日本のエネルギー政策とか、石井彰氏のネット記事とか

このエントリを読んで思ったことを書いてみます。


なお、石井彰氏の考えを正確に理解したい方は、今月発売の下記近著を読まれればよいかと思います。

私のオススメは、まずは下記の石井彰氏が書かれた記事を読むことです。書籍と比べれば情報量は少ないかも知れませんが、要点がまとまっているでしょうし、すぐに無料で読めます。その後でより深く理解したと思って書籍を買うのでも問題ないと思います。

「エネルギー大変革」と題した石井彰氏のコラムの記事一覧

家庭での直接的なエネルギー消費が全エネルギー消費の1割以下でほとんど意味がないこと。米国エネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)の資料を引用して、天然ガスによる発電が有力であることを説明。

天然ガスと「コ・ジェネレーション」の可能性を説明。

エネルギーを軸に今後の世界のパワーバランスを説明。天然ガス資源を武器に力を強める資源国。日本メーカーは発電技術や天然ガスの生産/輸送技術が追い風になると説明。



気になったこと

日本のエネルギー消費のうち、電力の占める割合は約25%。

日本のエネルギー消費の45%が電力を作るために投入されている。

元エントリを読んでいてこれがどうしても理解できませんでした。話の核心に関わる重要なポイントであることは分かっているのに、何を言っているかが分かりませんでした。日本は45%のエネルギーを電力を作るために使っているが、45%は全体の25%に過ぎない? この時は諦めて、ブクマに「分からない」と書いたら親切な方が教えてくれました。

http://t.co/83KIUqY をたたき台にみて 最終エネルギー消費で電力は全体の23%台。1次エネルギーでなら44%位。ちなみに発電送電時や石油精製など転換時の損失は電気がより大きく、電気機器のほうがある仕事をするときの最終エネルギー消費は少ないです。 @un_jp


経済産業省 資源エネルギー庁が作成した「平成21年度 エネルギーに関する年次報告書(エネルギー白書)」に非常に分かりやすい図が掲載されていました。

上記の「第2部 エネルギー動向」の154ページ(pdf P.4)に下記の図が掲載されています。

gifファイル自体にタイトルも軸の単位もありませんが、pdfには書かれています。ちなみに白書にはhtml版もありますが、この図は掲載されていませんので、探しても見つかりません(自分の探し方が悪いだけならゴメンなさい)。

この「【第 201-1-3】我が国のエネルギーバランス・フロー概要(2008 年度、単位 10^{15}J)」では、日本が使用している全エネルギー(何に使うかは問わない)を「一次エネルギー国内供給」と定義、そして実際に消費されたエネルギーを「最終エネルギー消費」と定義して、その差分を「エネルギー転換/転換損失等」として算出しています。元エントリの説明にあった、「日本のエネルギー消費のうち、電力の占める割合は約25%。」というのは、「最終エネルギー消費」における電力の割合は25%という意味であり、「日本のエネルギー消費の45%が電力を作るために投入されている。」というのは、「一次エネルギー国内供給」の45%が発電に使われているという意味のようです。図の値で計算してみると、だいたい同じ値になります。日本語って難しいです。
それにしてもこの図を見ると、発電による損失がとても大きいことがよく分かります。発電というのは、元となるエネルギーが核燃料、石油、ガス、石炭のどれでも熱を発生させて蒸気で巨大なモーターを回す点は同じです。そんなことをしていれば、エネルギー損失が少なくないことは素人でも分かります。でも、電気ストーブは熱エネルギーから作った電気エネルギーを、元の熱エネルギーよりもずっと小さい熱に変えるため機械なのだから、何だか滑稽です。発電でもCO2が発生することを考えると、暖房は灯油を使うほうが環境でも効率性という点でも良いのかも知れません。


上記の白書はななめ読みしただけでしたが、面白いことが書かれていました。

原子力の燃料となるウランは、エネルギー密度が高く備蓄が容易であること、使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できること等から、資源依存度が低い「準国産エネルギー」と位置づけられています。

石炭・石油だけでなく、オイルショック後に導入された液化天然ガスLNG)や原子力の燃料となるウランは、ほぼ全量が海外から輸入されており、2007年の我が国のエネルギー自給率水力・地熱・太陽光・バイオマス等による4%にすぎません。なお、原子力の燃料となるウランは、エネルギー密度が高く備蓄が容易であること、使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できること等から、資源依存度が低い「準国産エネルギー」と位置づけられています。オイルショック後、原子力の導入が促進された結果、「準国産エネルギー」を含む日本のエネルギー自給率は2007年には18%となっています

赤字化は私がしました。さて、問題です。自国内で確保できる比率をエネルギー自給率というそうですが、「準国産エネルギー」とは何でしょうか?ちなみに、我が国のエネルギー自給率は4%しかありませんが、「準国産エネルギー」という概念を使うと18%になるそうです。食料でもエネルギーでも自給率を実際より高く見せることにどれだけ意味があるのでしょう。「我が国のエネルギーバランス・フロー概要」が示していることは、仮に電力を自国内で賄えたとしても、エネルギーの輸入が止まったら産業、つまりは日本社会は立ち行かなくなるということでしょう。そもそも、現実には、使用済燃料の再利用はできていないのに、理論上は可能だからと再利用ありきの数字を出すのは、無意味としか思えません。




参考

「3. 総合エネルギー統計の構造と解説-1: 「行」の構造と解説」は白書を読む上でとても参考になりました。


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この本は読んだことはありませんが、サブタイトル「天然ガスと分散化が日本を救う」を読む限り、上記のネットの記事と主旨は同じように見えます。

エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書)

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