不健全なのに良書「放課後のカリスマ」

たまたま本屋で目について読んでみたら当たりだった漫画(現在1〜3巻まで発売中)の紹介です。設定は、過去の偉人達がクローン技術によって生まれ変わり同じ学園内で生活しているという安易とも取れる設定だったのですが、その設定に振り回されることなく、多くの読者の予想を超えて展開される物語は退屈させません。
ちょっと脱線しますが、この間まで「非実在青少年」規制問題が話題になっていました。たぶん殆どの人は架空に過ぎない「非実在青少年」がどう扱われようと問題ないと考えているでしょうし、表現を規制すべきと言っている人も読者(主に未成年)に悪影響があることを問題視しているだけで「非実在青少年」が可哀想だと思っている人は皆無だと思います。では、本物の人や動物と見分けがつかないロボットについてはどうでしょうか。単なる人形でも乱暴に扱われることに気分が悪くなる人もいるでしょう。でも、人形は単なるモノにすぎません。しかし、見かけ上、人や動物と区別できないロボットが登場した時、人がそれらのモノに対してどう対処するのか、非常に興味があります。同じように興味のある人は、アイの物語 (角川文庫)を読まれることをオススメします。
では、生き物についてはどうでしょうか。一般的な倫理観として、無駄な殺生はすべきではないという考え方が多くの人に受け入れられていると思います。それは、必要か不必要かは個人の判断に委ねられていることを意味しており、我々は日常的に害虫や牛や豚、その他の多くの生き物を殺し続けています。なぜ当たり前のように人が他の動物の命を奪って良いことになっているのでしょうか。

放課後のカリスマ」では普通の人間より能力的に優れていながら再生産可能な存在であるクローン達の葛藤が描かれます。個々のクローンを人間として扱うべきなのか、それとも量産可能なモノや生き物として扱うべきなのか、正しい答えが見えない中で物語は進んでいきます。たぶん、人をモノのように扱うこういった本は、読者によっては非常に不健全に感じると思います。でも、ストレートに残酷な描写や性的な描写は無いので都道府県ごとの条例には引っかかることはないでしょう。個人的にこういう勧善懲悪ものとは正反対の物語は大好きですし、多くの人に読まれるべきだと思うので、今のままでいいと思うのですが。書かれている内容は不健全なのに、自分の持っている「常識」が本当に正しいのかどうか、考えさせられる良書だと思います。

放課後のカリスマ 1 (IKKI COMIX)

放課後のカリスマ 1 (IKKI COMIX)

放課後のカリスマ 2 (IKKI COMIX)

放課後のカリスマ 2 (IKKI COMIX)

放課後のカリスマ 3 (IKKI COMIX)

放課後のカリスマ 3 (IKKI COMIX)