スケープゴート

公園のベンチで寝ていた男性の上にオイルの入ったポリ袋を置き、火を付け殺そうとしたとして、警視庁少年事件課は殺人未遂の疑いで、いずれも東京都北区に住むタイル工の少年(17)や私立高校1年の男子生徒(16)ら15〜17歳の少年5人を逮捕した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070806-00000916-san-soci

少年達は人に火を付け殺そうとした理由として「ホームレスはいじめると追いかけてくるのが面白いし、警察にも通報しないからやった」と言っているそうだ。要は憂さ晴らしなのだろう。2ちゃんねるには自分の未来とホームレスを重ねたのではないか、という意見があるが、将来に希望が持てず刹那的な生き方がかいま見える気がする。ホームレスならぬ、ホープレスとでも言うのだろうか。

202 名前:名無しさん@八周年 投稿日:2007/08/06(月) 12:33:02 ID:SwClt0OwO
ホームレスをみてると自分の未来の姿の様で、恐怖感に耐えられなかったんだろな
だから燃やして消してしまいたかった安易な方法で自分の未来は変わらんのに

207 名前:名無しさん@八周年 投稿日:2007/08/06(月) 12:33:33 ID:wk+a/vF70
自分らが社会のゴミである事に薄々気づいてホームレスに投影してしまったんだろう。

痛いニュース(ノ∀`) : 「ホームレスはゴミ。犬猫同様、死んでいい」 少年5人、公園で寝ていた男性に火をつける - ライブドアブログ

彼らのストレスのはけ口は、なぜホームレスだったのだろうか。冒頭の記事によると主犯の少年は以前から猫などに虐待を行っていたとある。彼らのストレスの原因は社会、つまり人間関係であると推測されるから最も効果な攻撃対象は、日常的に接している恐らくは目上の人達であろう。しかし、ストレスとなるのはストレスなるような出来事があっても逆らえない状況があるからであり、だからこそ、その人間関係はストレスの発散先にはなり得ない。だから、自分たちのコントロールできる範囲内で、日頃、自分たちが受けているのと同じかそれ以上の苦しみを相手に与えることで、自分たちの力を確かめると同時に(脳内で)仕返した気分に浸ることで、自らの脆弱な自尊心を保つことが可能となる。まあ、最低だと思う。
誰でもむしゃくしゃしてモノに八つ当たりしたことぐらいはあると思うが、モノでは満足できない人は生き物を虐待するらしい。たぶん、より価値(能力)の高い存在を破壊、虐待することで自分がより強い存在あるという実感を持てるのではないかと思う。そして、この人の世で最も価値が高いのは人であるから、彼らの攻撃対象の行き着く先が「人」になるのは必然とも思える。ただ、誰彼構わず人を攻撃しては警察に捕まるので、警察に捕まらない存在、つまりホームレスがターゲットになる。
ホームレスというのは虐待しても警察には捕まらないらしい。今回の事件も、少年達がホームレスを襲撃しても事件にはならず報道もされず、ベンチで寝ていた男性をホームレスと間違って火を付けてしまったことから警察に捕まってしまった。警察がどう言うかはともかく、少年達はそう思っているだろうし、状況もそうなっているように見える。

【消火器で襲撃を受けた男性】
「警察には何回も言ったけど、『(自分たちが)住んだらアカンとこ住んでるから、ちょっとできません』と言われて・・・」

http://webnews.asahi.co.jp/you/special/2007/u20070405.html

別のホームレス襲撃事件ではホームレスが警察に助けを求めても拒否されているらしい。

警察法(けいさつほう、昭和29年6月8日法律第162号)は、「個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し、且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めること」(第1条)を目的とする日本の法律である。

警察法 - Wikipedia

日本は法治国家で警察法には「個人の権利と自由を保護」「公共の安全と秩序を維持」と書いてあるのだが現場の警察は法律を知らないのかも知れない。もしくは、ホームレスは法律にある「個人」には該当しないのだろうか。

話を少年達に戻す。この少年達によるホームレス襲撃のようにある集団のストレスを他の集団へ置き換えることは昔から行われていた。スケープゴートである。

スケープゴートが犠牲となるのは、コミュニティが、自然災害や経済的混乱などのエントロピーの増大に直面した時である。社会不安がコミュニティに広がり、コミュニティが無秩序や内乱の危機に瀕する時、誰かがエイリアンにエントロピー増大の責任を負わせ、血祭りにする。その人物に本当に責任があるかどうかはどうでもよい。コミュニティのすべてのメンバーが、一体となって生贄を屠れば、その一体性がコミュニティの統一性を回復する。

nagaitosiya.com

(強調は引用者)

これをそのまま今回の事件に当てはめれば、

  • 少年グループは無秩序もしくは内乱の危機に瀕していた
  • ホームレスが生け贄にされた

だろうか。
推測だが、動物虐待は主犯格少年の趣味であって他の少年は引いていたのではないだろうか。それでリーダーであった主犯格少年は次の「遊び」を提案する必要があり、それでホームレス襲撃を始めたのではないかと思う。


このスケープゴートの話が他人事に思えないのはより身近なところで、より大規模で巧妙に同じ様なことが行われているように思えるから。

典型的なケースでは、権力を持った多数派の中心が権力のない少数派の周縁をスケープゴートにする。他方、通常の社会では、少数派が多数派を搾取している。このずれを説明するためには、中心を事実上の支配階級である中核と事実上の被支配中間階級である半周縁(半中核)に分類して分析する必要がある。支配階級は、被支配階級の団結を恐れている。だから、「分割して統治せよ divide et impera」の原則に基づいて、支配階級は、被支配階級を多数派の中間階級と少数派の周縁階級に分割し、後者をスケープゴートとして迫害することにより、前者に「自分たちは、多数派で、現体制から恩恵を受けている」という幻想を抱かせ、支配階級と我々意識を共有する。インドのパーリアや日本の被差別部落は、スケープゴート階級の典型である。

nagaitosiya.com

(強調は引用者)

引用の例では、スケープゴートとして被差別部落が書かれているが、何も多数派より力が弱くなければスケープゴートになれないわけではない。エロティズムでは「美が大きければ大きいほど、汚す行為も深いものになってゆく。」そうだが、スケープゴートも同じ様なことが言えそうな気がする。
何のことかといえば、マスコミ(マスメディア)である。最近のいわゆる情報番組というテレビ番組は、川に落ちた犬は棒で叩けとばかりに何か企業で問題が起こるとその企業が不利なる様な話があれば10年前の話であってもさも最近起こったことのように連日報道する。また、そのテレビ局の利害関係がある企業の不祥事は全面的にバックアップする。まるで、現代のスケープゴート探しを日常的にやっているようにさえ見える。私は未だにホリエモンや村上ファンドの村上氏がどういう法律に違反したのか分からないが、彼らもスケープゴートにされたとしか思えない。
大企業の社長や大金を手にした成功者が、謝罪会見を行ったり犯罪者扱いされたりするのは人によっては楽しい見せ物なのかも知れない。しかし、これではホームレスを襲撃する少年達とやっていることに大差ない。いや、社会に役立つ人を引きづり下ろしているという意味でより悪質だと言える。