日本のワクチン行政

2009-08-05を読んで、以前に観たワールドビジネスサテライトWBS)の「ワクチン後進国・日本の実態」という特集を思い出しました。これは主にHibワクチンヒブワクチン)に焦点を当てて日本のワクチン行政を紹介した特集です。
このHibワクチンは日本が2007年に承認するまで、アジアで承認されていない国は北朝鮮と日本の2カ国だけだったそうです。まさに冒頭のSF記事が現実に起こっているように思えます。なお米国でこのワクチンが承認されたのは20年以上前の1987年だそうです。

Hibによる感染症を未然に防ぐHibワクチンは、世界ではすでに100カ国以上で接種されており、14年間に約1億5000万回接種されている。日本ではHibワクチンの認可が遅れ、2008年12月に任意接種(有料)が一般的に可能となった。

インフルエンザ菌 - Wikipedia

このWBSの中で、日赤医療センター 小児科 薗部 友良 顧問は、日本のワクチン承認が遅いは「訴訟」が原因だと主張しています。「ワクチンを使って何かが起こればみんなそういう現場の人が悪いとなれば、もう新しいワクチンを認可したくないのは当たり前」と言っています。

薗部さんのコメントは上記リンク先のダイジェスト版という動画の8:34以降です。以下に引用します。

いろんな不幸なことが重なって今から約20年前からはもうなんにもしなくなっちゃったわけです。
(インタビュアー:なぜですか?)
それは訴訟事件が起こって・・・
MMR訴訟の説明「06年 大阪高裁が国の過失責任を認める」
ワクチンを使って何かが起こればみんなそういう現場の人が悪いとなれば
もう新しいワクチンを認可したくないのは当たり前で
新しいワクチンを全然認可しない間に
世界中では新しい良いワクチンがどんどんできて
そいで、どんどん使って、えー、ワクチンで防げる病気を大幅に減らしていったわけですね。

MMR訴訟とは、MMRワクチンによって2人の児童が死亡、1人が重度の後遺症を発症したとして、その家族と本人が、製薬会社と国を相手に起こした訴訟です。支援団体のサイトには次のように書かれています。

1989年4月導入直後から副作用が多発したMMRワクチン。さして必要性のないこのワクチンの事故に対して、迅速かつ適切な見直しがなされず、有効期限の切れたワクチンが使用されるなどの問題を含みながら、93年4月まで強行された結果、接種後に死亡や重篤な後遺症をはじめ、主に無菌性髄膜炎発症(約1,800人)など2,000人に近い数の子供たちが被害をうけました。厚生省(当時)が即座に接種を見合わせれば、少なくとも死亡事例の多くは防げたといえます

MMR(新3種混合ワクチン)大阪訴訟トップページ

※強調は「うつせみ日記」による。

この「MMR被害児を救援する会」は、副作用が起きたことを批判しているのではなく、副作用が多発している状況を4年間も放置して、被害を拡大させたことを非難してしているように見えます。

また、製薬会社(阪大微研)や国の過失を認めた判決でも、副作用が発生したことについては過失とは言っていません。

【阪大微研の過失】
製造承認を受けた製造方法と異なる方法で生ワクチンを製造し、副作用の発生率に違いが生じている場合、他に原因が認められない限り、副作用の発生と製造方法の変更との間に因果関係を認めることができる。

【国の過失】
国は、ワクチンの製造者が、少なくとも国が承認を与えた製造方法を順守して製造するよう監督する義務があり、国は監督責任を負う。 ワクチン製造者である阪大微研の製造現場において、承認を受けた製造方法を順守しなければならないとの意識が徹底されていたとは到底認められず、また、阪大微研本部においても、必ずしもそのような意識が徹底されていなかったと認められ、ワクチン製造時において、製造者らの間で薬事法の規制が十分に周知徹底されていなかったと推認できる。国による阪大微研に対する指導監督は、不十分だったと認めざるを得ず、国については前記指導監督義務に違反したと認められる。

http://www.47news.jp/CN/200303/CN2003031301000348.html


行政に求められているのは、国民や社会を守るための適切で効率的なワクチン摂取への取り組みです。的外れな過去の訴訟を理由に、不適切で非効率なワクチン接種/制限を強要する行政は早く見直して欲しいと思います。
以下のエントリでは米国のワクチン接種を例に日本との違いを説明しています。


日本のマスメディアは、「被害者家族が起こした訴訟により日本のワクチン行政はおかしくなった」のように見える的外れな特集を組んで欲しくないです。