自宅図書館、あるいは自宅漫画喫茶の可能性

子供の頃は、お小遣いが限られていたのでどうしても欲しい本だけを選んだり、文庫化されるのを待ってから本を買っていました。大人になると文字通り「大人買い」が可能になりましたが、今度は読書時間と保管場所が不足してきました。世の中、なかなか上手くいかないものです。
しかし、技術の進歩により登場した書籍の電子化という方法は、読書時間と保管場所という大問題を解決する糸口になりそうな気がします。そして、そこから導かれる未来には、自分専用の図書館や自分専用の漫画喫茶が見えてきます。今回、そういった自分専用の図書館や漫画喫茶を実現しようとした場合、どのくらいのコストがかかるのか、ざっくり見積もってみました。

自炊書籍の法的問題

以前、ブックオフに裁断書籍を買い取ってもらえるのか問い合わせたことがあるのですが、回答は買い取れないというものでした。しかし、potさんから裁断書籍を買い取って貰えるサービスがあることを教えてもらいました。

また、特許商標事務所の方のブログには以下のように著作権法上は問題ないという見解が書かれていました。

私的使用目的の複製(著作権法30条)には原本を所有していなければならないという縛りがありませんし、本という商品を一度買ってしまえば、それを裁断しようが、他者に転売しようが購入者の勝手であって、それを著作権者がコントロールすることはできません。

以下、上記の見解が正しいものとして話を進めます。

裁断済み書籍のコスト

ヤフオクで「自炊」「裁断済み」などのキーワードで検索すると裁断済み書籍が見つかりますが、価格はマチマチです。漫画のシリーズ物20冊以上が1,000円で売られていたり、1冊数百円で売られていたりしていました。今回は裁断済み書籍の取引が一般化した未来を想定し、1冊100円とします。また、電子化した際の容量は自分で電子化した化物語[上]のPDF容量が81MBだったので、切り良く1冊80MBとします。

自宅図書館

図書館の蔵書数はその規模によって桁が変わってくるので、小規模なものを前提にしてみました。

大阪府立中央図書館 1,765,529冊
吹田市立山田図書館 56,454冊

上記エントリに書かれている小規模な図書館は数万冊程度の蔵書数がだったので、10万冊で見積もってみます。そうすると、

購入金額:1,000万円 (100円 x 10万冊)
PDF容量:8TB (80MB x 10万冊)

という結果になります。
PDF容量は大容量の外付けHDDを何台か買えばいいので、個人でも何とかなりそうですが、購入金額はあまり現実的には見えません。でも、金持ちの道楽として考えれば、これもアリかも知れません。

自宅漫画喫茶

漫画喫茶は図書館と比べると蔵書が少ないので、大幅に実現性が高くなります。

インターネットカフェには、おおよそ10,000冊から50,000冊程度のコミックが揃えられています。

漫画喫茶の蔵書数は1〜5万冊程度だそうなので、今回は、20,000冊で見積もってみます。

購入金額:200万円 (100円 x 2万冊)
PDF容量:1.6TB (80MB x 2万冊)

上記の図書館比較で1/5になり、ずっとお手軽に感じます。それでも大金であることに変わりませんが、PDF容量は一般的なデスクトップパソコン並みの容量に近づいてきました。車が趣味の人の中には車を何台も買う人がいるそうなので、そういう感覚で考えれば、この金額でもやってできないことは無いかも知れません。

まとめ

図書館や漫画喫茶を個人所有することは、普通の人にとっては夢物語にすぎませんでした。本の購入費用だけでも莫大な金額になりますし、それ以上に購入した本を保管する設備を持つことができません。小飼弾さんは約30,000冊のリアルの本を所有しているそうですが、そういう人は本当に稀だと思います。

小飼さんの住むマンションには、リビングと寝室に合わせて2万5000冊収納できる本棚が設置してある。これでも蔵書を収めきれず、床に5000冊ほど積み上げてあるそう

しかし、十分な数と種類の裁断書籍が流通すれば、普通の人でも漫画喫茶並みの蔵書は持てそうです。上記では触れませんでしたが、リアルの本→PDF化にも時間か費用(外注)もかかります。しかし、それを負担するだけの魅力があるように感じるのは自分だけでしょうか。
そう遠くない将来、クラスに一人くらいは「マイ漫画喫茶」を持っている子供がいて、その子の家にいつもiPadを持った子供が集まっているという未来がやってくるかも知れません。

転売すれば本の購入費用は0円?(2010/08/22追記)

後から気づいたのですが、裁断済み書籍の売買が普及している将来を前提にしているので、購入した裁断済み書籍を購入価格と同じ値段で売れば実質、本の購入費用は0円になります。でも、結局、送料等が必要なので上記で見積もったのと同じくらいの費用が必要になるような気もします。
いずれにせよ、紙の本が前提だった今までは想像できないくらいの書籍を、個人が所有できる可能性が見えてきたことは嬉しいことだと思います。