日本語が分からなくなってきた

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

名著!「日本人の英語」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいるの記事を読んで、早速、本を購入。まだ最初の方だけしか読んでないが、とても面白い。文章もとてもうまく、読んでいて飽きさせないし、P.16の「普通の英語の論理的プロセスでは〜」のように英語的な感覚を教えてくれる。学校の授業の文法解析で拒絶反応を起こしまくっていた自分としてはとても得難い本のような気がする。

で、P.13で次の英文について解説しているのだが、その解説を読んでいるうちに日本語が分からなくなってきた。

He applied himself to a second glass of the old Madeira

訳は、彼は古いマデイラ酒の二杯目をかたむけた。
この英文のa glassは「グラス」の意味になるし、もし別の文中でaのないglassが使われたのであれば材質としての「硝子(ガラス)」の意味になる。また、glassの複数形glassesは「眼鏡」、sunglassesは「サングラス」、glass fiberは「グラスファイバー、硝子繊維」の意味になる。

英語は冠詞の有無で単語の意味が変わるが、日本語にはそういう機能がない。だからglassのような単語を外来語としてそのまま輸入すると、まったく異なる意味を同じ単語が持っていることになるので、日本語の中では意味を区別できない。だから「グラス」「ガラス」のように言い換えることによって、意味を区別しているように見える。(広辞苑によると「硝子」の方はオランダ語glasからきているらしい。)

それにしても、"グラス"が「硝子容器」で、サン"グラス"が「色眼鏡」、"グラス"ファイバーが「硝子繊維」なのだとしたら、"グラス"の意味とはいったい何なのだろうか。"グラス"と"ガラス"は何がどう違うのだろうか。"グラス"は「硝子製の」という意味がありそうな使われ方をしているのに、すでに「ガラス」という言葉が存在するので置き変われない。例えば、"窓ガラス"とは言っても、"窓グラス"とは絶対に言わない。だからといって、"グラス"は日本語に定着しているので、"グラス"を無くすこともできない。こんなことを考えていたら、なんとも気持ち悪くなってきた。

こんな日本語的思考をベースに英語を話そうとするから、本の著者が言うように奇怪な英文ができあがるのかもしれない。

追記(2008/09/20)

よく考えたら、"ステンドグラス"という言葉もある。"窓グラス"はNGで、"ステンドグラス"はありなのか。やっぱり訳が分からない。日本語を学んでいる外国人はこういう言葉をどう思っているんだろうか。