ユーザーと作者(クリエーター)の間にいた人たちの居場所が本格的になくなってきた件

私もアニメに限らず本でも漫画でもゲームでも好きな作品の作者やクリエイターに直接、金銭を支払いたいと思っていました。でも、今はまだその手段がないので、作品を購入するしかないようです。作者がブログが持っていてアマゾンのアフィリエイトがあれば、アマゾン経由で商品を購入することで間接的に「寄付」することは可能です。でも、このやり方は実感が感じられないので、より多くの組織/団体がWikipediaのようにPayPalでの寄付で対応して貰えると個人的にうれしいです。


10月28日に任天堂が株主向け発表会を開催しました。その冒頭部分で情報発信のやり方の変更について説明がありましたが、その中にテキスト公開タイミングの変更がありました。

これまで、決算説明会のプレゼンテーションの内容は、その日の夜までに動画とテキストでHP(ホームページ)に掲載することで発信してきましたが、即時性とグローバル性を重視するため、この場でのプレゼンテーション終了後、直ちにプレゼンテーションのスライドとテキストを日本語と英語でホームページに掲載することにいたしました。

この対応は誤った情報が一人歩きするのを防止する目的があるように思います。実際、この時の質疑応答時には以下のように注釈も書かれていました。

本文の一部を引用される場合は、必ず、本ページのURLを明記、または本ページへのリンクをしていただくようお願いいたします。

(※一部に、「任天堂ソーシャルゲームのようなアイテム課金型ゲームを投入予定」との報道がございましたが、これは、事実ではございません。)


上記で指摘している記事は以下と思われます。

任天堂は28日、携帯型ゲーム機ニンテンドー3DS」向けに、ゲームで使用するアイテムを購入して遊ぶ「アイテム課金型」の自社ソフトを来年中に投入すると発表した。

 岩田聡社長は同日、都内で開いたアナリスト向け説明会で、「任天堂としても来年中に少額でアイテムを買うソフトを出す。ソフトメーカーからは来年早々にも投入が始まる」と述べた。アイテム課金を採用するソフトタイトルなどは明らかにしていない。

任天堂岩田聡社長は28日の決算説明会で、携帯型ゲーム機ニンテンドー3DS」向けに、課金システムに対応するソフトを2012年にも発売する考えを明らかにした。ゲーム用の追加コンテンツを後からインターネットで有料で取り込めるようにする。ネット経由のゲームが広がるなかで、ソフトの単品売りに加えて新たなサービスで市場を開拓する。


任天堂が株主やマスメディアなどの一部の人たち向けにしか情報をだしていないならば、多くのユーザーは報道された内容を信じるしかありません。たとえ、その内容が不自然でにわかには信じがたいものでも、一次情報にアクセスできなければ否定や訂正ができません。しかし、今では、インターネットを通じで直接、任天堂の発信している情報にアクセスできるので、内容のおかしな記事や偏向報道を否定することができるようになってきました。そういう事実と異なるおかしな記事ばかりを書いている記者はそのうち誰にも相手をされなくなっていくと思います。そもそも単なる事実を伝えるだけなら報道を読む必要はなく、直接任天堂のサイトを読んだ方がより正確で詳しい情報が得られる訳です。事実報道以外では、枯れた知識の水平思考さんが書かれているような考察記事であれば面白いですが、新聞社の記事は考えて書かれているとは思えません。多くは内容ではなく新聞社という看板で読者に読ませている感じがします。



ところで、アマゾンの電子書籍に関する契約内容が話題になっています。

アマゾンの取り分55%が取り過ぎという主張ですが、では出版社は45%の仕事をしているのか疑問に感じます。

アマゾンは電子配信のための端末の開発/販売することでプラットフォームを構築しましたし、電子書籍の決済も行います。つまり紙の書籍における書店/印刷に相当する部分の仕事をするのですからそのコストとして50%以上を要求するのは従来慣習上もおかしくありません。作者が10%を取るとすると残り35%が出版社に渡りますが、出版社の取り分が多すぎる気がします。本を書く訳でも印刷も販売もしないのに、著者以上の報酬を受け取るのは不自然です。おそらく、今後は作者がアマゾンと直接、取引することが多くなっていくのではないでしょうか。これまで出版社が行ってきた役割の中で印刷を除くと宣伝/マーケティング部分が大きかったと思いますが、作者がインターネットで宣伝できますし、内容が良ければアマゾン内の口コミも期待できるでしょう。
日本にも電子書籍プラットフォームがいくつかあります。たとえば、紀伊国屋書店は「電子書籍に端末選択の自由を。」というコンセプトを掲げて、マルチデバイス対応をアピールしています。でも、Macへの対応予定はないそうです。アマゾンの電子書籍はウェブ経由でMac/PCからも読めますし、iOS(iPhone/iPad)でもAndroidからでも読めるだけでなく、各デバイスでコンテンツを共有できます。たとえば、Macで読み終わった所をクラウド側で覚えていて、次にiPhoneで同じ本にアクセスするとその読んでいた箇所が表示されます。こういう実態を見ていると、日本の出版社には、お願いだからアマゾンの邪魔をしないで欲しいと思わずにはいられません。
個人的には電子書籍と紙の書籍が同じ値段でもかまいません。1500円の本なら1500円分が作者に渡るのが理想です。しかし電子書籍でも様々なコストがかかるでしょうから、それらの対価を差し引くのは当然です。今の仕組みなら、アマゾンが55%を取るなら、残りの多くは作者に渡るべきですし、数年後にはそういう状態に近づいていくと思います。




作者(クリエーター)には読者(ユーザー)が必要ですし、その逆もまた必要です。従来はさらに両者を結びつける組織/人たちが必要でした。しかし、インターネットの普及とともに、作者と読者の距離が非常に近づいた気がします。感覚的には、手を伸ばしたら届きそうなくらいです。(たとえば読んだことのある漫画の作者のTwitterでコメントされたりとか)ゲーム系のエントリを書いた後にアクセスログを見ると、ゲーム会社からのアクセスログが残っていることがあり、仕事なのか趣味なのか分かりませんが、漠然とゲーム会社の人からも「読まれているんだなぁ」と思ったりします。それくらい身近なら直接、やり取りしても不自然じゃないと感じるようになりました。