非科学的な「科学信仰」〜丸山ワクチンと脚気〜

この丸山ワクチンが本当にガンに効果があるのかは分かりませんが、脚気と状況がよく似ていると思いました。脚気ビタミンB1不足が原因で心不全や脚のしびれがおきて悪化すると死亡することもあるそうです。
日本ではビタミンB1を含まない精米された白米を食べる富裕層で患者が多く、皮肉にも近代になって庶民も白米を食べることができるようになると、一般人の脚気患者が増えたそうです。Wikipediaに書かれてた戦死者数と脚気死亡者数がかなりショックでした。

戦死者 977人
戦傷死者 293人
脚気死亡者 4,064人

戦死者 349人
負傷者 933人
脚気死亡者 2,351人

戦死者 46,423人
負傷者 153,623人
脚気死亡者 27,468人 (事故死を含む脚気患者)


戦死者の何倍もの人が脚気で亡くなっていたのです。ただ当時は脚気の原因が分からなかったため明確な予防策がありませんでした。しかし、これらの戦争前に脚気予防として成果を上げた実例がありました。

臨床主体のイギリス医学に学んだ高木は、軍艦によって脚気の発生に差があること、また患者が下士官以下の兵員や囚人に多く、士官に少ないことに気づいた。さらに調べた結果、患者数の多少は食物の違いによること、具体的にはたんぱく質と炭水化物の割合の違いによることを発見した。
(中略)
海軍の練習艦「筑波」は、その新兵食(洋食採用)で脚気予防試験をかねて品川沖から出航し、287日間の遠洋航海をおえて無事帰港した。乗組員333名のうち16名が脚気になっただけであり(脚気死亡者なし)、高木の主張が実証される結果を得た。海軍省では、「根拠に基づいた医療」を特性とするイギリス医学に依拠して兵食改革をすすめた結果、海軍の脚気発生率が1883年(明治16年)23.1%、1884年明治17年)12.7%、1885年(明治18年)以降1%未満と激減した。

日本の脚気史:Wikipedia

上記は陸軍が日清戦争で大量の脚気患者を発生させる約10年前の話です。ただ、高木兼寛のこの「発見」は日本医学界に否定されました。タンパク質では科学的に説明がつかなかったためです。ただ、理屈は分からないが「麦飯を食べると脚気が減少する」という噂は残り、その後、長い間、陸軍において白米派と麦飯派の綱引きが続けられます。しかし、残念ながら多くの場合、白米派が勝利し多くの脚気患者を生むことになります。


私が不思議でならないのは、戦時中に多数の脚気患者が発生する事実を目にしながら、なぜ何の対策もとらなかったのかということです。たしかに脚気に対する麦飯の効果は科学的には証明できていませんが、脚気患者を減少させたということもまた事実です。「事実」に対して先入観を排して仮説を立てて立証を行うのが科学的な対応だと思うのですが。
大辞林iPhone)には「科学」について次のように書かれています。

実験や観察に基づく経験的実証性と論理的推論に基づく体系的整合性をその特徴とする。

ある事象について「今の」知識で説明ができないからといって事象そのものを無視するような対応は本来の科学とは真逆のように感じます。この脚気の流行時の対応と丸山ワクチンに対応がよく似ているように思えました。


学者/科学者と呼ばれる人たちはその時点での常識では説明できないことについては、まず否定することが多いように見えます。たとえば、ムペンバ効果に対する大槻教授の見解です。

これを『ムペンバ効果』といい、いまだ物理学で未解明というものです。
NHKもオカルトか?ヤラセか?と、この読者の方はあきれておりました。

確かに実に馬鹿馬鹿ものです。

http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/72_2893.html

ある事象に対して自分の常識で判断し「馬鹿馬鹿(しい?)もの」と言い切っています。これまで科学は「常識」を疑うことで新しい発見をし、発展してきたのではないでしょうか。今ある常識の多くはかつては非常識でした。地球は丸い?地球は太陽の周りを回っている?人は猿から進化した?重いものも軽いものも落ちる速度は同じ?


ソクラテスWikipedia)は「無知である事を知っている点において、知恵者と自認する相手より僅かに優れている」と考えていたそうです。紀元前の人の言葉ですが、情報が溢れている現代においてこそ必要とされる場面が多そうです。