いだらけの法律

P.150

日本で何かを行うということは、誰かが責任を取るということです。逆に何もしないことに関しては、誰も責任を取る必要がないのも日本の文化です。

これを読んだときは絶対におかしいと思ったが、改めてよく考えてみると、皆、上記を暗黙の了解として生活しているように思える。海外で生活したことがないので海外の状況は分からないが、日本ではこの通りなのかも知れない。
ひろゆき氏は上記を踏まえた上で、日本の法律にはいいところと悪いところがあると言っている。自分にはそういう達観した考えは持てそうにない。

メディアと2ちゃんねる

P.179

2ちゃんねるは、全員が匿名言論でものを言い、ヒエラルキー構造が作られない完全フラットな場所なのです。

Googleページランクによる順位付けもはてブによる注目度も全否定した結論が上記。理由はどんな価値基準によりつくられたヒエラルキー構造も完璧なものではないのでやがては再構築が必要になる。その際には必ずフラットな場所が必要になるから。何とも凄すぎ。100年後、Googleはなくなってるかもしれないが、2ちゃんねる(の様なもの)は残っているかも知れない。あれだけの負荷を捌いている2ちゃんねるの技術も凄いと思っていたが、背景にある思想がこんなにしっかりしているとは思っていなかった。

小飼弾氏との対談

小飼氏は子供の頃にいじめられて苦労したと、時々自身のブログに書いているが、この対談を読むとなぜそうなったのか分かる気がする。
P.191

僕はソフトウェアなら全レイヤー理解できますけど、ハードウェアは理解できても手が動かせないですからね。

P.198

僕は、何お金を使っていいか分からないからわからないから、使うつもりで投資しちゃう。
(中略)
そう。で、消えたはずのお金が、なんか増えてくることになったり。今は悲しいことにそっちの方が多いんですよ。必死こいて、心と身体に汗した仕事よりも、投資でバンとやった結果の方が大きかったりする。

P.205

僕らは思考を停止しないですよね。”ここまでで止め”と。よく、みなさん思考を止められるなって感じますよ。
(中略)
そう言う意味では、思考の止め方を知っている人を羨ましく思うなぁ。

P.237

ブログやっていてありがたいのは、自分が書いたことを理解する、とんでもないヤツが世の中にいることを知れることですね。だから、僕が書くコードに誰一人としてついてこれないということは滅多にない。


もちろん、小飼氏のコメントで面白いものもたくさんある。
P.203

僕の意見では、価値の言うのは多次元のはずなのだけど、時価総額というのは一次元なんです。ほんとは行列の全部を見ないといけないのに、その絶対値だけをみているんです。
(資本主義の否定では?に対して)それはいいんです。絶対値を見るときは絶対値だけを見れば。その背後にあるものを忘れてしまうのがいけないわけです。絶対値がが絶対になると実体経済はどうでもよくなってしまう。

これについては全面的に同感。ここでは会社の価値について議論しているが、例えば個人の業績についても同じ事が言えると思う。例え貰っている給料が同額の人がいてもその人の業績の価値というのは多次元であり、給料だけからは見えてこない。

P.206

にしむら氏:友達がアメリカのダムにいったんですけど、空港よりセキュリティが厳しかったらしいですよ。
小飼氏:当然でしょうね。
にしむら氏:これが当然だと思える人は僕らみたいな人。日本のダムなんてセキュリティなんて何もないんですよ。

これは上記の思考停止の話題で出た話。今まで何度も観光でダムに行ったことがあるが、こういう風に考えたことは無かった。それをは思考停止なのか、それとも平和ボケなのかどっちだろうか。