紙の本にDRMはかかっていない

iPadの発売をきっかけに、出版社がどうでもいいことで悩んでいるように見えます。以下の記事のタイトルだけ抜き出すと次のようになります。

書店型かタイトル型か――電通が考える「電子書籍のジレンマ」
バイスが市場を変える――1コンテンツでマルチデバイスの未来
Appleに翻弄されないために

このエントリが分かりやすいですが、日本以外の出版社がiPadの特性を生かした「商品」を提供しているのに対して、日本のものはPDFベースがほとんどの様です。上の記事に書かれている「R25 for iPhone」もダウンロードしてみましたが、確かにフリー雑誌のiPhone版といった感じでした。でも、iPhoneアプリなら無料でも「食べログ」レベルを期待してしまうので、だからどうしたの?としか思えませんでした。PDFでなくても、中身のレベルがPDFと変わらないのであれば、アプリにする価値が感じられません。


言いたいことは、PDFレベルの内容であれば、素直にPDFでリリースした方がユーザーとしても使い易いということです。2007年2月にアップルのスティーブ・ジョブズは楽曲のDRMについて声明を発表しました。以下はそこからの抜粋です。

3. DRMを完全に放棄する

消費者にとってはベスト。プレーヤも店も自由に選べる。アップルも歓迎する。

レコード会社が許さないというが、そうともいえない。DRMは違法コピーを防ぐためには何の役にも立ってこなかったし、今後も決して役に立たないからだ。なぜなら、音楽会社はアップルや他のオンライン音楽販売にDRMを要求する一方で、まったく同じ曲をプロテクトの存在しないCDで販売している。CDで販売される曲と比べれば、オンライン販売はほんの数%にすぎない。CDがあるかぎりネットでの配布は防げない。

また、DRMは役に立たないだけでなく副作用もある。DRMシステムを開発維持するためには多大なリソースが必要となり、大企業しか参入できない障壁となっている。これがなくなれば、さらに多くの企業が音楽サービスに投資することになり、またプレーヤの競争も活発になる。レコード会社にとっては利益にしかならない。

そして、上記で以下の文字を置き換えてみます。(変更箇所は赤字

  • レコード会社 → 出版社
  • 音楽会社 → 出版社
  • 音楽販売 → 電子書籍販売
  • CD → 紙の本
  • 曲 → タイトル
  • 音楽サービス → 電子書籍サービス

3. DRMを完全に放棄する

消費者にとってはベスト。プレーヤも店も自由に選べる。アップルも歓迎する。

出版社が許さないというが、そうともいえない。DRMは違法コピーを防ぐためには何の役にも立ってこなかったし、今後も決して役に立たないからだ。なぜなら、出版社はアップルや他のオンライン電子書籍販売DRMを要求する一方で、まったく同じタイトルをプロテクトの存在しない紙の本で販売している。紙の本で販売されるタイトルと比べれば、オンライン販売はほんの数%にすぎない。紙の本があるかぎりネットでの配布は防げない。

また、DRMは役に立たないだけでなく副作用もある。DRMシステムを開発維持するためには多大なリソースが必要となり、大企業しか参入できない障壁となっている。これがなくなれば、さらに多くの企業が電子書籍サービスに投資することになり、またプレーヤの競争も活発になる。出版社にとっては利益にしかならない。

紙でできることと(ほとんど)差がないコンテンツなら、DRMを無くした方がユーザーにとっても出版社にとっても好ましい結果になると、過去の音楽業界が経験した事例が示しているのではないでしょうか。


なお、リスクは高いですが、成功すれば利益も大きい別の解決策もあります。KindleでもiPadでもない別のプラットフォームを作ることです。SonyPS3PSP任天堂WiiやDSは、自分たちのコンテンツにとって都合がいいプラットフォームを世界レベルで展開し、コンテンツを制作するサードパーティからプラットフォームの使用料(コンテンツの複製代金?)を受け取っています。でも、紙ベースのコンテンツしか考えられない人たちなら、やるだけ無駄でしょう。