北海道 金融センター構想

最近、経済産業省が公表した「日本の産業を巡る現状と課題」というスライドについて、ネットで話題になっています。

この資料や関連ブログを読んでいたら、なぜ日本はこんなに行き詰まっているのか、他の豊かな国はどうやって儲けているのか気になって調べてみました。豊かな国の定義はいろいろあると思いますし、日本のGDPは世界でもトップクラスです。でも、全然、豊かさを実感出来ません。そこで、GDPを人口で割った国民一人あたりのGDPの高い国をリストアップし、Wikipediaで主な産業を調べました。これは一人当り購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity Theory)とも言うそうです。

国民一人あたりのGDPの高い国:上位20位

  • アメリカ中央情報局(CIA)によるPPP上位20地域

  • PPPのグラフ比較

上位20カ国の産業の内訳は、石油関連が5カ国、タックスヘイブン・金融関連が13カ国、その他が2カ国(米国、アイルランド)という結果でした。タックスヘイブンとは税金が極端に低いかまったく無い制度のことだそうで、外国企業を誘致するための政策のようです。ざっと調べて感じたのは、ニュースなどでよく聞く主要8ヶ国首脳会議(G8)という言葉でイメージされる先進国と発展途上国、そして貧しい国々という世界観は大きな間違いではないか、ということでした。
石油資源のある国はほとんど例外なくその利益を使って金融サービスも行っているようです。また、欧州のリヒテンシュタインという国は、「カリオストロの城」のモデルになった国だそうでリヒテンシュタイン家は国よりも資産があるそうです。小さな国ですが海外のペーパーカンパニーがたくさんあるので国は豊かで所得税相続税といった一般的な税金が無いとのこと。持てる者(石油資源や立地条件など)はその資産を活用してより豊かになり、持たない者は日々の生活のために毎日働かなければならないという現実は、国にも当てはまるのだと言うことがよく分かりました。

魔法が解けた国:日本

バブルの絶頂の頃はアメリカの企業や土地を日本企業が買いあさっていたらしいですが、今思うとあれはいったい何処へ行ってしまったのかと考えてしまいます。

上記エントリのグラフが非常に分かりやすいですが、戦後、日本はほぼ一貫して右肩上がりに国民一人あたりのGDPが増え続けてきました。しかし、最近は完全に伸び悩んでいますし、冒頭の「日本の産業を巡る現状と課題」を読む限り、もう二度とあのような時代には戻れそうにありません。そして改めて考えてみると、日本企業の特徴である「終身雇用」や「年功序列」は戦後の右肩上がりの経済成長という「魔法」があったからこそ通用していたように思えます。一時期、働いても貧困から脱出できないワーキングプアという言葉が流行りました。しかし、これは多くの国では当たり前のよくある光景なのではないでしょうか。

また、学費が無いために高校に通えない子どもが増えているそうですが、これも多くの国で普通にあることではないでしょうか(日本から出たことがないので実際には知らないのですが)。

こういう社会システムの不備は、国民の収入が減っていくことによって、これからも増えていくと思います。いわゆる日本的経営で成果が出せるはずがなく、これからはより一層、国際競争力を失っていくでしょう。そういう行き詰まりの状況がよく分かるエントリが以下です。

こういう身も蓋もない内容でエントリを締めくくる予定だったのですが、最後の最後に面白い記事を見つけました。

北海道 金融センター構想

北海道を日本から独立させるという「北海道独立論」というものがあるそうです。最初は夕張と似たり寄ったりの町がたくさんありそうな北海道が独立したらさらに酷いことになりそうに感じましたが、冒頭の国民一人当たりのGDPの高い国がどうやって儲けているかを考えたとき案外いけそうな気がしました。タックスヘイブンです。
北海道を車なりバイクなりで走ったことのある人なら実感として分かると思うんですが、北海道の町は点在しています。田んぼや畑、空き地が豊富にあります。つまり、発展する余地がたくさんあります。東京は土地が不足していて、飛行場を埋立地に作ったりしていますが、北海道の千歳空港の周りには何もありません(確か)。
数年前に小樽に行ったときに驚いたのはロシア語の書かれたトラックが頻繁に走っていたことでした。地図で日本を見てみると、海を挟んでロシア、中国、韓国と非常に近い距離にあることが分かります。たぶん、ロシアと中国はこれから経済成長していく大国です。そういう大国と超至近距離にあるのが日本です。たぶん、米国や欧州の企業からしたら羨ましい話かも知れません。

大きな地図で見る
でも、東京に事務所を構えると税金は高そうですし、維持費も高い。交通の便も悪そうで良いことがありません。だから、香港やシンガポールの方が魅力的に見えるのでしょう。
しかし、北海道をタックスヘイブンにして海外の企業を誘致しやすくすればどうなるでしょう。香港やシンガポールと比べれば日本は政治的に安定していますし「西側」の国です。万が一の有事の際は米国もいます。日本は交通や通信などのインフラが整備されており北海道も例外ではありません。電気も安定しています。

現在の日本では停電はかなり少なく、その少なさは先進国中でも突出している。2001-2002年における一般家庭の年間平均停電時間は、アメリカ 73分、イギリス 63分、フランス 57分、日本 9分[1]となっている。

停電 - Wikipedia

海外の企業にとって、巨大なマーケットを攻略するための前線基地として、北海道の立地、コスト、安定性は非常に魅力的なはずです。そうやって多くの海外企業が北海道に進出してきた場合、北海道は日本のお荷物どころか救世主になる可能性もあると思います。