「観光立国日本」という可能性

はじめに

8月30日の衆議院選挙に向けて各党から公開されたマニュフェストをざっと読んでみましたが、当たり障りのないことばかりが書かれていて、結局、どの政党を支持して良いのか分かりませんでした。少し考えてみたのですが、今後、日本をどうしていきたいのかが書かれていないことが、マニフェストが当たり障りのない内容になっている原因だと思いました。今後世界はよりフラット化し競争が激化していくと考えられます。そういった世界で、日本の持つ強みを生かすにはどうするのが一番良いのかを考えてみました。

マニフェストについて

各政党のマニュフェストはどれも似たり寄ったりという感じがします。もちろん、各党それぞれで特色はあります。自民党は失業させない、民主党は税金の使途透明化や農山漁村の戸別所得補償、取り調べの可視化による冤罪防止、新党日本ベーシックインカム社民党は18歳選挙権など。また、複数の党で国会議員数削減や給与削減などを掲げていますが、他の国と比べて国会議員数が少ない日本がなぜ議員数を減らすのが理由が分からなかったりします。あと、改革クラブはちょっと酷いと思いました。たとえば「国民生活最優先の量より質の予算編成を行います。」といった文言が並べられているだけで具体性に欠け、やる気が見られません。また、面白かったのは大川隆法さんが総裁を務める幸福実現党で「新・日本国 憲法 試案」が掲載されており、「第一条 国民は、和を以って尊しとなし〜」で始まります。マニフェストに「2060年 月や火星での基地建設構想が本格化する。」や「ユーラシア大陸を一周する リニア鉄道を構想し、実現します。」と書かれているのは夢があって楽しいです。ただ「大統領制を導入 」には結構賛成だったりします。


100年に一度の不況と景気対策

でも、100年に一度の不況とか世界不況と言われている今、多くの人にとっての関心事は経済対策や雇用対策なのではないでしょうか。ところが、各党それぞれ「経済・雇用」という項目はありますが、具体性・実現性の面では疑問のあるものばかりでした。ただ、それも考えてみれば当たり前の話です。不況を解決できる方法が分かっているのであればすでに実施されていているはずだからです。
1929年の世界恐慌(これも米国発)では日本は統制政策で重点産業を決めてカルテルを推進し産業の効率化を行いました。結果、多くの企業が倒産し、失業率も増加したようです。大臣がまだ倒産していない銀行を倒産したと発言ミスしたばかりに、取り付け騒ぎとなり本当に銀行は倒産し巻き添えを食らってまた企業が倒産しました。一方世界では各国が自国経済を守るためブロック化を行ったため、植民地や資源の乏しいドイツや日本は不利になり、不況からの脱出のため領土拡大を模索し、他の国との対立を深めていきました。


今思うのは政府に経済対策はもともと無理なのではないか、と言うことです。不況は、物が売れない→業績悪化→減給/失業→物が買えないの悪循環ですが、この悪循環を断ち切るには「売れるもの」を作るしかありません。よく経済政策の名の下に公共事業を増やしたりしますが、やっていることは有料の釣り堀で放流された魚を釣って、「釣れた釣れた」と喜んでいるに過ぎないように見えます。経済活動を活発化させるため、昔の人は「新大陸発見」して植民地を作ることで新しい資源を入手したり、「企業」という仕組みを作ったり大量生産によって生産性を上げたりしてきました。では、現代は何ができるでしょうか。

「売れるもの」を作る方法

売れるものを作るにはどうしたら良いだろうと考えながら、ググっていたら面白い記事を見つけました。シリコンバレーについての記事です。

今では米国を代表する企業(Apple、HP、OracleAdobeIntelAMDGoogleCisco等々)を生んだシリコンバレーは有名ですが、その誕生には複数の人の熱意と様々な偶然が重なっていたことに驚きました。記事を読む限り米国政府の産業振興策とはまったく無縁だったようです。この記事の中で特に印象に残ったのは「思いを持った人間がいなければ偶然には起こらない。」という言葉でした。思いを持った人や技術を持った人とお金が結びつくことによって、「売れるもの」が発明され、ベンチャー企業が巨大な企業への成長するわけです。これはシリコンバレーに限った話ではありませんが、その効率と規模が他とはまったく違っていたのだと思います。


ところで「情報大航海プロジェクト」というのを知っていますか。検索技術を独占する米国企業(GoogleYahoo!Microsoft)に対抗するため、経済産業省が産学を巻き込んで数十億の予算をかけて2006年に設立したプロジェクトです。

検索エンジンといって、真っ先に思い浮かぶのはどんな企業だろう。検索の王者であるGoogleや対抗するYahoo!Microsoftなど、大手はほとんど米国企業であるのが現状だ。ここに危機感を抱いた経済産業省が、産学を巻き込んだ一大プロジェクトを始動させる。

「Google独占にはさせない」--国産検索エンジン開発へ、産学官が一致団結 - CNET Japan

このプロジェクトの最終報告会が2年前の平成19年7月7日に行われ、議事録によると「情報大航海の船出」が済んでしまったようですが、今でもGoogleYahoo!は健在で、日本発の検索技術が普及しているようには見えません。

また、「総合保養地域整備法」という法律を聞いたことがあるでしょうか。「リゾート法」や「第三セクター方式」の方がなじみがあるかも知れません。各地の自治体のリゾート施設の建設を支援する法律です。この法律によって全国に多くのテーマパークや娯楽施設が建設され、そして、倒産しました。

長崎の歴史とオランダの紹介という独自のテーマを掲げてテーマパークの先駆け的存在であった長崎オランダ村の閉鎖と再開の失敗による倒産は象徴的なものであるが、新潟ロシア村、柏崎トルコ文化村、富士ガリバー王国の3テーマパークの設立に参画し融資を行って破綻した新潟中央銀行や、第三セクター方式により設立した石炭の歴史村や夕張リゾートの開発や運営の失敗を伴って財政再建団体となった北海道夕張市などテーマパーク事業関係者には痛手を受けたものは少なくない。

テーマパーク - Wikipedia

情報大航海プロジェクト」と「総合保養地域整備法」はまったく分野は違いますが、国が率先し、多額の税金を投入している点では共通しています。次は成功している例を紹介したいと思います。


一つ目は日本一有名な動物園とも言われる旭山動物園です。以前にテレビでドラマ化もされました。一時は入園者の減少のため閉園の危機に直面しましたが、職員の創意と工夫、熱意で見事に復活しました。昭和42年からの入園者数の推移が公開されていますが、平成8年度に26万人まで減少しましたが、平成18年度には300万人を超えるまでになっています。テーマパーク建設ラッシュの時代に、けっして交通の便がよいとは言えない北国の動物園に日本全国はもとより海外からも観光客が訪れるようになるとは誰が予想できたでしょうか。


二つ目はらき☆すた聖地巡礼をきっかけにした鷲宮町商工会の取り組みです。鷲宮神社はアニメ化された4コマ漫画「らき☆すた」の舞台だったことで、ファンが訪れたことをきっかけに、鷲宮町商工会が積極的にファンをサポートすることで更に人気にとなりました。

こちらのサイトによると、鷲宮神社の参拝者数は2005年以降、毎年増え続けているようです。参拝者数の推移:6.5万人(2005年)→9万人(2006年)→13万人(2007年)→30万人(2008年)→42万人(2009年)。2007年9月にアニメ放送は終了しているのに参拝者数が減るどころか増えているのは意外です。推測になりますが、鷲宮町商工会のウェブサイトを見ると、「萌フェスIN鷲宮2009」というイベントを実施しているように、今は単に「らき☆すた」の聖地に限定せず、「萌え」をキーワードに幅広くファンを集めているようです。


三つ目はポケモンセンターです。私がポケモンという言葉を初めて聞いたのはアニメ放送後なのでゲームが当初、注目されていなかったという話は意外でした。

開発が長引く間に、バブル経済がはじけ、ゲーム業界も厳しい経営環境を迎えた。ポケモンゲームも業界では当初、注目されなかったが、ポケモンは子供たちの間で一気に評判が広がり、消費者が消費者を呼ぶ好循環を生んだ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090810/biz0908102035017-n1.htm

Wikipediaにより詳しい経緯が書かれていますが、初回出荷本数は23万本強程度だったそうです。それが最終的に世界全体で1000万本以上売れたわけですから驚きです。そして、ゲームに留まらず、アニメや映画、キャラクターグッズと多方面に展開され、ポケモンセンターに繋がるわけです。サンケイの記事にも開発が長引いたと書かれていますが、Wikipediaによると開発開始から発売まで6年かかったと書かれています。ガルモの時は岩田社長は「たまには退くという選択肢もあるんだからね」と言って開発期間の延長を許可したそうですが、任天堂は何か新しいものができそうなときは辛抱強く待つ文化を持っているようです。それだけの蓄えがあるからこそできることなんでしょうけど。


成功した観光地/観光施設の例を3つ並べてみましたが、どれもそれほど特別とは言えない素材やアイデアを想いを持った人たちが時間をかけて大きく育てていったという点で共通しています。旭山動物園は立地条件では不利な普通の動物園でしたし、鷲宮神社は関東最古というだけの神社、ポケモンは据置機に注目が集まり始めた頃に発売されたゲームボーイ向けの知名度のないゲームソフトでした。しかし、それぞれに関係する人たちの努力と周りの人たちの金銭的/人的な支援も重なって、当初は想像もできなかったほど大きく育っていくことになります。これらの話は、冒頭のシリコンバレーの「思いを持った人間がいなければ偶然には起こらない。」という話にも繋がると思います。多額の税金を使った野心的な国家プロジェクトや「総合保養地域整備法」が失敗した理由はいろいろ考えられますが、より根本的な理由は「想いを持った人間」がいなかったためではないかと思います。


Only Japan and Japan only!

章のタイトルはこのエントリからの引用です。
これといった資源のない国である日本は、原材料を輸入して加工して付加価値を付けて輸出することで利益を得てきましたが、国内はもとより世界でもモノ余りの状況が見えてきました。単にモノを作っても売れず、モノを作る側の競争相手増え続けています。

小飼 目に見える世界から、目に見える制度的な貧困がなくなったころでしょうね。2035年と言っていますよ、ムハマド・ユヌスさんは。

セブン&アイの総合通販サイト|オムニ7

2035年には目に見える貧困はなくなるという説があります。貧困がなくなるのは一見、良いことのように思えますが、彼らは良い消費者になってくれるのでしょうか。それても新しいライバルになるのでしょうか。資本主義では勝ち組がより有利になり、更に多くの利益を得ることができます。日本の企業で勝ち組に入れるのは何社あるのかとても悲観的な気がします。

しかし、「観光」という視点で改めて世界を見廻した時、日本という国は世界でも類を見ないほどユニークで価値を持った国であるように思います。

  • 毎年雪祭りが行われる雪国・北海道と、南国の島国・沖縄
  • 四季折々の情景を見せる豊かな自然
  • 1000年以上の伝統文化とハイテクの共存
  • 安定した治安
  • ミシュランも認めた料理の数々
  • 世界中で人気のサブカルチャー

観光省がYokoso Japanというキャンペーンを行っていて、YouTubeで動画を公開していますが、多くの好意的なコメントが付けられています。

海外オタク向けのページもあり、そこから埼玉県の海外オタク向けページにリンクされています。ただ、もう少し情報を充実して欲しい感じです。たとえば、世界有数の経済誌であるフォーブス(Forbes)の記事で"Best Japan Blog"に選ばれたDannyさん鷲宮町に招待して記事を書いて紹介してもらうのが良いと思うのですがどうでしょうか。


また、ミシュランが日本の旅行ガイドを今年の9月に米国で発売するそうです。ネットで掲載されている観光地の一覧を見ることができるのですが、350カ所を超える施設を掲載だそうで、かなりの数です。

でも、掲載地リストによると東京ディズニーランドポケモンセンター旭山動物園は星どころか掲載すらされていませんでした。東京ディズニーランドポケモンセンターは世界最大のオンライン旅行クチコミサイト「TripAdvisor」の上位三位に入っているんですが、ミシュランの方たちとは嗜好が合わなかったのかも知れません。また、上野動物園があるのに旭山動物園がない理由が分かりません。

また、海外のオタクはあまりコンテンツにお金は払いたがらないようですが、グッズを買うことにはあまり抵抗がないようです。

ぜひたくさんのグッズを買ってもらい、日本に遊びに来てもらい、できればリピーターになって貰いたいものです。そういう意味で世界コスプレコンテストはとても良い企画だと思います。それにしても、日本の出版社はなぜ漫画やアニメのテーマパークを作らないのでしょうか。ポケモンセンターUSJジブリの森(海外向けサイトもあるし、海外から予約も可能。)はあるのに、「ドラゴンボールランド」や「ナルトランド」は聞いたことがありません。日本の出版社も任天堂を見習ってもっと海外向けに商売をした方が良いと思います。


某自動車会社のキャッチフレーズに「モノより思い出」というのがありましたが、世界がより豊かになっていく中でその認識も広まっていくと考えられます。つまり「モノ」よりも無形の「価値」に対するニーズが高まり、また、海外旅行が可能な富裕者層の人口も増えていくでしょう。そして、ここ日本には日本にしかない価値の高いモノがたくさんあり、磨きをかけることで更に輝きを増すことができると思います。もし「観光」を今後の日本の目標に設定できれば、今までは想像できなかったような新しい日本の将来像が描ける気がします。

これは、「皆が納得できる目標」さえあれば、各自がそれぞれのやり方と、それぞれの思惑で「それ」に向かって動けば、「求心力」がなくとも Common Wealth は達成できるという証拠になりやしないだろうか。むしろ強力なリーダーと綿密なグランド・デザインこそが、 Common Wealth の創設の邪魔になりはしないか。

Common Wealth - 書評 - 地球全体を幸福にする経済学

誤解を恐れずに言うと、私は「世界平和」という言葉が嫌いです。理由は何の根拠もない「キレイごと」だからです。ついこの前も「悪の枢軸」「大量破壊兵器」といった濡れ衣をある国に着せて多くの悲劇を生みました。ただ、もし、国の目標として「観光」が設定されていれば、話は変わってきます。「戦争」は攻撃をする側、受ける側の両方にとって莫大な費用と時間を消費させます。それはすなわち観光客もしくは観光客予備軍の減少を意味するため日本の国益に反します。世界から貧困がなくなり各国が豊かになることは将来の観光客増加に結びつくため、日本の国益に適うことになります。
いくつかの党のマニフェストには食糧自給率を上げると書かれていましたが、それは農家保護のための方便にしか思えません。もし、海外から輸入が全面的にストップするような状況になれば例え食糧自給率100%でも多くの人は生きていけないでしょう。そんな状況になってはならないですし、その時の備えをするのは各家庭に核シェルターを作るのと同じことで現実的ではありません。もし国の目標を「観光」すれば、農家の目標も明確になります。量よりも、味と品質に重点が置かれるようになります。

上記の記事を読むと日本の農作物が海外でも評価が高く、メロンは年々輸出量が伸びていることが分かります。

英語と日本語の2ヶ国語版が発行される「ミシュランガイド東京2008」には、他のガイドブックにはない特徴があります。掲載されているレストランには、すべて星がついているのです。

http://www.michelin.co.jp/media_center/news/corporate/071119.html

また、ミシュランガイドや上記の海外コメントを読んでも、日本の食品やレストランの評価は高いように見えます。

別に今の産業を潰す必要はありませんが、寿命を迎えている企業を税金を使って無理矢理延命させることには反対です。既に失敗している通り、政府が税金を使って日本版Googleを作るようなことは、もうやめるべきです。政府には経済を活性化させることはできない(逆は可能でしょうけど)のだから、それは民間を信じてまかせて、政府にしかできないことをすべきだと思います。具体的にはセーフティーネットや教育、医療などです。


行政に期待すること

今回の選挙で各政党から提示されたマニフェストは個々の課題や問題に場当たり的に解決案を提示するだけで、将来の日本をどうしていきたいかというビジョンは語られていませんでした。また、提示された解決策も予算を見積もるだけというものがほとんどでした。民主党マニフェストの中で「政治とは、政策や予算の優先順位を決めることです。」と言っています。しかし、私は政治とは国民の利害を調整して適切で公平なルールを決めることだと思っています。


マニフェストの話に戻りますが、行政には「あれもやる/これもやる」ではなく「民間ではできないこと」に取り組んで欲しいと思っています。

具体的にはこちらYouTube動画の20秒付近の行為です。帽子を被った男性がプラカードを持った人にぶつかってきたのを手で押さえていますが、これが「公務執行妨害」にあたるそうで現行犯逮捕されています。私にはこのプラカードを持った人が逮捕されるような事をしたようには見えません。そして、こういったことは民間人ではどうしようもありません。

  • 密室尋問の廃止

よくテレビのニュースなどで裁判になってから自白した容疑者が供述を翻して無罪を主張するという話を聞きます。また、米軍兵士が事件を起こした時に日本側への引き渡しを拒否する話も聞きます。これらの原因は密室尋問だと言われていますし、冤罪の温床にもなっています。やはりこれも民間人にはどうすることもできません。
民主党マニフェストには冤罪の温床となっている密室尋問をなくすと書かれていました。

  • ワクチン行政

人類はまだ病を克服できていませんし、命に関わる病気は誰にとっても恐ろしいものです。今できる最善の方法は病気にかかる前に予防することです。そのための技術としてワクチンという方法が確立されていますが、日本では100カ国以上の国で承認されているワクチンが承認されておらず、米国の承認が20年の経ってようやく承認されたという状況がありました(以前に書いたエントリ)。これもまた民間人にはどうすることもできません。

冒頭のシリコンバレーの記事の中で「私は2度失敗しているので大丈夫だ」のようなコメントがあり、トライ&エラーを推奨する文化があることが紹介されていました。一方日本では失敗に対して高いペナルティーを課しています。任天堂の岩田社長がHAL研の社長になった時、HAL研の負債もそのまま受け継ぎました。その時のことについての岩田社長のコメントが以下です。

はい。日本の社会には
「銀行がお金を貸したときは
 経営者が個人で保証しなさい」
という仕組みがあります。

大企業の社長には
そういうことは
要求されていないみたいですけど、
中小の企業の会社では、要するに
「会社が倒産したら、
 個人が一生かかってつぐなうんだ」
という約束をさせるならわしがあるんです。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 社長に学べ!

もしこの時、不運が重なりHAL研が倒産していたら、今の任天堂の成功はなかったかもしれません。今の日本の仕組みは新しい試みを妨げるようになっており、見直しが必要だと思っています。これも民間企業にはどうすることもできません。

今後、日本の主要産業がITから別の産業へ変わっていく可能性があります。仮にそうなった場合、市場が縮小する企業は社員を減らし、市場が拡大する企業は社員を増やしたいと考える訳ですが、今の日本では社員を減らすことができないため、市場の変化に追随することができず、ある産業では人余りになり別の産業では人不足になります。派遣社員制度はスキルを蓄積できないため、解決策になりません。結果、企業は正規社員を極力減らしてサービス残業を課し、不足分は非正規社員で対応しています。
日本を含む30カ国が加盟している経済協力開発機構(OECD)は日本に対して「正規労働者の雇用保護を削減」するように勧告していますが、各政党のマニフェストには保護の削減どころか逆に雇用保護強化と書かれています。

  • 満員電車の解消

これこそ行政の仕事だと思うのですが、対策する気はないのでしょうか。地上、地下に空きがないなら、モノレールを作るというのは素人の浅知恵でしょうか。

  • 公平な電波行政

以下のようなことはやめて欲しいと言うことです。

当初の方針では、通信・放送に関連する9本の法律をすべて廃止し、情報通信法によって通信と放送の融合したメディアの実態に即した規制体系にする方針だった。しかしテレビ局がインフラ・コンテンツの水平分離に強く反対したため、既存の局には手をつけず、新たに免許を交付する場合に限って水平分離しようというものだ。これでは通信と放送の境界は残ってしまい、テレビ局の既得権にも手はつけられない。

通信と放送の融合を恐れるテレビ局
  • ネットでの医薬品販売規制の撤廃

行政の重要な役割として適正なルールの決定が期待されていますが、「ネットでの医薬品販売規制」は理に適っていないおかしな法律です。医薬品を買う人は何らかの病気を抱えており、病気の内容によっては外出すら困難な場合があることは容易に推測できます。このルールを決めた人たちはどう考えていたのでしょうか。
【楽天市場】困ります、私たち。〜ネットで薬が買えないなんて〜
このサイトに利用者の声というページがあるのですが、そこに書かれていた82歳の方のコメントが非常に説得力がありました。

対面販売は、ある意味、店頭のみという意味にはならないとも思っています。ネットショップや通販でも、問い合わせをすればきちんと薬剤師さんの回答もいただけます。店頭での手渡し販売と、パソコンや電話での説明付きの販売とで、区別は無いように思いますが。かえって、薬剤師の資格を持っているというだけで、いい加減な人から説明を受けるより、懇切丁寧な文章(証拠に残ります)での回答の方が信頼性もあると思うのです。

http://event.rakuten.co.jp/medicine/net_signature/user_voice/
  • ばらまき行政の防止

課題や問題に対して税金を投入することが行政の役割ではありません。闇雲に税金をばらまくことはより解決どころか問題を深刻化させる可能性すらありますが、民主党マニフェストに書かれている「政治とは、政策や予算の優先順位を決めることです。」を読むと非常に心配になります。このエントリで日本は観光にもっと力を入れるべきと書きましたが、それは観光産業にもっと税金をつっこめと行っているわけではありません。
あなたの住んでいる地域はどう? レベルの差が激しい観光立国への取り組み
この記事の中で補助金目当ての市町村が紹介されていましたが、そんなところに税金を投入しても夕張の二の舞になるだけです。

行政が記者クラブを無くすことはできませんが、より開かれた形で記者会見をすることは可能です。以前、前長野県知事だった田中康夫さんがやられていたことと同じ事です。

  • ネットでの選挙活動制限の撤廃

選挙は主権者である国民の代理者を決める活動です。ポスターや「お願いします」と街中を走り回ることしかできない人たちの中から代理者を選別することは不可能にさえ思えます。ネットという新しい技術によって人選するための判断材料が増えたのに法律でそれを制限する理由が分かりません。反対している人(政党や議員など)がいるのであれば、名前を教えてください。

  • 18歳選挙権

Wikipediaによると日本や台湾を除くほとんどの国で18歳以上に選挙権を与えています。若い人の政治への参加意識や投票率が低いというニュースをたまに聞きますが、だったら尚更選挙権を与えて、政治への参加意識を持たせるべきだと思います。
社民党マニフェストに書かれています。

ホリエモンからの引用です。

せっせと働きたい人に働かせて、新しい技術を開発できるスキルをもった有能な人に資金を集中させる。そうすれば、彼らがどんどん納税してくれる。企業も労働問題からある程度開放されて法人税を沢山納めてくれるだろう。

ベーシックインカムの話 | 堀江貴文オフィシャルブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」

新党日本マニフェストにもベーシックインカムが書かれています。

  • 教育の無償化

共産党マニフェストが一番詳しいです。

日本政府は、国際人権規約に加わりながら、無償化条項を留保したままです。そういう国は今や日本、マダガスカルの2ヶ国のみです。留保を撤回し、国の姿勢を転換し、「世界一高い学費」を計画的に引き下げるようにします。

16、教育/2009年総選挙《各分野政策》 /日本共産党

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)
「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」の第十三条の2に高等教育の「無償教育の漸進的な導入」が書かれています。

  • 税金の使途明確化

建前上は税金が何に使われたかは公開されていることになっていますが、事実上は非公開というのが今の状況です。
逢坂議員HPより 国の予算・決算は非公開
民主党マニフェストで「税金の使い途をすべて明らかにする」と書かれていますが、本当に実現する目処はあるのでしょうか。

  • 死刑の廃止

人は誰でもいつか死にます。よく「人を殺したのだから死刑になって当然」とか「残された遺族の気持ちを考えろ」と言う人がいますが、「犯人」が自然や事故、病の場合でも残された遺族の悲しみは変わりません。殺人を理由に新たな殺人を生む今のルールには賛成できません。


選挙は国民の意思を示す唯一の機会と言われますが、ネットを使うことで個人が世界に向かって意見を表明できる現在、いつでも意思を示すことができ、またそれらの意思を集めて洗練化させることができれば、それはまさしく国民の意思形成、すなわち政治そのものように考えられます。今ある選挙という制度/仕組みは、仮により優れた制度/仕組みができたとすれば、自然解消していきます。まあ、本当にそんなことは起きるとは自分自身思ってませんが、可能性はあると思います。そもそも、日本の国会議員(それも総理大臣)がYouTubeを使って動画を公開し、Twitterで情報発信する未来がくるとは1年前は想像すらしていなかったのですから。

追記(2009/08/16)

id:KoshianXさんのブコメ「見出しに引きつけられたが政策全体に波及しちゃって反応しにくいな」というのは、まったくその通りで正直申し訳ない気がしているのですが、結局話をまとめきれずこうなってしまいました。
自分なりにいろいろ考えてみたのですが、どうやっても政治/経済/戦争は密接に結びついて分けられず、だからと言って自分の力量ではそれらをキレイに整理することができず、ただ、時間が過ぎていく状況だったので、考えたことをそのまま書くことしました。


id:dekainoさんのブコメ「日本をイタリア化する? 旭山動物園の話は映画化もされてるんで思い出してあげてください 津川(マキノ)雅彦が涙目」に対する返信です。
目標としているイメージに近いのは、イタリアよりもラスベガスやディズニーランドが近いです。なぜかというと、ラスベガスやディズニーランドのどちらも何もないところからそれぞれ人の思いが核になって大きく育っていった地域や施設だからです。
ラスベガス - Wikipedia
ディズニーランド - Wikipedia
ラスベガス誕生の話は「バグジー」というタイトルで映画化もされています。(私は面白かったのですが、余り一般向きの内容ではなかったです。)これらの施設は多くの人たちの支持されて作ったと言うより、中心となった人の確信に基づいて大きなリスクを覚悟して進められた様です。実際、バグジーことベンジャミン・シーゲルはラスベガスの成功を見る前に暗殺されています。やっぱりシリコンバレーもそうでしたが、これまでにない新しいモノや新しいコトを始めるには、強い思いを持った人が中心にいる必要がある気がします。
旭山動物園の映画は面白そうですね。機会があったら観てみたいと思います。