「○○らしい○○」というレトリック

WY2Kさん経由で知ったブログが面白かったので、少し書いてみたいと思う。

ゲーム雑誌などを見ているとたまに「ゲームらしいゲーム」という言葉を見かけることがあります。

日記のようなコラムのようなもの

この「ゲームらしいゲーム」という言葉の意味を突き詰めて考えてみると、「あなたは『ゲーム』という言葉に一番ふさわしい『ゲーム』は何だと思いますか?」という自問自答をしていることに気づく。そもそも、ゲームという言葉を繰り返しているだけに過ぎないのだから、この言葉に自体に「ゲーム」以上の意味などあるはずがなく、読者の「ゲーム」という言葉に対するステレオタイプを引き出すフレーズになっている。また、逆に著者が読者に対して「ゲーム」と言葉のステレオタイプを植え付けたり誘導したりもできる。

たとえば、コーエー代表取締役社長松原健二氏の以下のコメントは、彼が考えている「ゲームらしいゲーム」の認識を無意識のうちに読者にも認識させる効果がある。

松原氏: まずは「戦国無双 KATANA」、「ジーワンジョッキー Wii」、「オプーナ」を発売しました。今後目指すものはWiiの特徴を活かしたゲーム性の高いタイトルです。「Wiiスポーツ」や、「はじめての Wii」みたいなパーティーゲーム任天堂さんが揃えていらっしゃるので、それ以外の分野ですよね。Wiiというプラットフォームにおいては、新しいユーザーさんの層を意識しつつ、ある程度ゲームらしいゲームが中心になってくるのではないでしょうか。

(強調は引用者による)

http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20080312/koei_02.htm

この文書を式に置き換えてみると、次のようになる。

戦国無双KATANA、ジーワンジョッキーWiiオプーナ = 「ゲームらしいゲーム」

パーティーゲーム ≠ 「ゲームらしいゲーム」

上記で書いたが、「ゲームらしいゲーム」という言葉にゲーム以上の意味は何も含まれていない。もしゲーム以上の意味が感じられるのであれば、著者が文脈として意味を加えたか、読者自身の頭の中から意味が湧いてきたことになる。また、こういう文書を繰り返し読むことによって、「ゲームらしいゲーム」のイメージが固まっていく。


また、ゲームに限らず別の言い方もいくらでもできる。読者にそれと気づかせずに言葉が持つステレオタイプのイメージを自然な形で引き出せるので便利なのだろう。

「子どもらしい子ども」。これは奇妙な言葉です。というのは子どもは子どもであることだけでもう子どもであるに違いないのですから、「らしい」も「らしくない」も成立するはずはありません。けれど「男らしい男」や「女らしい女」などの言葉が社会(文化)がイメージしたり求めたりする「男」や「女」の存在によって流通してしまうのと同じく、「子どもらしい子ども」という言葉も成立しています。つまり、大人がイメージしたり求めたりする「子ども」らしい「子ども」です。

エーミールと探偵たち ー 徳間書店子どもの本だより2000/04

自分はこの本は読んだことはないが、検索で見つかったこの説明が「○○らしい○○」について分かりやすくまとまっていたので、引用してみた。



ここまでは色々とヒトゴトのように書いてきたが、自分のブログを検索してみると、「ゲームらしいゲーム」が1つ見つかってしまった。

また、Wiiは本体が先月発売されたばかりでソフトの種類も少なくゲームらしいゲームばかりだが、ヘルスパックという体を鍛える製品を開発中とのこと。

(強調は引用者による)

任天堂 岩田社長の「ゲーム人口の拡大」の意味 - うつせみ日記 (Utsusemi Nikki)

約2年前の記事だが、昔から同じ様なことばかり書いているなとつくづく思う。ここでは「ゲームらしいゲーム」をWiiには実用ソフトがないという意味で使っている。本来であれば、「実用ソフトはまだない」とか「従来型のゲーム」という風に書くべきだったのだろうが、勢いでこのように書いてしまったらしい。今後は言葉の使い方には気をつけようと思う。