地球人 外山恒一

以前、東京都議選に出馬して話題になった外山恒一氏が今後はアメリカ大統領選に立候補を表明している。「何を馬鹿なことを」と思わずに動画を観て欲しい。

外山氏は世界中で好き勝手に口を出し手を出しているアメリカの状況から、世界はアメリカだと主張する。"国"と思われているのは実は単なるアメリカの州にすぎないと言う。自分は51番目の州である"日本"から大統領に立候補しようとしたが、60億人のうち参政権があるのは2億人以下ということを知り、人々に棄権することを呼びかける。そして、棄権票は自分の得票だと主張し、当選確実だと言う。

彼はどういう立ち位置で誰に対し何を語っているのだろうか。彼の言っているアメリカを「世界政府」に置き換えて、改めて彼の主張を聞いてみて欲しい。世界には一つの政府しかなく、重要な事柄はその政府が決めている。各自治体は政府の方針には逆らえない。そして世界には60億人以上の人が住んでいるのに、民主主義を表明する世界政府は特定の地域に住む2億人未満の人々にしか選挙権を与えない。彼はこの理不尽な世の中の仕組みが間違っていると、一人の個人の立場で、全世界の人々に主張する。

歴史上の人物で彼と同じようなこと言った人に、思い当たる人がいる。19世紀の日本の思想家である吉田松陰は、幕府や藩に分かれて対立する当時の日本において「天下は一人の天下」と主張した。天皇の下に万民は平等になるとし、幕府(ひいては藩)の権威を否定した。松陰は幕府に処刑されてしまうが、その思想を受け継いだ人々の手により明治維新が行われる。幕府や藩の利害や身分の違いを超えて、万民は平等であるという考え方は、まさに「日本人」と原型と言えると思う。

一方、外山氏は現在の国家は地域の名称にすぎないと言っているように思う。フラット化、グローバル化が進み、多国籍企業が溢れるこの現代社会において、それぞれの国家にどれほどの意味が、自由があるのか。いっそのこと、世界中の人々が選挙に参加できる一つの政府を作った方が自然なのではないか。彼はYouTubeを使うことで、何の権力も持たない一個人が世界中の人々にメッセージを伝えることが可能なこと、個人が世界を舞台に政治活動が行えることを実践して見せた。一人の人間が国家も民族も性別の違いも関係なく、世界の理不尽を世界中の人々に直接問いかける。この姿こそまさに「地球人」と呼べるのではないだろうかと思う。