遠隔操作ウイルス事件の犯人の目的

遠隔操作ウイルス事件の容疑者が逮捕されたニュースがネットで話題になっていた。今回の逮捕とその報道のされ方には釈然としないものを感じるので、事件について犯人・警察・マスコミそれぞれの行為について事実関係を整理して、まとめたいと思う。

犯人

Tor(トーア)というネットの匿名化ソフトで自分の痕跡を隠蔽しつつ、自作の遠隔操作ウイルスを拡散させ、ウイルス感染者のPCから公共のサイトなどに犯罪予告を書き込んだ。書き込んだ内容は、大学生なら小学校の無差別殺人、アニメ演出家ならヲタロードでトラックとナイフで無差別殺人をというように、過去の著名な犯罪を彷彿とさせる内容を含んでいた。
これらの犯罪予告により、4名が誤認逮捕され、その内2名が犯行を自白した。その後、犯人のメールにより遠隔操作による犯行であることが判明し4人は釈放された。
その後、犯人から謎解きを含むメールが届き、そのメールのヒントにより江の島の猫の首輪に取り付けられていたSDカードが警察の手に渡った。


犯人のメールにより4名の冤罪被害者が釈放されるまでは、犯人はひたすら遠隔操作でウイルス感染者のPCから犯罪予告を書き込んでいたことから、その目的は無実の人間に罪を着せることと考えて間違いないだろう。
しかし、その後の謎解きを含むメールの目的は判然としない。一見、無目的な愉快犯のように見えるが本当にそうだろうか。

警察

犯罪予告が書き込まれたIPアドレスから容疑者を特定し逮捕。4名の内2名から自白を引き出した。その後、犯人からメールが届くと誤認逮捕だったことを認めて4人を釈放した。
猫の首輪のSDカード入手後、江の島で猫の近くにいた不審な人物を監視カメラで特定した。マスコミに容疑者情報をリーク後、2月10日朝に容疑者を逮捕した。

−−首輪を付けたのはいつか
 「(ネコが発見された2日前の)1月3日午後3時ごろ。防犯カメラに映っていたが、手元までは映っていない

最初の犯行予告ではIPアドレス、SDカード入手後は猫と男の監視カメラの映像を根拠に容疑者を逮捕していることから、犯人と疑わしい人物を積極的に逮捕する傾向が見られる。

マスコミ

警察によるアニメ関係者の逮捕後、容疑者の職業や氏名を掲載する形で報道した。
遠隔操作ウイルスの容疑者の逮捕に関しては、逮捕の数日前から容疑者を盗撮して逮捕後に実名と映像を報道した。


犯行予告事件、遠隔操作ウイルス事件ともに、話題になりそうな事件の容疑者を積極的に実名で報道。

まとめ

今回の犯罪予告事件では4名の冤罪被害者が発生してしまったことから、警察には十分な証拠に基づく捜査や自白強要の防止が、マスコミには冤罪被害を拡大するような逮捕時の実名報道を控えることが、求められていた。しかし、どちらもまったく変わっていないように見える。

ここからは私の勝手な推測。犯人も警察やマスコミと同様に、犯行予告事件からその目的は変わらず一貫しているのではないだろうか。つまり、謎かけメールや猫の首輪のSDカードも無実の誰かに罪を着せるための工作ではないだろうか。
これまでのところ、逮捕された容疑者と犯人が結びつくような直接的な証拠(ウイルス作成環境がPCから発見されるなど)は見つかっていない。報道されているのは、SDカード発見の数日前に江の島で猫の近くにいた、前科があった、猫カフェに行っていた、など今回の事件とは直接関係のないものばかり。
今回の逮捕の決め手は、江の島の監視カメラの映像だ。そして、今回の事件とその監視カメラを結びつけたのは他ならぬ犯人のメールなのだから、犯人がそこに誘導したと考えることもできる。もし、今回の容疑者がかなりの猫好きで定期的に江の島に通っていて、犯人がそれを知っていたとしたら、容疑者を犯人に仕立て上げることも可能かも知れない。